建設経済の動向

建設経済の動向
2018年11月号 no503

7月豪雨で1兆円超、過去最大の被害

6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、8月の台風21号、9月の北海道地震――。2018年夏、日本列島は4カ月連続で大規模な自然災害に見舞われた。なかでも、西日本豪雨による被害額は1兆円を超え、1回の豪雨・台風による災害としては、1961年の調査開始以降、最大を記録。政府は2018年度の補正予算や2019年度予算で、防災関連事業を加速する。

2018年は、自然災害が相次いだ年として記憶されることになるかもしれない。2011年の東日本大震災以降、各地で「国土強靱化」を旗印に防災・減災事業が行われてきたが、その進捗がまだ十分でないことが改めて浮き彫りになった。
なかでも大きな被害をもたらしたのが、6月28日から7月8日にかけての「平成30年7月豪雨」(以下、西日本豪雨)だ。広島、岡山両県を中心に、随所で大規模な土砂崩れや河川氾濫が発生し、死者・行方不明者は231人に上る(9月10日時点)。豪雨や台風による死者・行方不明者は36年ぶりに200人を超えた。
国土交通省の推計によれば、西日本豪雨による被害額は1兆940億円に上る(下図)。1回の豪雨や台風による被害額としては1961年の調査開始以来、最大だ。内訳は、民間の建物や農産物などの一般資産が6290億円、河川や道路といった公共土木施設が4430億円、鉄道や電気通信などのライフライン関連が220億円だ。

図 西日本豪雨による全国の被害

今年は地震による被害も大きかった。例えば、9月6日に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震では、北海道内で初めて震度7を観測。道内で220カ所の土砂災害が発生し、北海道厚真町を中心に41人の死者が出た。被害額は、道路(561億円)、河川(435億円)などの公共土木施設が計1261億円、商工業や農林水産業を含めた道内全体で2089億円に達した(北海道と道内市町村所管施設のみ、10月5日時点)。

相次ぐ災害受け「3年で集中対策」
概算要求では水害対策を33%増

こうした自然災害の多発を受け、政府は空港や電力施設などの重要インフラを緊急点検する。11月末までに対策をまとめ、早期に着手できるものは2018年度の補正予算で対応する。点検を指示した安倍晋三首相は9月21日、「緊急対策を3年間で集中して講じる」と話している。
点検の対象は、電力供給に関わる施設や停電によって致命的な機能障害に陥るインフラ、災害時に人命を守るインフラなど。11府省庁が管轄する施設に対し、計118項目の緊急点検を実施する。河川や空港、港湾などを管轄する国土交通省の対象は計53項目に及ぶ。
西日本豪雨で河川の本流から支流へ水が逆流する「バックウオーター現象」で堤防が決壊したことを踏まえ、本流と支流の合流部など氾濫の危険性が高い箇所を洗い出し、堤防の整備状況を点検する。対象河川は1級河川が全国で約1万4000、2級河川が約7000。
空港では、台風21号に伴う高潮で関西国際空港の滑走路やターミナルビルが浸水したことから、重要な16空港を対象に管制施設や電源設備、無線施設の設置状況などを確認する。また、北海道地震で発生した大規模停電(ブラックアウト)を踏まえ、全国の発電設備や送配電網を総点検する。
国の2019年度予算に関し、国土交通省は公共事業関係費を18年度当初予算比で19%増とする概算要求を発表した。公共事業関係費の要求額は6兆1736億円で、前回の要求額に比べると2%増。前回の要求がその前年の要求額に対して0.1%増だったのに比べれば強気と言える。これも、今年の豪雨や地震など自然災害の激化が背景にある。
堤防整備などの水害対策は18年度当初予算比33%増の5237億円、土木施設や建築の耐震化といった地震対策は30%増の2189億円を要求。ともに前回の要求額と比べて10%以上の増額となる。

 

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