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経営に活かす原価監理

経営に活かす原価管理 第1回|原価とは? 実行予算だけでは原価管理はできない

地域経済研究所 コストコントロール部会 石岡秀貴 高田守康

 現在、工事原価管理を実施していない建設会社はないと思います。
 しかし、企業として必須の管理業務であるにも関わらず、原価管理に対する考え方や実際の運用方法は、企業ごとの違いが大きいばかりでなく、企業内でも考え方がバラバラになっているケースすら見受けられます。
 このようにバラツキの多い建設業の原価管理ですが、原価管理をどのように捉えて、どのように活かせば、建設業の経営に役立つのでしょうか。
 今回の連載では、土木専門工事会社において、工事利益を大幅に拡大して経営改善に貢献した原価管理の実例を中心に、その経営に活かすポイントについてご説明いたします。


 最大利益を掘り起こすコストコントロール

 一言で「原価管理」と言っても、建設業以外でも製造業やサービス業など、各企業でそれぞれに工夫した考え方を基に原価管理が行われています。建設業の工事原価管理にも、コストコントロール(原価統制)とコストリダクション(原価低減)という2大機能がありますが、ここではコストコントロールの実現方法を中心に説明します。
 建設業では、工事原価管理を「実行予算を立てて、実際に施工できる最安値の工事原価を見積もること。そして、現場が始まってからは、進捗と対比しながら工事が予算内で収まるように管理すること」と考える方が多いと思われます。
 この実態を踏まえて、原価管理に何が求められているのか考えてみると、原価管理の本質とは「現場から最大の利益を掘り起こすこと」、その一点に尽きるでしょう。
 では、原価管理の本質を実現するように、コストコントロールを実行している会社がどのくらいあるのでしょうか? 多くの経営者や現場代理人と意見交換しても、本音ベースでは、ほとんどの方がコストコントロールをできているとは思っていないようです。
 しかし、ほんの一部のケースですが、コストコントロールがしっかりとできていて、同種工事を施工しても、同じような売上高に対して他社より大きな利益を確保できる、という事実も見られます。その違いは、どこから発生するのでしょうか?


 実行予算管理だけで本質的な原価管理は達成できない!

 現場でよく聞くセリフとして、「製造業と違って、自然相手で2度と同じ現場はないから、予算通りに行くわけがない」とか、「毎日自分の思う通りに施工できるなら、管理はできる。しかし現実は、発注者との調整や地域住民からの要望、下請けの都合や現地で生じる設計の不具合など、現場の進捗を妨げる不測の事態が山のように発生する。それでは予算通りいくわけがない」、さらには「いくら本社から何%の利益を期待されても、かかるものはかかる。無理なものは無理!」。こういった現場からの悲鳴は、恐らく経営者も重々承知していると思います。
 このような現場からの意見に対して、明確な答えを現場に示すことができず、お互いの妥協点の中での原価管理、実行予算管理となっているのが実情だと思います。
 結論から言うと、実行予算管理だけでは本質的な原価管理は、達成できません。実行予算だけで本質的な原価管理を行うことがなぜ無理なのか。それは、建設原価の性質に二面性があるためです。実行予算には、その一面を管理する機能しかないのです。
 現在多く見られる実行予算管理とは、現場代理人が実行予算を作成し(本社も作成)、本社に提出して承認を受けた内容に対して、月次で対比を報告し、経営者は現場で実行予算以上に施工費用をかけないように監視する。これでは単なる現場からの事後報告の機能しかありません。もちろん、この管理業務も大切なものではありますが。
 何故、これだと片手落ちになって、思うようにコストコントロールができないのか? 工事原価は、施工前と施工開始後では、異なる性質を見せていきます。
 施工前は、契約管理が主になります。下請け、資材、リースなどの契約や自社リソースの積上げ等を行っていき、工事の予算を見積もっていきます。実行予算は、いわゆる「契約管理」が中心であり、そこまでは本社のマネジメントも及んでいるので、代理人の能力任せにはなっていないはずです。
 ところが施工開始後、実行予算管理(契約管理)だけで工事が進行するとどうなるのでしょうか?
 前述のように、現場は不確定要素に満ち溢れており、本社のマネジメントは及ばなくなり、現場代理人任せにならざるを得ません。本社にできるのは、予算より原価がかかった結果に対して、現場代理人に説明を求めることや、現場の人にハッパをかけることだけです。


 利益が増える! 実行予算とセットで学ぶコストコントロール

 原価は、単価×投入数量と単価×投入時間の総量です。単価は、契約管理が中心のため、実行予算で事前管理が可能です。しかし、投入時間については、実行予算だと事後管理しかできません。例えば、直用の作業員が10人入っている現場で、段取りが悪くて作業が一日延びると、簡単に20万円の労務費が増加します。さらに、仮設損料やクレーンなどの大型重機、その他の機械費、管理者の人件費などがセットで増加します。こうなると、当初の実行予算など簡単に壊れてしまいます。
 天候不良や現場で発生する想定外の問題など、いわゆる不確定要素をコントロールして、最大の利益を得ることは非常に難しいのです。現場はそれがよくわかっているので、不確定要素で原価が変動しても実行予算がマイナスにならないように、最初から予算額をふかして作成することが多いでしょう。
 そうすると、施工前段階ではふかされた不確定予算が前提となり、真の計画原価が誰もわからない状態ができあがります。さらに施工開始後は、不確定要素や時間増加による追加原価が足され、これも真の実際原価がよくわからない状態になります。施工前の計画原価も施工開始後の実績原価も、ぼやけた状態の原価しかわからない。ぼやけた計画と実績を対比して、現場の現状把握と未来予想ができるのでしょうか? 真に有効なコストコントロールが機能するのでしょうか? できる訳がありません。
 つまり、実行予算管理だけでコストコントロールを行い、原価管理の真の目的である「利益を最大限に得ること」を実現するのは、無理なのです。

 では、建設工事におけるコストコントロールは、最初から無理なのでしょうか? 実行予算管理だけでは無理ですが、実行予算でカバーできない部分をコントロールする方法を学び、実行予算とセットで運用することで、初めてコストコントロールの入り口に立つことができるのです。その方法の初級段階を学習して実践するだけで、2~3%の粗利益はあっという間に増加します。つまり10億円の完成工事高がある会社なら、3,000万円の粗利が簡単に増えるのです。
 では、実行予算とセットで学ぶべきコントロール方法とは、どのようなものなのか?
 次回以降、順を追って説明してまいります。



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