特集
建設キャリアアップシステム
一般財団法人 建設業振興基金 専務理事(建設キャリアアップ事業本部長)
長谷川周夫
我が国が本格的な人口減少社会に突入する中、建設業においては、昨年4月から罰則付き超勤上限規制が導入され、次代を担う人材の確保・育成と、生産性の向上を通じた働き方改革が待ったなしの課題となっています。これらの課題に対しては、個々の企業のみならず、業界全体、さらには発注者を含めたサプライチェーン全体で対応していく必要がありますが、建設技能者の処遇改善や建設業の生産性向上など多面的な役割を有する建設キャリアアップシステム(CCUS)は、その課題解決のための重要なツール(道具)の1つであると考えています。
運用開始からまもなく7年目を迎える中、CCUSの利活用は着実に広がりを見せています。
昨年は、建設業法等の改正に基づきICT指針が策定され、CCUSが建設技能者に関する共通データ基盤としての取り組みが進められていることを踏まえ、効率的な現場管理等のためCCUS活用が推奨されるとともに、監理技術者の専任要件緩和の1つとして、監理技術者制度運用マニュアルにおいて、遠隔からの管理のためCCUSの活用が望ましいとされるなどの措置が講じられました。
また建設業退職金共済制度(建退共)の電子申請との連携も着実に進んでおり、今秋の建退共システムの改修により、事務の一層の効率化や業務の適正化に大きく寄与することが期待されています。
さらに昨年11月には、登録技能者の方が無償で利用できるスマートフォンアプリ「建キャリ」がリリースされ、手軽に保有資格や就業履歴など確認いただけるようになりました。これにより建設技能者の皆様にもCCUSをより身近に感じていただけるものと思っています。
CCUSは、換言すれば、建設業で働く人と、そしてその働く人を大切にする企業をデジタルの力で応援する仕組みであると言えます。その役割を十二分に発揮できるようにするには、比較的規模の小さい現場での利活用促進や能力評価制度の充実などまだまだ取り組むべき課題が多く残されています。運営主体である建設業振興基金としましては、今後とも、システム更新による利便性の向上や、登録・利用に当たってのきめ細かいサポートなどに尽力するとともに、関係機関の皆様と力を合わせ、CCUSを使って良かったと思っていただけるよう関連施策の充実に努めてまいります。