建設経済の動向

建設経済の動向
2020年5月号 No.518

2020年は土木の資格取得の好機

建設の分野では、仕事に必要な資格が数多く存在する。なかでも土木系の主要資格では、2020年前後に
試験制度の変更が相次いでいる。今年は、土木系の主要資格の取得を目指すうえで悪くないタイミングになっている。

建設業許可の取得時や工事現場における監理技術者に求められる1級土木施工管理技士、建設コンサルタント業務の受注に欠かせない技術士など、土木の仕事には資格取得が不可欠だ。技術士の資格については、建設コンサルタント業務だけでなく、建設会社の技術者が発注者との対話などで、信頼を勝ち取るためのアイテムとしても、重要な役割を持っている。

こうした資格の試験制度が、2020年前後に大きく変わった。例えば、技術士では19年度の問題から択一式の問題が全て廃止された。そして、筆記試験でも口頭試験でも技術士に求められるコンピテンシー(資質能力)を意識した出題が目立つようになった。

コンピテンシーとは、コミュニケーションや技術者倫理など日本技術士会が掲げる8つの項目を指す。実際の試験では、「関係者との調整方策を述べよ」「倫理や持続可能性の観点から述べよ」といった形で出題
された。

選択科目の小問は全ての分野で同じ形式となっている。その結果、問題がやや抽象的になり、解答するには問題の意図を上手に読み解く必要が増した。

技術士試験建設部門の合格率は、19年度の二次試験で9.4%と低く、難関だ。それでも、試験制度は19年度に変わったばかり。20年度に大きな変更を重ねると受験者が混乱し、合格率が低迷する恐れがある。技術士は国家資格の試験であり、年度ごとに合格率が大きく変動するのは好ましくない。20年度も19年度と近い傾向で出題される可能性が高い。

1級土木は制度変更前の最後の試験
診断士試験はeラーニングを活用

建設会社の技術者の多くが取得を目指す1級土木施工管理技士も20年の取得を図りたい。建設業法の改正に伴う監理技術者の兼任要件に盛り込まれた技士補の創設に合わせて、21年度から試験制度が大きく変わる見通しだからだ。

ベテランの技術者の中には、自らの経験を基に、1級土木施工管理技士の資格取得はそれほど難しくないと考える人も少なくない。しかし、現在の1級土木施工管理技士の試験は決して易しくない。特に実地試験の記述問題にてこずる受験者は多くなっている。

21年度にどのような試験となるのかはまだ見通せない。過去問が充実し、これまでの傾向を踏襲しつつ、早い段階から試験に備えられる20年度の試験を目指すのが安全だろう。

維持・補修などの工事では、コンクリート診断士の資格を持つ技術者の配置が入札要件となる場合がある。そのコンクリート診断士の試験も19年度に大きく変わった。それまで出題されていた診断技術の動向や診断士の心構えなどを問うた問題Aが廃止されたのだ。19年度からは診断士としての実務能力を確認する問題に出題が絞られるようになった。

コンクリート診断士の資格では、これまで全国に会場を設けて実施していた診断士講習会を20年度からeラーニングに切り替えた。特定の場所に出向く必要がなくなる分、受験に向けたハードルが下がっている。

 

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