建設経済の動向

建設経済の動向
2018年2月号 No.495

賃上げ幅拡大も休日数に課題

近年、業績の良さが目立つ建設会社。それを反映して、2017年の建設会社の平均賃上げ幅は他業種に比べて大きく、ベースアップの実施率も高かったことが分かった。一方、待遇面で課題が残るのは休日だ。週休2日相当の休みとなる「4週8休」を実施している企業は2割に満たない。働き方改革の余地はまだ大きいと言えそうだ。

昨年11月号の本欄で、主要建設会社の2016年度決算の動向について取り上げた。大成建設、鹿島、大林組、清水建設の大手4社では、いずれも2期連続で連結純利益が最高値を更新するなど、建設会社の業績はおしなべて好調であることをお伝えした。
このような好業績の下、かねて課題と言われてきた社員の待遇改善は進んでいるのだろうか。2017年11月に公表された2つの調査結果を通して見ていこう。

賃上げ幅は全15業種中で最大
ベースアップ実施率も3割以上

厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、2017年の所定内賃金の引き上げ額は、建設業が1人当たり月額8,411円と、全15産業の中で最も大きかった。全産業平均は5,627円だった(図1)
建設業の賃上げを率で見ると2.5%で、全産業の2%を0.5ポイント上回った。国土交通省が公共工事の設計労務単価を大幅に引き上げた2013年ごろから、全産業平均に比べて上げ幅が拡大しており、こうした政策の効果が賃金上昇の一因と考えられる。なお、直前の2012年時点では、建設業の賃金引き上げ幅は全産業中4番目だった。
定期昇給を含め、2017年に賃金の引き上げを実施した、または実施予定と答えた建設会社は全体の97.1%に上った。そのうち、70.7%が管理職を、83.1%が一般職を対象とした定期昇給制度を持っている。
建設業では、管理職と一般職ともに、定期昇給制度を持つ会社の3割以上がベースアップを実施している。全産業でベースアップを行った会社の割合は、管理職が22.9%、一般職が26.8%となっており、ここからも建設産業の待遇改善が進んでいる様が読み取れる。

図1 賃金引き上げ額(月額)の推移

 

休日は「4週6休」の企業が最多
「4週8休」は2割以下にとどまる

一方で、まだ改善の余地が大きいのが休日だ。全国建設業協会(全建)が会員企業を対象に実施した「働き方改革の推進に向けた取り組み状況等に関するアンケート調査」の結果を見ると、週休2日相当の休みを確保している企業の割合は2割に満たないことが分かる(図2)
4週単位で休日数を尋ねたところ、「おおむね4週6休」と答えた企業が最も多く、全体の54.8%を占めた。「4週8休」は16.7%にとどまり、「4週5休」と「4週7休」がともに12.3%。「4週4休以下」と答えた企業も4%あり、週休2日の普及には遠い状況にあることがうかがえる。
長時間労働の是正や週休2日の普及に向けて必要と考える取り組みについては、「適正な工期の設定」とする回答が最も多く、「提出書類の簡素化・削減」、「設計労務単価の大幅引き上げ」がこれに続いた。また、長時間労働を解消するには生産性の向上が有効だが、i-Constructionの推進に向けた機器などの導入に関して、「導入したいがそのゆとりはない」とする企業が最も多く、35.6%に上った。

図2 週休日の実施状況

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