日本経済の動向

日本経済の動向
2023年4月号 No.547

防衛関係費増加で大幅に膨張する政府予算

2023年度の政府の当初予算規模は、防衛関係費の増加を主因に114.4兆円と例年に比べ大幅に増加した。今後も防衛関係費のほか少子化対策などの分野で支出の拡大が見込まれる状況であり、仮に十分な財源が確保できなければ、2025年度に基礎的財政収支を黒字化するとの政府目標は先送りされる可能性が高い。今回は、政府の財政運営のポイント、特に財源確保を巡る課題について解説する。

2023年度当初予算は防衛関係費などが増加

2022年12月23日、政府は2023年度当初予算案を閣議決定した。一般会計歳出額は114.4兆円で、前年度当初予算対比6.8兆円増と、大幅に増加した。


(注)増減は前年度当初予算対比。「うち防衛関係費」は防衛力強化資金繰入れ分を除いた予算額を表示
(資料)財務省資料により、みずほリサーチ&テクノロジーズ作成

増加の主因は防衛関係費の増額、防衛力強化資金繰入れの計上であり、その他の支出については、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加分の範囲内に抑えるなど、一定の財政規律は維持されていると言えるだろう。

また、高水準の税収の確保などを受けて、当初予算ベースで新規国債発行額が減額となっている(2022年度当初予算:36.9兆円⇒2023年度当初予算:35.6兆円)点も評価出来る。

今後も歳出増加の公算。財源確保が課題に

ただし、近年は当初予算で歳出を抑える一方で、大規模な補正予算が計上される状況が続いている。2023年度も欧米を中心とした海外経済の減速が見込まれ、年度中に補正予算が編成されることで、歳出が増加する可能性がある点には留意が必要だ。

防衛関係費については、2024年度以降も増加が見込まれ、財源の確保が課題になる。政府の「中期防衛力整備計画」では、2027年度までの5年間で43兆円規模の支出が見込まれている。2027年度以降は防衛関係費が年当たり8.9兆円と、2022年度(5.2兆円)対比で3.7兆円増加することとなる。

財源として政府は、①法人税・所得税・たばこ税の増税(1兆円強)、②特別会計からの繰り入れや国有財産の売却収入などが充てられる防衛力強化資金(0.9兆円)、③決算剰余金(0.7兆円)、④歳出改革(1兆円強)で賄うことを想定している。

国有資産の売却などは一時的な性格の強い歳入であるほか、決算剰余金も補正予算の編成時の財源として活用されることが多く、全体としてみれば安定的な財源が十分に確保されているとは言い難い面もある。実際に必要となる増税の規模はさらに膨らむ可能性があるのではないか。

中期的な財政健全化に向けた取り組みが必要

さらに、今後は少子化対策などの分野でも支出の拡大が見込まれる状況だ。岸田首相は、「異次元の少子化対策」を掲げ、関連予算を大幅に増加させる構えだ。

増税や社会保険料増加については、国民からの反発の声もある中、歳出増額や財源確保の必要性について丁寧な説明を行うことが、政府には求められる。仮に十分な財源が確保出来なければ、2025年度に基礎的財政収支を黒字化するとの政府目標は先送りされる可能性が高いだろう。

政府債務残高が高水準で推移する中(財務省によれば、2023年度末の国の公債残高は1,068兆円(GDP比187%)になると見込まれる)、金利が上昇すれば、国債費が大幅に増加してしまうことは避けられない。

経済動向などに対応するための財政支出が重要であることはもちろんであるが、政府には、EBPM(Evidence-based policy making:証拠に基づく政策立案)推進による歳出の効率化など、中長期的な財政健全化に向けた取り組みにも期待したい。

 

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