経済動向

経済動向
2020年10月号 No.522

台頭する建設スタートアップ

新型コロナウイルスへの対応やi-Constructionの深化といった動きに沿って存在感を増してきたのが建設系のスタートアップ企業だ。特に建設産業のデジタル化に関連した分野で頭角を現している。

建設市場全体を見ると、新型コロナウイルスの影響によって、建築や住宅の市場については、先行きを楽観視できない状況になっている。一方、公共事業を柱とする土木分野については、引き続き一定の市場は見込める状況にある。そして、この土木を中心とした公共分野では、建設産業のデジタル化の動きが加速している。

その結果、既存の建設会社だけでは開発が困難であったロボットやICT(情報通信技術)を中心に、先進的な技術を持つスタートアップ企業と建設会社が手を組む場面が増えてきた。

建設分野に進出するスタートアップ企業の技術分野は多様だ。ドローンや施工ロボットといった機械関連の技術、画像処理や自然言語処置などデータ処理を基に業務を改善するAI(人工知能)技術、インフラの維持管理を効率化する可能性を持つセンシングやIoT技術などは代表例といえる。

ここでは、注目に値するいくつかのスタートアップ企業を紹介しよう。最初に紹介するのは東京都文京区に拠点を置くライトブルーテクノロジー(Lightblue Technology)。2018年に創設したばかりの企業だ、AIを使った画像解析や言語処理などを得意とする。同社は清水建設と組んで工事現場における安全管理の高度化を目指している。油圧ショベルに市販のカメラを設置して、映った画像を基に周辺の人を検知して、接触事故などを防ごうという取り組みをスタートさせている。20年度末の製品化を目指している状況だ。

遠隔操縦やコンクリート技術にも
背景に見える人手不足

VR(仮想現実)を利用した建機の遠隔操作技術を引き下げて建設産業への乗り込みを狙っているのがエスイーフォー(東京都台東区)だ。VRを通して作業指示を与えると、建機がその作業指示に沿った作業を自ら考えて実施する。三菱電機と共同で、除雪に使えるかどうかの実証試験を岩手県滝沢市で実施。作業をこなした。作業指示を踏まえて建機が自律的に動くので、遠隔操作の壁となる通信遅延などを気にしなくても済む。

緩まないネジの開発などで名を揚げていたネジロウ(NejiLaw、東京都文京区)も注目の1社だ。発明家である社長が様々な依頼に応じて新しい部材や機器を開発する。現在、開発に取りかかっているのがコンクリートの気泡を自動で消失させる商用装置の開発だ。IHIと共同で進めている。

こうした技術を引き下げた会社が台頭する背景には、建設産業における人手不足がある。2025年ごろより顕在化するとみられる人手不足を機械やITで補うために、技術革新を急がなければならないのだ。

技術開発の過程で欠かせないのは、スタートアップの技術を試しやすくする環境だ。この点では、国や自治体といった発注機関も積極的に技術開発を促進するような環境整備に努める必要がある。

エスイーフォーが三菱電機と共同で実施した除雪実験の様子。右は作業を指示する際のVRでの画面(写真・資料:エスイーフォー)

 

ネジロウがIHIと共同で開発するコンクリート気泡を自動で消失させる装置の完成イメージ(資料:NejiLaw)

 

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