経済動向

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2023年5月号 No.548

23年度施行予定の改正法でどうなる空き家対策?

空き家が台風や大雪で倒壊して、隣接する住居への被害や道路利用の障害をもたらす――。空き家の増加に伴い、こうしたリスクが目立ってきた。空き家法の制定後、自治体は対策を進めた。しかし、危険な状態となってから手を打つのでは遅いという課題を受け、同法の改正手続きが進む。改正法案の概要を解説する。

人口減少に加え、高齢化社会の加速によって、空き家問題がどんどん大きくなっている。1998年から2018年までの20年間で、居住目的のない空き家の戸数は1.9倍になった。18年時点で居住目的のない空き家は349万戸に及び、この調子で増加を続けていくと2030年には470万戸に達する見通しだ。

こうした利用の当てのない空き家を放置すれば、地震や台風といった天災時に倒壊して道を塞いだり、隣家などに被害を及ぼしたりしかねない。さらに、管理されていない空き家は、犯罪拠点となるリスクもはらむ。

空き家問題は過去にもクローズアップされてきた。2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家法)が施行。地域住民の生命や財産の保護、生活環境の保全、空き家の活用などを目的とした。同法では、保安上危険な空き家などを「特定空家等」と定め、自治体が様々な対策を講じやすくした。

空き家法の施行後、老朽化した空き家が危険な状態になってから手を打つ取り組みは各地で散見されるようになった。他方、危機的な状況になってから手を打つのではもう遅いという認識も広がった。そこで、国は空き家法の改正に向けて動き出した。改正案は2023年3月に閣議決定され、23年度内の施行を目指している。

「管理不全空家等」を新設
接道や用途の規制緩和も進める

法改正の主なポイントは以下の通りだ。まずは、行政が空き家対策に関与できる範囲を拡大するために「管理不全空家等」を定める。特定空き家になる一歩手前の段階で、市区町村長による指導や勧告の対象とできる。勧告を受けた場合は、住宅地として受けられる固定資産税の特例対象から除外される。

空き家対策を推進できるプレーヤーも拡大する。「空家等管理活用支援法人」の創設だ。空き家対策に従事しているNPO法人(特定非営利活動法人)などに公的な立場を与え、所有者の相談を受けやすくする。

空き家活用の事業に深く関わる変更としては、「空家等活用促進区域」の新設が挙げられる。市区町村が中心市街地や観光振興を図る区域などから同区域を定め、活用促進指針をまとめる。

この区域内では、建築基準法における接道規制を緩和できる。この他、用途規制の緩和も可能になる。住宅に限られた用途地域で店舗の設置を可能にするといった具合だ。特定行政庁でなく、市区町村でも条件設定できるようになるので、活用のハードルが下がる。

空き家対策を推進するうえでプラスに作用しそうなのが、法務省が2024年4月に予定している相続登記の義務化だ。空き家問題を大きくする一因となっている所有者不明の問題を解消していく狙いがある。

今回の法改正などが、待ったなしの空き家対策に向けて、行政や建築実務者の積極的な行動をさらに促す転機となることを期待したい。

 

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