建設経済の動向
i-Construction10年の成果、さらなる生産性向上へ

国土交通省が、建設生産プロセスの全てでICT(情報通信技術)の活用を柱の一つに据えた施策「i-Construction」を開始して、10年がたつ。建設業界の生産性は大幅に向上したが、他業界と比べると水準はまだ低い。これまでの10年の動向を振り返りつつ、今後の生産性向上策の方向性について解説する。
国土交通省が「生産性革命元年」と位置付け、測量・調査から設計・施工・検査といった建設生産プロセスの全てでICTの活用を柱の一つに据えた施策「i-Construction」を開始した2016年から、丸10年がたつ。「25年度までに建設現場の生産性の20%向上」という目標値は達成できたのか──。国は目標を達成するための指標を明確に公表していないものの、いくつかのデータで効果を表している。
例えば、国が23年度に公告したICT活用の対象工事の87%でICT施工を実施。ICT施工による延べ作業時間の縮減効果を掛け合わせると、15年度比でICT活用の対象工事全体の約21%の作業時間を減らしたことになる。
ICT施工は、比較的作業が単純でスケールメリットを生かしやすい大規模土工を中心に実施が進んだ。その後、舗装工や浚渫工などへと適用する工種を拡大。ICT施工の実施率が高い土工と河川浚渫工については、25年度にICT施工の原則化に踏み切るまでに至ったのは記憶に新しい。
それでも、まだまだ地方中小では「ICT施工未経験」という企業が少なくない。ICT施工の実施率を企業の規模別に見ると、16~24年度の直轄工事でA、BランクではICT施工の実施率がほぼ100%なのに対して、C、Dランクでは約6割にとどまる。これからの生産性向上の鍵は中小企業の「底上げ」にあると言えそうだ。
i-Construction推進の鍵(出所:日経クロステック)
発注者の入札制度改革が必須に
受注者は工事全体の最適化へ
国交省は24年度、i-Constructionの後継施策として「i-Construction 2.0」を公表して、さらなる生産性向上を目指している。「施工」「データ連携」「施工管理」のオートメーション化によって建設現場全体の省人化を図り、40年度までに少なくとも、生産性を1.5倍に上げる。この高い目標値、どうすれば達成できるだろうか。
i-Construction 2.0の概要(出所:国土交通省の資料を基に日経クロステックが作成)
まずは先述した「底上げ」の実現が欠かせない。そのためにも、発注者の入札制度改革が鍵を握る。26年2月には、国交省が小規模工事を対象とした「導入型ICT活用工事」の実施を発表。3次元(3D)設計データの作成やICT建機を必要としないタイプなどを用意して、中小の建設会社がICT活用に取り組みやすくする。
国だけでなく、自治体の役割も重要だ。自治体で発注件数が多い小規模工事に適したICT活用の要領を整備する自治体が出ている。例えば、札幌市では生活道路整備や切削オーバーレイなどの都市型土木工事でのICT活用を狙った要領を作成。ICT施工への間口を広げている。
ただ、このようなICT施工実施率を上げる取り組みだけでは、先述した1.5倍の達成は難しいだろう。既にICT施工を実施している企業の生産性引き上げも両輪で回す必要がある。
ヒントになりそうなのが、工事全体の生産性を高める「ICT施工ステージ2」だ。ICT施工ステージ1では起工測量や出来形計測など、ステップそのものに着目して生産性を向上させていた。ただし、ピンポイントで効率を上げてもどこかでボトルネックになることがある。そのため、工事全体を俯瞰して、効率化を考えるのがステージ2だ。
これは実は、中小の建設会社にも深く関係する。近年の技術の発展に伴い、データの3D化やAI(人工知能)の活用などは以前よりも気軽に実践できる時代になったためだ。これからの10年も、受発注者の生産性向上の取り組みに注目したい。
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