経済動向

経済動向
2021年6月 No.529

メンタルヘルス対策が急務に

人手不足が深刻な問題となっている建設産業界で、メンタル面の問題が貴重な人材を潰している。日経クロステックが実施した独自調査では、ハラスメントやコロナ禍で広がったテレワークが、その一因となっている実情が浮かび上がった。人材を失う事態を防ぐために、できることは何なのか。

日経クロステックが2021年3月に建設実務者に対して実施した調査(全回答者数280人)で、驚くべき結果が出た。過去3年間に自身や職場の同僚が各種ハラスメント行為を受けたことがあるかという問いに対して、約半数の47.5%の実務者が「ある」と答えたからだ。身近でハラスメントがあったと回答した人に、そのハラスメントの種別を選択肢から複数回答で選んでもらった。その結果、最も多かったのは地位や立場の優位性を用いて苦痛を与える、いわゆるパワハラで88.0%を占めた。

具体的なハラスメントの方法を複数回答でさらに詳しく聞くと、最多は「人格を否定するような言動」で54.1%、これに「業務成果などへの過剰な叱責」「業務内容などへの過剰な干渉」が5割前後で続いた。一方で、ハラスメントの影響を複数回答で尋ねたところ、「仕事のパフォーマンスが落ちた」と回答する人が63.9%に及んでおり、業務成果などを巡ってハラスメントが起こるものの、その結果、パフォーマンスが落ちるという負のスパイラルが浮かび上がった。

ハラスメント対策としては、2020年6月に施行した改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に沿って、大手企業には相談窓口の設置などの体制整備が義務付けられた。22年4月にはこの対象が中小企業にも広がる。厚生労働省が示している「パワーハラスメント対策導入マニュアル」やウェブサイト「あかるい職場応援団」といった資料を参考にして対策を進める必要がある。

職場のハラスメントを放置すると、現場で問題が発生した際に、恐怖心が原因となって適切な報告が阻害される恐れがある。こうして隠蔽行為が発生すれば、後に企業が大ダメージを被るリスクが生まれることになる。

テレワーク導入後に悪影響が半数に リズミカルな運動で心身を整えよ

コロナ禍を受け、建設コンサルタントなどで順調に広がったテレワーク。満員電車から解放されたり、通勤時間を有効に使えたりするなど評価する実務者は多い。一方で、テレワークの導入によって悪影響が出たという声も少なくない。日経クロステックが建設実務者を対象に調査したところ、テレワークを導入した職場で働く人の49.7%が、テレワークの導入による悪影響が「ある」と回答した。

その理由を選択肢から複数回答で答えてもらったところ、「コミュニケーションが滞ったり減ったりした」が80.4%で最も多く、「業務の処理量が減った」(53.6%)「業務の質が落ちた」(48.5%)が続いた。さらに、「元気がなくなった」という心への悪影響を指摘する人は17.5%存在した。ある建設コンサルタント会社では、テレワークの導入によって、「苦手な上司との対話が減って助かった」といった旨を明かす社員も存在する。だが、これは組織にとって必ずしもプラスとは限らない。同社では、コミュニケーションの欠如によって教育の機会を失い、技術者としてのレベルアップを図れなくなるリスクを危惧している。

アンケートでは、テレワークによる心の問題を解消するための対策として、一定の出社日を設けたり、ビデオ会議を頻繁に実施したりする対策が挙がった。これらに加えて、軽い運動への期待も大きい。テレワークの増加によって運動量が減ると、神経伝達物質「セロトニン」の分泌が減る。すると、メンタル面の不調につながりやすくなるという。散歩をすれば心の不調を防ぐ効果だけでなく、腰痛などの解消も期待できる。心身双方に効果的な対策となるのだ。

テレワークの導入でマイナスの影響があったか否かを建設実務者に選んでもらった結果。
職場でテレワークを導入したと答えた195人が回答(資料:日経クロステック)

 

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