建設経済の動向

建設経済の動向
2019年7・8月号 No.510

2019年度の自治体予算 公共投資額が4年ぶりに好転

公共事業などに充てる投資的経費。2019年度の都道府県予算では、4年ぶりの増加となった。予算増をけん引した一因は、自然災害からの復旧や激甚化している災害への対応といった復旧・防災関連の事業だ。東京五輪や大阪・関西万博といった大型イベントも、自治体によるインフラ整備の推進を後押ししている。

自治体の歳出のうち、投資的経費とはインフラ整備といった公共事業に充当する費目だ。普通建設事業費や災害復旧事業費などから成る。都道府県の2019年度予算を分析すると、この投資的経費が4年ぶりに増加に転じていた。知事選などの影響で骨格予算や暫定予算を組んだ11道県を除く36都府県の投資的経費の合計額は、6兆7570億円に達した。前年比で11.1%増加しており、36都府県のうち、31の自治体が前年度よりも投資的経費を増やしていた。

地震や風水害への対策に投資18年に被災しなかったエリアでも活発に

投資的経費の増加に結び付いた一因は、災害の復旧や防災・減災に対する取り組みが広がった点にある。2018年は西日本豪雨や台風21号といった風水害、北海道胆振東部地震といった震災が相次いだ。

投資的経費の前年との増減率を見ると、最も増えたのが84%増の広島県、これに次いだのが53.1%増の岡山県だった。いずれも、西日本豪雨で甚大な被害を受けた自治体だ。広島県では、被災を免れた地域でも防災・減災対策に注力する考えだ。北海道では、北海道胆振東部地震で被災した耕地や林道、治山施設などの復旧事業として154億円を計上している。

このほか、大阪府では建設から約半世紀を経た三大水門を更新して、津波や高潮に対応できるようにする。19年度は一部の水門の詳細設計を実施する予定だ。ハードだけでなく、ソフト面での対策に注力する自治体もある。千葉県は、地震計から得られたデータから人的被害を推定するシステムの高度化を図る事業を進める。液状化被害や帰宅困難者などの予測を可能にする。

大阪府が更新を進める予定の三大水門の1つ「木津川水門」(写真:大阪府)

五輪や万博に伴う事業を計画インバウンドを狙った取り組みも

今後、日本国内では国際的な大型イベントが続く。19年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪・パラリンピック、25年の大阪・関西万博などは代表例だ。こうした大型イベントに伴って自治体で進めるインフラ整備も少なくない。

例えば、東京都は19年度予算で競技施設などの整備に加え、ヒートアイランドの抑制に向けた遮熱性・保水性舗装の整備も行う。暑さ対策の事業だけで214億円を計上している。神奈川県では、東京五輪を見据えた幹線道路整備に160億円強を投じる予定だ。

インバウンド対策も自治体が力を入れる事業だ。愛知県はスタジオジブリと合意した「ジブリパーク」の22年開業に向け、施設の設計などを進める。そのための費用として、9億6413万円を見込んでいる。05年の愛知万博の会場を活用する。大阪府では、特定複合観光施設区域(IR)の誘致を実現するために、IR事業者の公募や区域認定申請に向けた整備計画の策定などを進めていく方針だ。予算は前年度の約4倍の3億1814万円に拡充した。

愛知万博の会場に建設予定の「ジブリパーク」のテーマエリア(資料:愛知県)

 

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