建設経済の動向

建設経済の動向
2021年9月 No.531

中小建設会社もBIM/CIM利用が必須の時代に

国土交通省が発注する全ての設計業務や工事で、原則としてBIM/CIMを利用する時期が2023年度に迫っている。地方の中小規模の建設会社が担う工事も例外ではなくなっているのだ。間近に迫ったBIM/CIMの原則化で、建設会社はどのような対応を迫られるのか。国の方針を解説する。

ICT(情報通信技術)を使って、建設やインフラの仕事の生産性を高めるなど仕事を革新していく。最近はこうした取り組みをDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼んでいる。建設分野におけるDXの動きを推進するうえで、核となる技術がBIM/CIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング/コンストラクション・インフォメーション・モデリング)だ。

BIMやCIMと聞くと、「これまでの2次元のCAD図面を3次元化した図面だな」と思う人も少なくないだろう。もちろん、構造物を3次元で表現し、そこから2次元の図面を切り出すような使い方は代表的な用途だ。だが、BIM/CIMの本質は、構造物などをデータとして表現する点にある。構造物を構成する材料の属性・調達履歴、維持管理の記録などをひも付けておくことが可能なのだ。建設生産の全てのプロセスで利用できるデータなので、様々な業務段階での効率化を期待できる。

こうしたメリットを踏まえ、国土交通省が直轄事業でBIM/CIMを原則として活用するという方針を打ち出し、全面的な導入年次を2023年度と定めた。ここでの事業は設計業務だけにとどまらない。一般土木と鋼橋上部の直轄事業のうち、小規模な物件を除く全工事で原則として活用する。

中小はまず使ってみる段階から ソフトがなくても使える環境整備も

とはいえ、23年度からの国の事業ではBIM/CIMを徹底的に用いて施工管理をしなければならないというわけではない。まずは詳細設計で作製されたBIM/CIMモデルを参照して、設計の意図を理解したり、施工計画を立てる際に役立ててもらったりするような使い方を想定している。ただし、住民説明のために3次元モデルを利用した資料などの作成を、発注者が施工者に求めるような事態は出てくる可能性がある。まずは建設会社がBIM/CIMモデルに触れる機会をつくることを重視している。

大手建設会社ではBIM/CIMの導入が進みつつあるものの、中小の建設会社ではまだBIM/CIMのソフトを導入できていない会社も少なくない。そこで国交省では、ソフトウェアを搭載していないパソコンでも、インターネットを通じてBIM/CIMモデルを閲覧したり、編集したりできるようなシステムの構築を図っている。22年度内の稼動を計画している。

施工者がこうしたシステムを使えるようになれば、パソコンやタブレット端末でクラウド上のBIM/CIMモデルを閲覧できるだけでなく、BIM/CIMモデルに重機を配置して施工計画を検討するようなことも可能になる。

BIM/CIMの利用拡大に向けて、国交省では様々な基準類を整備している。21年3月には「3次元モデル成果物作成要領」を制定しただけでなく、「BIM/CIM活用ガイドライン」「BIM/CIMモデル等電子納品要領及び同解説」などの基準類を改訂。BIM/CIM活用の原則化に向けて、着実に歩を進めている。

2023年度のBIM/CIM原則化までのロードマップ。工事に対応する部分だけをまとめた。一般土木と鋼橋上部の工事を想定する。国土交通省の資料を基に日経コンストラクションが作成

 

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