経済動向

経済動向
2020年2月号 No.515

伸び悩む訪日外国人観光客

日本の成長戦略における目玉政策の一つに訪日外国人観光客(訪日外客、インバウンド)の拡大がある。その拡大がここにきて伸び悩んでいる。現状ペースが続けば、「2020年に4,000万人」という政府目標の達成は難しい。今回は、訪日外客数の現状を踏まえつつ、今後の展望と課題について考察する。

日本の成長戦略の目玉としてのインバウンド

2012年末に安倍政権が発足してから7年。アベノミクスの目に見える成果の一つに記録的な訪日外客数の拡大がある。訪日外客数は12年の約840万人から18年には約3,120万人と実に4倍弱に増えている。そして、訪日外客の消費額も、この間に約1.1兆円から約4.5兆円にまで4倍強も拡大している。

この訪日外客の消費額は、GDP統計上は個人消費ではなく、「サービス輸出」として計上される。輸出依存度が高いといわれる日本経済において、主要な輸出産業としては自動車、半導体等電子部品、自動車部品、鉄鋼などが挙げられるが、訪日外客の消費によるサービス輸出は、電子部品や自動車部品も上回っている(図表)

訪日外客の消費は、日本にとっての第二の輸出産業に育っていると評価することも可能だ。

訪日外客数の政府目標達成は困難な状況

これまで順調に拡大してきた訪日外客数だが、最近は頭打ち感が強まっている。前年同月比の伸び率は18年の前半までは概ね二桁の高い伸びを維持したが、18年の後半以降に急減速。19年10月時点では前年割れとなり、
1-10月累計でも3%程度にとどまっている。

この訪日外客数の伸び悩みの背景には複合的な要因がある。まず、18年夏場以降、地震、豪雨、台風といった自然災害が悪影響を及ぼしている。また、国別で見た場合には韓国、台湾、香港からの訪日外客数の減少が顕著だが、その背景にはアジア地域における景気の減速と出国者数の減少、円安メリットの剥落、割安な東南アジアのビーチリゾートの旅行先としての人気上昇などがあるようだ。そして、19年7月に日本政府が韓国向けの輸出管理を強化したことを契機に日韓関係が悪化したことも韓国人観光客の激減を招いている。訪日外客数の国別内訳では、韓国(全体の約24%、18年)は中国(同約27%)に次ぐ大きな存在感を示してきたが、19年10月には前年比6割以上の急減となった。日韓関係の改善が待たれるが、訪日韓国人観光客のV字型の回復は期待しづらい。

国際便やクルーズ船の寄港回数などについて一定の前提を置いた当社試算によれば、20年の訪日外客数は約3,400万人にとどまりそうだ。残念ながら、政府目標の「2020年に4,000万人」には届かない試算結果である。

20年の東京五輪が訪日外客数の拡大に寄与することも考えられるが、過去の五輪開催都市の実績からは過大な期待はできない。1992年のバルセロナ五輪以降の実績では、2000年のシドニー五輪を除けば、五輪開催年のインバウンド数の伸びは一桁台と必ずしも高くない。12年のロンドン五輪では、英国政府の推計によれば、五輪開催中に英国を訪れた外国人観光客よりも、訪問を避けた観光客の方が多いとされる。五輪開催中は開催地への自国内での国内観光客が急増し、宿泊料金の高騰などから外国人観光客の「クラウディングアウト」(押し出し)が発生したと考えられている。同様のことが日本でも起こる可能性もあろう。

インバウンドの質も重視した政策へ

もっとも、20年の政府目標達成が困難となっても悲観するには当たらない。五輪後にインバウンド数が大きく減る訳ではない、というのも過去の経験則である。日本が誇る観光資源の豊かさに鑑みれば、潜在的な伸び代は引き続き大きいと考えられる。都市圏やゴールデンルート以外の地方圏への訪日外客の誘導、長期滞在型の訪日外客の誘致、オーバーツーリズム(観光地の過度な混雑)解消に向けた工夫、訪日外客の自然災害への不安解消に向けたインフラ整備など、インバウンドの質に配慮した地道な取り組みがますます重要となってこよう。

 

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