建設経済の動向

建設経済の動向
2018年5月号 No.498

「簡易確認型」入札を本格導入へ

国土交通省は2018年度から、総合評価落札方式の入札で参加者に提出を求める技術資料を1枚に簡素化する「簡易確認型」の適用を拡大する。受発注者双方の負担軽減が狙いだ。施工実績や過去の工事成績などで点数を付ける「施工能力評価型」のうち、10者以上の参加が見込まれる案件で簡易確認型を原則化する考えだ。

国土交通省は、3月7日に開いた「総合評価方式の活用・改善等による品質確保に関する懇談会」(座長:小澤一雅・東京大学大学院教授)で、総合評価落札方式のうち、「簡易確認型」の適用を2018年度から拡大する方針を示した。
国土交通省の直轄工事では2007年度以降、ほぼ全ての案件で総合評価落札方式が採用されてきた。ただし、技術提案書の作成や審査に手間を要するため、2013年度から「二極化」に舵を切り、工事の難易度などが比較的低い案件を対象に、技術提案を求めない「施工能力評価型」の適用を開始。2016年度に国土交通省の8地方整備局が発注した工事では、施工能力評価型が全体の94%を占めている(件数ベース)。
2018年度からは、10者以上の参加が見込まれる施工能力評価型の案件で簡易確認型を原則化し、さらなる手続きの簡素化を狙う。

技術資料の提出は1枚でOK
入札参加者の資料作成負担は6割減

簡易確認型の入札の流れは下図の通りだ。入札参加者が所定の様式に基づいて施工実績などを点数化した簡易技術資料1枚を、工事費見積額を記入した入札書とともに提出する。発注者は簡易技術資料と入札書から技術点と価格点を算定し、これらの点数を基に算出した「評価値」の高い上位3者程度を落札候補者として選定。落札候補者に簡易技術資料の根拠となる確認資料(詳細技術資料)の提出を求め、その内容などを審査したうえで落札者を決定する。
施工能力評価型の入札では従来、発注者が技術点算出の根拠などを確認する目的で、各参加者に15種類・70枚程度の技術資料の提出を求めてきた。簡易確認型は、こうした資料の作成と審査を3者程度の落札候補者に限定することで、受発注者双方の事務負担を軽減する。
簡易確認型による入札は、2016年度に関東地方整備局が試行を開始。2017年度には東北と中部、九州の各地方整備局や北海道開発局でも試行している。
2017年度の簡易確認型の実施件数は見込み分も含めて全国で計93件。入札参加者数は平均約8者だった。従来はこの8者全員が詳細な技術資料を作成しなければならなかったが、簡易確認型では資料作成は落札候補者の3者に限られる。残りの5者は資料を作成する必要がないので、全体で見ると参加者の資料作成負担が6割ほど軽減できるという。
今後は、これまで紙資料でやり取りしていた簡易確認型の仕組みを改良し、3月末までに電子入札システムに対応できるようにするなど、本格導入に向けた環境整備を進める。

図 簡易確認型と現行方式の比較

(注)国土交通省関東地方整備局の資料を基に作成

 

【冊子PDFはこちら

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら