建設経済の動向

建設経済の動向
2017年10月号 No.492

両極端な「1者入札」「くじ引き」多発

東京都の五輪関連工事で多発した「1者入札、99.9%落札」。競争性への疑念を払拭するために東京都は入札改革に乗り出したが、実は同様の事態は全国的に見られる。一方で、各社の入札金額が下限値に張り付いて並び、くじ引きで落札者を決定している発注機関も相変わらず多い。日経コンストラクションがこの夏に実施した調査の結果を基に、最近の入札動向についてお伝えする。

6月号の本欄でも述べた通り、2017年度から東京都は入札制度の改革に乗り出した。昨年、都が実施した五輪施設や豊洲市場の工事の入札で、「1者入札、落札率99%以上」となるケースが多発。「競争性が確保されていないのではないか」という疑念を払拭するために、制度改革を迫られたのだ。
今から4~5年前、入札制度の大きな課題の1つが「くじ引き」の多発だった。最低制限価格付近に多くの会社の入札金額が集中し、落札できるかどうかは運次第という状況が各地で見られた。1者入札、超高落札率とは正反対だった状況が、ほんの数年でこんなにも変わるのか――。日経コンストラクションでは、全国の主要な
発注機関を対象にアンケート調査を実施し、最近の入札の動向を探った。

東京都だけではなかった「1者入札」
発生率4割超の自治体も

調査の結果から、いくつか興味深い実態が浮かび上がってきた。
その1つが、1者入札の発生は東京都に限らず全国に広がっているということだ。2016年度に発注した土木工事を対象に、47都道府県と20政令市の計67自治体のデータを集計したところ、1者入札の平均発生率は都道府県、政令市とも約7%で、さほど高くない。ところが個別に見ると、宮城県の42.4%を筆頭に、5つの自治体で2割を超えていた(表1)。前述の東京都(19.1%)よりも発生率が高かったのだ。
上位には、宮城県や福島県、仙台市など、東日本大震災の被災地が並んだ。復興需要の増加によって、1入札当たりの参加者が減ったようだ。
さらに、1者入札のうち「落札率99%以上」が占める割合も概ね高く、島根県(65.3%)と岩手県(50.9%)では半数を超えていた。
なお、67自治体のうち10自治体が、1者入札を中止・無効にする制度を導入している。

くじ引きも多くの自治体で増加
上位2自治体はいずれも「事後公表」

そしてもう1つ分かったことは、1者入札が多かった裏で、くじ引き落札も多発しているという事実だ(表2)。表1と表2の両方に顔を出している自治体はないものの、広島県(7位と17位)や相模原市(13位と5位)のように、1つの自治体で“両極端”な状況を抱えているところも見られた。しかも、くじ引き落札の多発が問題となっていた4年前に比べ、多くの自治体で発生率が増加していた。
くじ引きが相変わらず多いのは、予定価格や最低制限価格を事前公表する自治体が少なくないことも影響している。2011年に一部を改正した入札契約適正化指針では、入札価格の高止まりやくじ引き増加などが生じる場合、速やかに事後公表への変更を検討することが盛り込まれた。しかし、官製談合などの懸念から、公表時期の変更に踏み切れない自治体が多い。
他方、事後公表でもくじ引きが減るとは限らない。実は、1位の新潟市と2位の札幌市はともに、予定価格などは全て事後公表だ。対策として、札幌市は今年2月以降、入札価格が同じでも技術点の差が付きやすいように、総合評価落札方式の配点などを見直している。

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