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FOCUS | 長崎大学と連携した"道守"によるインフラ長寿命化への挑戦

一般社団法人 長崎県建設業協会

No.06:“道守”養成プロジェクト

~スマートフォンを用いた道路など異常通報システムの運用・普及促進~

 道路などのインフラ施設の老朽化対策は、全国の自治体においても大きな課題となっています。長崎県では、長崎大学が中心となって産官学が連携し、道路インフラ施設の維持管理や見守り活動を行える人材“道守(みちもり)”の養成を目的とした“道守”養成プロジェクトを推進しています。協会も運営協議会の一員としてプロジェクトの推進に協力しています。昨年度は、他の地域のモデルとなり得る先進的な取り組みとして、道路など異常通報におけるスマートフォンなどの活用と普及促進について、建設業振興基金から本協会が業務委託を受け、その効果について調査検証を行いました。

1.道路の維持管理や見守り活動を行う人材が不足

 観光立県を推進する長崎県には、教会群などの観光資源が離半島に点在しますが、それらを結ぶ多数の渡海橋や港湾などのインフラ施設の老朽化が進行しています。これに対して、県の財政状況は厳しく、公共事業費は縮小され、維持管理費の増額も見込めない状況にあることから、費用や人材の面で課題を抱えています。点在する多くの構造物の維持管理業務を適切に実施するためには、地域に密着した維持管理技術者が相当数必要ですが、現状ではそうした技術者の数が絶対的に不足しており、その養成が喫緊の課題となっています。
 長崎大学工学部では、長崎県をはじめ県内市町や地元企業との連携による共同研究・事業の推進を目的として、同大学院工学研究科の松田浩教授が中心となり、平成19年1月にインフラ長寿命化センターを設立。社会資本である道路インフラ施設の維持管理や見守り活動を行える人材である“道守(みちもり)”の養成を目的とした“道守” 養成プロジェクトを平成20年10月から実施しています。

2.運営協議会を設置し、産官学が連携して推進

 本プロジェクトを推進するために設置された運営協議会には、本協会の他、長崎県土木部、(社)長崎県測量設計業協会、(公財)長崎県建設技術研究センター、長崎大学が参画し、産官学の連携を図っています。カリキュラムの決定・改善、受講者の選考・評価・認定、特別講演会、シンポジウムの企画・実施、認定者の継続教育、その他の事業の運営方針についての協議を行っています。
 道守養成講座は4つあり、2グループに大別できます。1つは一般市民を対象とした市民講座レベルの道守補助員コースです。道守補助員コースは、日常生活の中で道路インフラ施設の大きな変状・異常に気づくことができる人材の養成を行っています。
 もう1つは地元自治体職員、地元企業職員およびそれらのOBを対象とする専門的レベルの道守補、特定道守、道守コースです。道守補コースは、インフラ点検作業・記録ができる人材を養成しています。特定道守コースは、コンクリート構造・鋼構造の2分野があり、道路インフラ施設の診断ができ、各分野で高度な技術を有する人材を養成しています。道守コースは、点検・診断の結果の妥当性を適切に評価して総合的な判断を行うことができ、維持管理に関するマネジメントができる人材を養成しています。

スマートフォンを活用したシステムの運用・普及

図1 通報システム

図1 通報システム

 本プロジェクトの中で、道守認定者が県内各地の道路、橋梁、斜面、トンネルの異常をいち早く発見・通報するための体制を構築しています(図1)。通報は紙媒体で、専用のシート(道守シート)に記載し、FAX、メールなどで報告する仕組みでした。
 平成24年3月に、道守シート通報の効率化、簡易化を目的として、スマートフォンなどのICT技術を活用した新しい通報システムの構築を行いました(図2)。ICT技術を活用することで異常発生場所やその状況を簡便に通報でき、自治体の対応状況も容易に確認できる管理しやすいシステムとしました(図3)
 

図2 通報画面 図3 管理画面
図2 通報画面   図3 管理画面

 平成25年度は新システムの運用を開始するとともに、普及、改善を行いました。普及に際しては、道守認定者に対する利用マニュアルを作成するとともに、各地で本システムの説明会を開催。説明会は長崎大学、壱岐市、新上五島町、諫早市の4会場で6回開催し、106名の受講生、認定者が参加しました。また、認定者が組織した長崎県愛護団体「道守養成ユニット長崎地区」が行っている道路の異常点検活動においても新通報システムを活用しました。
 また、認定者、大学関係者およびそのご家族が参加して、点検活動を4回、延べ119名で19.3km区間にわたり実施。これらの活動を踏まえて、認定者から要求の高い事項についてシステムの改善を行いました。
 平成22年度から平成24年度までの3年間に毎年約50件、延べ146件の道路異常の報告がありましたが、新通報システムに移行後の平成25年度は141件(旧システムの3倍以上)の通報があり、1年間で過去3年間の通報件数に達しています。スマートフォンなど携帯端末の普及に伴い、ICTを用いた新通報システムの有効性が実証されたといえるでしょう。

 

 

地元建設業をはじめとした“地域の力”による課題解決

 道路インフラ施設数が膨大で広範囲に及ぶことから、自治体職員のみによる維持管理には限界があります。この課題を解決するためには、地元建設業界をはじめ“地域の力”を用いた道守の協力が有効です。道守は人間センサー的役割を果たすとともに、道路の異常をいち早く発見し、補修・補強などの対応もできるため、自治体の心強い味方になることが期待でき、他の自治体のモデルとなる可能性をもっています。
 また、市民が参加することで、自らの日常生活を支える道路などのインフラの維持管理の重要性について主体的な意識を持つようになり、併せて、これを担う建設産業に対しての理解や関心の高まりも期待するところです。将来的には、道だけでなく、市民生活に必要不可欠な水、川、海、山、森を守る人材養成を目標としています。

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