経済動向

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2022年4月 No.537

実務や転職、昇進・昇給に役立つ資格は何か

数ある建設系の資格の中で、実務者の役に立つ資格は何か。日経クロステックでは建設実務者に対して、実務や昇進・昇給、社内外からの評価などの観点から、保有資格が役に立ったか否かをアンケートで確認した。今月は、その詳細について紹介する。

建設産業で責任ある仕事をこなしていくためには、資格取得が欠かせない。専門分野に応じて資格の種類は多く、複数の資格取得を目指す人材は珍しくない。では、数ある建設系の資格のうち、どのような資格が技術者に役立っているのか―。日経クロステックでは、2022年1月に建設関係の実務者向けに、そんな疑問をウェブアンケートでぶつけてみた。500人から回答を得た結果は以下のような内容となった。

回答者500人のうち、建設会社で働く実務者は219人。このうち、保有者数が最も多かった資格は1級土木施工管理技士で、59.4%に達した。同資格を保有する人のうち、「実務に役立った」と回答した人の割合は65.4%に達した。

一方、「昇進や昇給に役立った」との回答は30.8%にとどまった。ただし、昇進や昇給の面で役立ったという回答があった建設系の資格で、回答が5割を超えたものは1つもなかったので、他の資格と比べた昇進などへの貢献度は決して小さくない。公共工事が中心となる土木工事で、監理技術者を務める際に欠かせない資格である点が、比較的高い評価につながっているとみられる。

資格保有者の回答者数が50人以上の資格で、「実務に役立った」という回答が最も多かったのが1級建築士だ。70%の1級建築士がそう答えた。「社内外からの評価の向上に役立った」という回答も保有者の57.1%に及び、取得しがいのある資格だと分かる。

この「社内外からの評価の向上に役立った」という視点で最も評価が高かったのが技術士だ。技術士(建設部門)保有者の66.7%が、評価の向上を感じている。

他方、建設会社で働く人の場合、技術士(建設部門)の実務や昇進・昇給への役立ち度はそこまで高くなく、それぞれ41.7%、23.3%となっていた。実務で役立つ場面は必ずしも多くないものの、自己研鑽などの観点で取得している技術者が多い実情がうかがえる。

若手は転職への期待も ベテランは外部講習を望む

資格取得が転職に役立つという話はよく耳にする。実際に建設系の中途採用の求人では、1級土木施工管理技士をはじめとした資格の保有者を求めているケースが少なくない。ところが、アンケートでは転職に役立ったと回答する資格保有者は限られており、保有者の1割を超える回答があった資格は1つもなかった。

ただし、資格取得を目指す若手には、資格取得の目的として転職を視野に入れる人が少なからず存在する。資格取得の理由を選択肢で回答してもらった質問では、「転職を有利にする」という理由は40代、50代、60代以上で10~15%程度にとどまったものの、39歳以下では25.8%と10ポイント以上高くなっていた。

近年は、資格者数の不足に悩む建設会社も少なくない。社内での若手の資格取得支援が、重要な課題となっている。そうした会社に参考になりそうなのが、資格取得時に役立ったサポートの内容を回答してもらった結果だ。資格取得の際に役立った対策を選択肢から選んでもらったところ、39歳以下の回答者では「社内の勉強会」「上司や先輩社員による個別指導、添削」を選んだ人が3割程度いた。40代以上の世代ではいずれも約2割だったので、若手向けに社内で勉強の機会をつくる対策は有効なようだ。

一方、40代以上の世代が役立ったと考える支援策は「社外のセミナーや個別指導」。こちらは39歳以下が2割程度の回答だったのに対し、40代以上では3~4割程度に達していた。

(%)

建設系の主な資格の保有者から見た資格の「役立ち度」を尋ねた結果。資格を保有する回答者数が20人以上の資格だけ掲載した(図:日経クロステック)

 

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