日本経済の動向

日本経済の動向
2019年5月号 No.508

地方圏の地価を下支え インバウンド需要拡大が地価上昇要因に

2018年は不動産市場がピークアウトするとの懸念がくすぶり続けたが、結局、最後まで不動産市況は堅調さを維持した。三大都市圏だけではなく、外国人観光客の地方訪問増加により、地方圏の商業地および住宅地ともに、地価が持ち直し傾向にある。そこで今回は、インバウンド需要拡大と地価の関連や、地方圏への外国人観光客訪問増加に向けての対応などについて解説する。

地方圏の地価もほぼ底入れ

2018年の地価の動向をみると、三大都市圏の商業地や住宅地の前年比伸び率が拡大したほか、地方圏も商業地および住宅地ともに前年比マイナス幅が縮小し、地方圏の不動産もほぼ底入れしたといえる(図1)。 

みずほ総合研究所が行ったテキスト分析によると、訪日外国人客の増加がホテルや店舗などの需要を高め、地価の押し上げに寄与している可能性が示されている。また、定量分析によると、外国人宿泊客の増加が商業地および住宅地の地価を大きく押し上げている。

特に、人口が減少傾向にある地方圏では、外国人観光客の訪問増加が地価の回復に関係しているとみられる。地方圏における外国人延べ宿泊者数シェアをみると、地方圏のシェアは近年徐々に高まっており(図2)、地方における外国人観光客の増加が、来訪地の活性化に寄与していると考えられる。

国内旅行の需要喚起がポイント

外国人観光客の増加は、地方圏の不動産市場の活性化に向けたひとつの切り札になりうる。ただし、外国人観光客の地方訪問を促すには、旅客収容能力の拡大や二次交通の整備に加え、地域独自の体験を軸としたコト消費による観光資源の創出なども必要である。 

また、外国人観光客の受け入れ環境の整備を進めるに当たっては、日本人旅行者をどれだけ誘致できるかも重要になる。なぜなら、延べ宿泊者数の大部分は、依然として日本人が占めているからである(図3)。国内旅行需要が喚起されれば、交通網の整備や宿泊施設の拡充など、受け入れ環境整備が促進され、結果として外国人観光客の誘致にも有利に働くことになる。

地方圏では都市圏以上に人口減少が大きい。この危機を食い止めるためには、外国人観光客および日本人旅行者の誘致による交流人口の増加が数少ない希望の光のひとつになっているといえよう。外国人と日本人の旅行需要をどう取り込んでいくか、地域興しの鍵もインバウンドと国内旅行が結びつくことによって可能となる好循環の実現にある。

 

【冊子PDFはこちら

関連記事

しんこう-Webとは
バックナンバー
アンケート募集中
メールマガジン配信希望はこちら