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2019年10月号 No.512

解体されてしまう仮設足場の設置 だからこそ、職人の記憶に残る 安全な足場づくりを

 

解体されてしまう仮設足場の設置
だからこそ、職人の記憶に残る
安全な足場づくり

登録鳶・土工基幹技能者
株式会社ハヤブサコーポレーション
内田 春樹(うちだ はるき)さん
1987年7月生まれ 
岡山県出身

「現場の花形」とも称される鳶の仕事。建設現場に足場をつくる仮設工事など鳶の仕事の舞台は高所がほとんどだ。「まだ誰も足を踏み入れていない高い場所に最初に上り、他の職種の職人さんたちが、仕事をしやすいように場を整えるのが私たちの仕事です。みんなが安全に歩き、安心して作業ができる足場をつくるためにはどのくらいの空間が必要なのかなど、考えるのが楽しいですね」というのは、株式会社ハヤブサコーポレーションの内田春樹さん。足場は仮設のため、作業が終われば跡形もなく解体される。「だからこそ職人さんに、『あのときの足場は、仕事がしやすかった!』といってもらえると嬉しい」と内田さんの表情は、安全に対する使命感に満ちている。

職人たちの記憶に残る足場づくりに全力を傾け、本領を発揮するのは、図面がない現場や超高所での作業だ。「たとえば工場の配管回りなど、図面が引けないような現場は、足場の組み方も十人十色です。そんなときには、諸先輩方に教えてもらった技術を組み合わせながら最善の策を考えます。先日は80mの高さに足場を組みました。高い場所で物の受け渡しを伴う作業は危険ですから、2×4mのステージを地上ですべて組み立て、吊り上げて設置しました。これは、『会長だったらそうするだろうな』と考えて取った方法です」と内田さんは語る。鳶の仕事は、“段取り8分、現場仕事2分”という岡本啓志会長の教えに忠実に、職長として現場を守るため2年前に登録鳶・土工基幹技能者を取得した。

「内田君は現場の厳しさを理解したうえで、予算管理やお客さまとの折衝はもちろん、積み込みや片付けなども率先して行っています。若い者たちのいい手本だし、お客さまの評価も高く安心して任せる事ができます」と岡本会長は評す。また、同社取締役・矢武優一さんは、内田さんの素晴らしさは段取り力だという。「現場を任せると、1週間の天気を把握して作業工程を組み立てています。晴れの日を屋外、雨の日は屋内の作業にあてるなど、安全性と効率を計画的に担保する姿勢は見習うべきです」

師と仰ぐ会長や、尊敬すべき先輩に囲まれ「これまで一度も、くじけそうになったことも、仕事を辞めたいと思ったこともないんです」と胸を張る内田さん。その恩に報いるべく、今度は自分が若者に鳶の仕事の魅力を伝えていきたいという。「どんな現場でも、鳶がいないと他の職人さんは仕事ができません。それくらい大切な仕事。それを伝えるためにも、厳しさとやさしさのメリハリをもって、若手を育成していきたいですね」。

 

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