建設経済の動向

建設経済の動向
2022年7・8月号 No.540

4号特例の縮小に今から備えよう

2階建て木造住宅などを対象に建築確認で構造審査を省く「4号特例」。脱炭素社会を目指した住宅の省エネ化の要請に伴い、この規定が縮小される見込みだ。4号特例見直しの動きと建築実務者の準備状況などを独自調査した結果を伝える。今後、縮小が見込まれる住宅市場で生き残るためにも、早めの対応が欠かせない。

脱炭素社会の構築が国の大きな目標となり、省エネの推進が社会の重要課題になっている。こうしたなか、建築・住宅分野での脱炭素を進めるために、建築物省エネ法が改正される見通しだ(執筆時点)。これまで省エネ対応などが十分に進んでいなかった木造の戸建て住宅で、省エネ基準への適合義務化を図る狙いがある。

建築物省エネ法の改正と同時に、関連する建築基準法の改正の議論も進んでいる。同法改正のなかで、特に大きな影響があると見込まれるのが、住宅における省エネ対応を踏まえた「4号特例」の範囲縮小だ。4号特例とは、2階建て以下、延べ面積500m2以下などの条件を満たす木造戸建て住宅において、建築確認で構造審査が省略される規定だ。

これまでの住宅設計でも、構造計算などの検討はもちろん必要であった。しかし、建築確認での審査が省略されていたので、書類の作成やチェックなどに慣れていない建築実務者はまだ多いとみられる。

日経クロステックの読者である建築実務者に対して、2022年5月にアンケートを実施したところ、4号特例の見直し自体に反対する意見が全体の3分の1を占めた。業務上の負担増や対応できる人員についての不安などを理由に挙げている。

図  4号特例の縮小に賛成?反対? 

日経クロステックの読者である建築実務者に、「4号特例の縮小」について賛否を聞いた。
「賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらかといえば反対」「反対」「分からない」の5つから選んでもらった。回答数は349人

太陽光発電が構造リスクに 対策未実施が4割強

住宅の省エネ性能を高めることと住宅の構造審査の強化にどのような関係があるのか。カギとなるのは、建物重量の増加だ。住宅のエネルギー性能を高めようとすると、壁や屋根に使う断熱材の量が増す。さらに屋根に太陽光発電パネルを載せれば、その重量が加わる。サッシもトリプルガラスの採用などで重くなる。建物が重くなれば、それだけ地震時に必要な耐力も増す。この点も加味して建物の構造を決めていかなければならないのだ。

実際にZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)と呼ぶ省エネ性能が高い住宅を建設する場合、現行の建築基準法施行令で定める基準に比べて、壁量を増やさなければ対応できないことが、日経アーキテクチュアの独自シミュレーションで明らかになった。さらに、太陽光発電パネルを屋根の片側に載せることによって、建物の偏心リスクが増す点も確認した。太陽光発電パネルを載せる場合には、偏心を抑えたバランスのよい耐力壁配置などが重要になる。

前述の日経クロステック読者に対するアンケート調査では、建築実務者に建築物省エネ法の改正などを見越した対策を講じているか否かを尋ねている。「既に対策を実施している」という回答は16.9%、「対策を実施していないが、検討している」は28.9%にとどまった。最も多かったのは、「対策の実施も検討もしていない」の43.6%だ。改正法の施行は2025年度中を目指す。それほど猶予はない。

少子化や人口減少などの波を受け、住宅市場の厳しさは増していく。今から検討を重ね、法改正にスムーズに対応できるよう備えなければ、受注競争で不利になる恐れは大きい。 

 

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