経済動向

経済動向
2019年12・2020年1月号 No.514

好業績背景に投資と新領域開拓

 近年、復興事業や五輪関連事業などを追い風として、建設会社の業績が好調を維持している。少し前までは、「2020年の東京五輪以降が不安」という声が目立ったものの、25年の万博開催をはじめ、急速な市場悪化は避けられそうだという見通しも広がっている。

日経コンストラクションが主な建設会社に対して、2018年度決算(18年4月~19年3月に期末を迎えたもの)の状況をアンケート調査したところ、土木受注高の上位25社のうち、前期比で土木売上高が増収となった企業は17社と約7割に達した。

さらに、土木分野の完成工事総利益率を見てみると、最大手の4社は20%弱の水準を維持。全体売上高が500億円超、かつ土木売上高が80億円超の準大手・中堅建設会社43社でも10%の水準を超え、伸び続けている状況にある。発注量が多いために、不採算工事を受注しないような選別が適切にできているのだ。

ただし、利益率の右肩上がりを期待するのは難しいだろう。足元でも資材価格の高騰や人手不足による人件費の上昇などが危惧されている状況にある。急激に発注量が減少しないにしても、復興事業や五輪関連施設の整備が進めば、現状よりは発注量が減る可能性は低くない。実際に、日経コンストラクションのアンケートでは、19年度以降の業績に与えるリスクとして、労務単価の上昇を挙げる会社が54%と過半に達した。

IoT機器の導入企業は半数に
清水は作業船に500億円投資

将来のリスクを見通して、業績が好調なうちに建設市場としてこれから期待できる分野への進出や投資が活発になっている。その一例が維持・補修事業への進出だ。

中央自動車道の笹子トンネルの天井板崩落事故以降、インフラの老朽化対策の必要性が強く認知され、インフラの補修・更新事業が増えてきている。なかでも事業化が早く進んでいるのが高速道路だ。東日本、中日本、西日本の高速道路会社3社だけでも、15年間で3兆円の投資を行う予定にしている。

既に、橋の床版取り換え工事などが数多く発注され始めている。発注される工事規模も大きくなっており、建設会社にとっては、魅力のある市場だ。

研究開発への投資も活発になっている。最大手4社が投じる研究開発費は売上高の1%の水準にまで迫っている。全体売上高が2000億円超、かつ土木売上高500億円超で、研究開発費を公表している9社(最大手4社を除く)も平均で売上高の0.5%を投じている。いずれも近年は増加傾向にある。なかでも生産性向上に寄与する取り組みに力を入れる建設会社が多い。

アンケートに回答した建設会社129社に、人手不足解消のために取り組んでいる方策を尋ねたところ、BIM/CIMの実践とIoT機器の導入、建機の自動化・無人化施工といった分野が半数程度に及んでいた。国土交通省のi-Constructionの施策を受けた改革が浸透してきている様子が浮かび上がる。

成長分野への投資という点では、再生可能エネルギーによる発電事業に関連した投資が目立つ。清水建設は洋上風力発電施設の施工に使う作業船であるSEP船の建造に約500億円を投じると発表。大林組も東亜建設工業と組んでSEP船を建造する。奥村組はバイオマス発電事業に参画すると発表している。

 

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