建設経済の動向

建設経済の動向
2019年2月号 No.505

万博とIRで巨額のインフラ投資

2025年の国際博覧会(万博)が、大阪市で開催されることに決まった。会場となる人工島の夢洲(ゆめしま)は、島内のインフラ整備が十分でなく、アクセス交通も乏しい。大阪府などが誘致を進める統合型リゾート(IR)の開業もにらみ、これから巨額のインフラ投資が始まる。万博とIRを合わせれば、建設投資の規模は6000億円を超えるとみられる。

2018年11月23日(日本時間24日未明)、フランス・パリで博覧会国際事務局総会が開かれ、日本(大阪)が2025年の万博開催国に選ばれた。会期は5月から11月にかけての185日間。政府は2800万人の来場者を見込み、経済波及効果を2兆円と試算する。
会場となるのは、大阪湾に浮かぶ390haの人工島・夢洲。大阪市が1991年から造成を始めた埋め立て地だ。2008年の五輪開催候補地として名乗りを上げたが、招致に失敗。その結果、埋め立てはまだ終わっていない。一部の区画を除いてインフラも未整備で、アクセス交通も限定されている。
万博開催まで6年余り。この短い期間で、パビリオンなどの施設だけでなく、島の内外に膨大な量のインフラを整備する必要がある。

目玉は地下鉄延伸とアクセス橋の拡幅
IRが実現すればJRや私鉄も参戦へ

大阪市はまず、夢洲の埋め立て工事を加速させる。2018年12月に成立した総額140億円の補正予算のうち、136億円を造成工事に充てる。さらに、造成費用の一部は土地の売却益によって賄う。埋め立ての完了後は、万博やIRの計画などに合わせて道路や上下水道、ガスなどのインフラ整備に着手する。
アクセス交通の整備も急務だ。大阪メトロ・地下鉄中央線を約3km延伸して、夢洲に新たな駅を設ける計画(下図)。中央線の延伸計画は、五輪招致を目指していた頃から存在したが、招致失敗後は凍結していた。2018年12月の市の補正予算では調査費用として1億3600万円を確保。実現に向けて再び動き出す。

図 万博会場の夢洲(ゆめしま)へのアクセス交通整備計画

自動車用道路では、夢洲と舞洲(まいしま)をつなぐ夢舞大橋と、舞洲と市中心部を結ぶ此花大橋を、万博までに4車線から6車線に拡幅する。約40億円を投じる計画だ。
加えて、関西の経済界が大きな期待を寄せているのが、夢洲を舞台に誘致を進めている統合型リゾート(IR)だ。市の試算によれば、開業予定の1期区画70haだけで国内外から年間1500万人を呼び込む。
万博施設とは別に、カジノやMICE(国際会議などのイベント)施設を整備するほか、交通網のさらなる充実も検討されている。例えば、JR西日本と京阪電気鉄道が自社路線の夢洲への乗り入れを構想している。
JR西日本はゆめ咲線の延伸検討を2018年からの中期経営計画に、京阪電鉄は中之島線の延伸構想を2026年までの長期経営戦略にそれぞれ盛り込んだ。いずれも建設に10年以上の工期と数千億円の事業費を要する大事業。IRの実現などで継続的に収益を上げられると判断した場合に具体的な検討を始める。
ただし、IR開業への道のりは前途多難だ。2018年7月に公布された特定複合観光施設区域整備法(IR整備法)で示された手続きは煩雑で、建設する場所も事業者も、いつ決まるか見通しが立っていない。決定した後も、住民との協議の場で反対意見が出るなどして、合意形成に時間を要する可能性もある。
それでも万博とIRは、長らく“地盤沈下”が指摘されてきた関西での久々に明るい話題。大阪万博の立候補申請文書やIRに関する市の試算などによれば、万博とIRに関連する事業規模(建設投資額)は合わせて6280億円。多くの建設関係者は期待を込めて、既に準備に取り掛かっている。

 

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