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経済動向

経済動向
2020年2月号 No.515

インフラに突き付けた大きな宿題

大規模な災害に見舞われない平穏な1年――。近年の日本で失われた最も大きなものはこれではないだろうか。2019年も9月に台風15号、10月に台風19号が猛威を振るい、各地で甚大な被害を発生させた。特に19号による被害は東日本の広域に及び、今後のインフラ整備の在り方の再考を促すほどの被害をもたらした。

2019年に日本に襲来した台風15号と19号は勢力が強く、強風や大雨による被害を列島各地にもたらした。特に19号は、東日本の広い範囲で甚大な災害を引き起こし、10月28日時点の死者・行方不明者数は100人に及んでいる。全半壊した住宅は4008棟、床上浸水した住宅は3万4002棟に達した。

被害を大きくした一因は、河川堤防の決壊が相次いだ点にある。同日時点の国土交通省の発表では、決壊した堤防は7県の71河川で、計140カ所に至った。

国が管理する堤防で被害が集中した茨城県では、久慈川と那珂川で計6カ所の決壊が発生。那珂川では3カ所で200m以上にわたって堤防が崩れた。越水によって、川裏側の堤防が破壊されて、決壊に至ったとみられる箇所が目立った。6カ所とも堤防の高さや断面積が計画高水位に対応していない暫定堤防の区間だった。

堤防で注目に値するのは、計画高水位に対応する高さと断面を持つ完成堤防の区間でも水があふれる地点が多発した点だ。近年の気候変動の状況を踏まえると、将来の降水量に対応できなくなる可能性を示している。

橋台の流失被害も相次ぐ土砂災害にも新たな課題

落橋被害も目立った。長野県上田市を走る上田電鉄別所線の千曲川に架かる5連鋼トラス橋では、左岸側の橋台が倒壊。橋台の支えを失った端部が河道に落ちた。同じく千曲川に架かる海野宿橋でも、橋台が流失した。

橋台背面土の流失が引き起こす問題は、これまで、橋の技術者と堤防の技術者の境界領域で、十分な対策が講じられてこなかった領域となっている。こうした部分のインフラの状況を把握したうえで、対策の必要性などを早急に議論することが欠かせない。

土砂災害も数多く発生した。今回の台風被害で注視したいのは、土砂災害警戒区域の指定要件である30度よりも緩い斜面で土砂崩れがあった点だ。緩い斜面であっても、脆弱な地層を持つエリアは少なからず存在する。そうしたリスクのある箇所をいかに調査していくかは、今後の課題となる。

都市部では甚大な内水氾濫被害も生じた。川崎市の武蔵小杉駅周辺はその代表格だ。多摩川の水位が上昇して同駅の周辺地区に敷設された下水道管を逆流。超高層住宅がひしめく街の中心部に浸水被害をもたらした。超高層住宅で停電を引き起こすなど、住民生活に大きな影響をもたらした。

この被害では、インフラ管理者の災害リスクの想定に課題があると分かった。下水道は河川水の逆流を防ぐ門扉とつながっている。門扉を操作して閉めれば、逆流を防ぐことは可能だ。一方、門扉を閉めると街なかで大雨が降った際に、排水できなくなる。下水を管理する市では多摩川の増水と街なかでの大雨が同時に発生した場合を想定しておらず、門扉の適切な操作基準などを改めて検討する必要性に迫られている。

様々な難題を突き付けた台風19号。被害を冷静に分析し、国民も巻き込みながらハード、ソフトの両面から新たな治水や砂防などの対策を考えていかなければならない。

茨城県常陸大宮市内で約250mにわたって決壊した那珂川の堤防(写真:日経 xTECH)

 

 

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