建設経済の動向

建設経済の動向
2023年12月・2024年1月 No.554

多様化する入札加点、対応項目が複雑に

国の施策の浸透や社会問題の解決を図るツールとして、総合評価落札方式の入札が活用されている。近年は若手技術者の育成、ICT施工をはじめとする効率化の推進、賃上げといった内容が入札時の加点項目に名を連ねる。日経クロステックが独自調査した結果なども踏まえて、最新の入札動向を解説する。

総合評価落札方式における加点項目が多様化している。社会問題などを受け、誘導すべき政策が増えていることが背景にある。

日経クロステックは2023年8月、国土交通省の各地方整備局と都道府県、政令市、高速道路会社などを対象に、総合評価落札方式における加点項目や入札の実施実績といった項目を調査した。その結果、最も多くの発注機関で採用していた加点項目が「若手技術者の配置」だった。アンケートに回答した発注機関の77%が加点の対象にしていた。これに続いたのが、「女性技術者の配置」(52%)だった。

少子化の影響と建設産業での人手不足を受けて、若手技術者や女性技術者の確保は容易ではない。一方で、会社の魅力を高め、こうした技術者を確保できるようになれば、組織の競争力を高められる可能性が増す。

会社の環境を整えるという点で最も重要な項目の一つが労働時間だろう。労働基準法における時間外労働の上限規制の問題に対応するうえで、週休2日の実現は重要なカギを握る。先に紹介した総合評価落札方式に関するアンケートでは、「週休2日(4週8休)の実績」を採用する発注機関は45%に達し、加点項目としては3位につけていた。

 

国と地方で活用度に差
入札手続きを簡素化する動きも

業務効率化や安全性の確保という観点で期待されているのが、ICT活用工事だろう。同工事の実績を加点項目としている発注機関も4割を超えている。現状のICT活用工事は、国が発注する工事で先行しているものの、地方の工事での活用はまだまだ進んでいない。

例えば、受注者希望型ICT活用工事の発注件数に対するICT活用工事の実施割合は、国交省など国の機関で7割を超える半面、都道府県で33.1%、政令市で23%の水準にとどまっている。

さらに、国土交通省が業務や工事での活用を原則化したBIM/CIMについても、地方の出遅れが目立っている。22年度の詳細設計業務でBIM/CIMを活用した業務については、調査時点で20府県と全ての政令市で発注者指定型も受注者希望型も発注件数がゼロだった。

民間における賃上げ推進のために22年度に国が直轄工事や業務で始めた賃上げ加点は、大手・中小の建設会社などの賃上げを促した。実際の入札においても、賃上げ表明をした企業の落札割合が入札参加者における賃上げ表明企業の割合を上回っており、賃上げは落札に有利に作用してきたと言えそうだ。

加点項目などが複雑になる影響を踏まえて、入札手続きを簡素化する動きも加速している。例えば、国交省近畿地方整備局では、工事入札において、施工計画の評価を10点満点で評価するのではなく、可・不可でシンプルに振り分けるよう改めた。

さらに、企業や配置予定技術者への加点を縮小・省略する簡素化も進んでいる。配置技術者の実績評価や企業の施工実績の評価を省略するような施策だ。発注機関側の業務が簡素化されるだけでなく、受注者側も監理技術者の人繰りなどの調整が楽になるので、入札に参加しやすくなるというメリットがある。

 

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