現場の安全12か月!

現場の安全12か月!
2026年3月号 No 576

3月 新しいヒューマンエラー防止教育「 ルールがあなたを守る!」を教える

最終回 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 安全研究領域特任研究員 高木元也

建設現場での安全活動は日々行われているものの、それでも起きてしまう事故。
本稿では、四季の移り変わり、年中行事、1年の流れなどを踏まえ、毎月のテーマを掲げ、重点的に安全活動を行うことを提案するものです。現場の安全活動をより活発化させましょう!

3月 新しいヒューマンエラー防止教育 「ルールがあなたを守る!」を教える

この半世紀、現場関係者の皆さんのたゆまぬ努力により、事業場の死傷災害は大きく減少しました。しかし、十数年前から死傷災害は完全に下げ止まってしまいました。

死傷災害の中身をみると、低い所からの墜落・転落、転倒、手指はさまれ、カッター切創などが後を絶たず、それも重篤な災害につながるケースが少なくありません。

このような災害―いわゆるヒューマンエラー災害―を減らすためには、作業員に「人間は自分だけでは自分の命を守ることができない」ことを十分に教育することが必要です。

人間は、実にたよりない

ヒューマンエラー災害を防止するには、設備面の対策だけでは難しく、作業者本人が災害にあわないよう現場に潜む危険を意識し、そこに注意を払いながら作業を進めていかなければなりません。しかし、人間はたよりない生き物です。時に、自分の身を自分で守れなくなってしまいます。このため、現場で働く皆さんは“人間のたよりなさ”を十分に理解し、慎重な行動に努めていかなければなりません。

「現代人は、原始人と身体はほぼ変わらない。なのに、工業化・機械化の波の中を生き抜く。いつもうまくいくわけがない!」これは、人間工学の専門家がよく言うことです。現代人は、産業革命以降、工業化・機械化の波の中を生き抜かなければならず、うまくいかないことも当然出てくるのです。例えば、原始人が電動工具を使っている姿を想像してみてください。

人間は、忍び寄る危険がみえず被災する

「段差につまずき転倒する」「バックしてくるトラックにひかれる」。これらの原因には作業員の「不注意」があげられ、現場では「〇〇に注意」という指示がよく出されますが、あまり効果がありません。なぜなら、人間の注意力には限界があるからです。

注意力には「量の上限」があり、「深く狭く」「広く浅く」注意を払えても、「深く広く」は払えず、作業に集中(深く)すれば、周り(広く)まで注意が払えなくなります。

不注意により信じられない災害が発生しています。

死亡災害の事例

屋上での防水シートの敷設作業中、ロール状の防水シートを後ろに下がりながら伸ばして敷いていたところ、屋上の端に気づかず墜落(この落ち方で全国の防水屋さんが何人も亡くなっています)。


まず「人間の注意力には限界がある」ことを肝に銘じましょう。注意力に限界がある人間に対し、作業中、“ずっと安全に注意を払い続けなさい”は無理なのです。

人間は、自らの行動が止められず被災する

人間は、とっさに、反射的に行動し、被災することがあります。代表的な事故には、「小さな子どもが、道の反対側にいる母親を見つけた瞬間、「あっ! おかあさんだ!」と道に飛び出し、車にはねられる」があげられます。

しかし、これは、子どもだけの話にとどまらず、現場で働く大人にも当てはまります。

死亡災害の事例

風力発電タワー上部で道具袋をウィンチのフックに掛け、ハッチ(0.7m×0.7m)を開け、降ろしかけた時、突然道具袋が外れ落ち、とっさに落とすまいと身を乗り出し約55m墜落。


人間は本能的にとっさに行動すること、反射的に行動することを十分に理解し、いつ何が起きても被災しないように備えます。

おわりに

人間は、一生懸命作業に打ち込めば、時に不注意になったり、とっさに行動してしまったりして、自分だけでは自分の命を守ることができなくなります。実にたよりない存在です。このため、被災しないよう慎重な行動に努め、「被災するかもしれない」と現場に潜む危険に用心深くならなければなりません。

大切なのは、「ルールを守らなければ」ではなく、「ルールに守ってもらう」という気持ちを強く持つことです。「ルールがあなたを守る!」のです。

高木 元也 (たかぎ もとや)
独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 安全研究領域特任研究員 博士(工学)
名古屋工業大学卒。総合建設会社にて施工管理(本四架橋、シンガポール地下鉄等)等を経て現職。現在、建設業労働災害防止協会「建設業における高年齢就労者の労働災害防止対策のあり方検討委員会」委員長等就任。
[主な著作等]NHKクローズアップ現代+(あなたはいつまで働きますか?~多発するシニアの労災他)、小冊子「現場のみんなで取り組む外国人労働者の災害対策・安全教育」(清文社)他。

 

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