経済動向

経済動向
2017年10月号 No.492

成長市場ASEANを読み解く

今日、世界の成長を支えるのは、アジア地域と言っても過言ではない。世界第2位の経済大国の中国、2020年代には世界第1位の人口を有するインド、そしてASEAN(東南アジア諸国連合)の存在がある。今回は、このうちASEANに焦点を当てて、成長市場としての特徴や、日本企業にとっての重要性などについて解説する。

安定的な成長を続けるASEAN

ASEANは2015年末にASEAN経済共同体(AEC)を発足させ、徐々にではあるが経済的な一体感を強めている。一時論じられた「チャイナ・プラス・ワン」戦略で、賃金の安い立地先としての役割が注目されたが、今後は、広域アジアのサプライチェーンを確保する重要拠点としての役割が、経済成長に伴う中間層の台頭を背景とする内需拡大のなかで、重要な要素になってくる。
過去20年余りの、世界とASEANの成長率をみると、2000年代以降、ASEANは世界経済の平均を上回る安定成長を続けている(図1)。中国の成長はASEANを常に上回っているが、中国経済が近年、成長率を傾向的に鈍化させる一方で、ASEANは安定的な成長を続け、両者の成長率の差は縮小してきている。今後、中国が人口動態の影響もあり、傾向的に成長率を鈍化させていく状況とは対照的に、ASEANでは近年5%前後の成長が保たれ、今後も生産年齢人口が増え続けて成長が支えられる見通しであるなど、安定感が目立ちつつある。

図1 ASEAN6と世界、中国の実質GDP成長率

ASEANの成長を支える多様性

日本企業のビジネスターゲットとしてのASEANのプレゼンスは、1990年代後半のアジア通貨危機時に急落した。ただし、近年は、総人口6億人を有することなどから(表1)、ASEANの再評価の動きが見られる。

表1 主要国とASEANの経済指標(2016年)

ASEANはその特性として、多様性を有している(表2)。ASEANが安定成長を続けている背景には、個々の国々が有する異なる優位性や特徴が、多様な成長ドライバーになっている点がある。このような多様性により、ASEANは、全体として異なる比較優位産業を持つ各国が補完しあう形で、総合力と安定性を発揮することになる。こうした特性から、リーマン・ショックのような外的ショックに際しても、成長は下支えされていた。また、人口規模が大きいインドネシアやフィリピン、ベトナムなどで、中間層の拡大に伴い内需の厚みが増している点も注目される。

表2 ASEANの多様性

この多様性と中間層拡大がもたらす変化を背景として、日本企業にとってASEANは、重要な事業機会のある地域であるといえよう。

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