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Kaleidoscope/建築施工系技術者に求められるコミュニケーション能力

第4回|若手社員にコミュニケーション能力が不足している背景

鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築企画部 大湾 朝康

1 育成環境

 最近の若い社員は「社会人基礎力」(職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力)が低下していると言われております。確かに人との緊密なコミュニケーションを前提として育った我々アナログ世代と比べると少子化・核家族・個室という住環境で、電子メールなど、相手の顔を見ないで済むコミュニケーションツールに依存して育ったデジタル世代の若い社員は、コミュニケーション能力やマナーレベルが低く、自己中心的で、打たれ弱い社員が増えてきたような気がします。
 「社会人基礎力」が低下した背景としては、少子化で兄弟姉妹が減少したことや核家族化により人間関係を処理する能力が育たなかったこと、即ち“家庭での教育力低下”が上げられますが、それ以外に、近所付き合いの減少、自営業の激減や地域活動の担い手不足による“地域の教育力の低下”、教育が受験中心にシフトされたことによる、生徒会、部活動の弱体化、スピーチ等、話す能力の開拓を軽視した“学校の教育力低下”があげられると思います(表-1)。
 コミュニケーション能力不足の直接的な要因としては、上記の背景が上げられると思いますが、建設業界だけでなく、社会全体が既に成熟化し、競争社会に生きていないという自覚からコミュニケーションに対する欲求や必要性が低下していることも間接的な要因であると考えられます※6

表-1 育成環境におけるアナログ世代とデジタル世代の違い

比較項目 アナログ世代 デジタル世代
育成環境 家庭環境 三世代家族、大部屋
→オープン
少子化、核家族、個室
→クローズ
遊興内容 野原、近所、ガキ大将、缶蹴り、ゴム段、メンコ
→室外
テレビゲーム、YouTube、スマートフォンゲーム
→室内
伝達手段 手紙、直接対話、固定電話(関節)
→ウエット
メール、FaceBook、携帯電話(直接)
→ドライ
移動手段 時刻表、改札で切符購入、定期、切符切り
→人が介在
駅すぱあと、自動販売機、交通系ICカード、自動改札
→機械処理
情報入手 図書館、百科事典
→周辺情報→対象情報(付帯作業あり)
Google、Yahoo
→瞬時に対象情報(付帯作業なし)

2 業務環境

 一方、入社後の業務環境においては、非正規社員の増加と団塊世代の退職による “職場の教育力低下”“OJTの衰退”や“IT活用による現場運営管理の強化”も「社会人基礎力」低下の大きな要因としてあげられると思います(表-2)。低成長経済においてグローバル競争を勝ち抜くために、会社の経営陣は、合理化・人員削減を進めると同時に、競争原理を働かせるべく成果主義を導入するケースが見られます。その結果、複雑で前例がない困難な仕事を、少人数で効率的に達成しなければならない状況に陥ります。また育成への投資が減少する中で、業績・時短に関わる圧力は増大し、キャリア採用や非正規社員が増加するなど、職場における新人育成の環境は厳しい状況にあります。業務が細分化・高度化・専門化すると、対話が少なく協力しない社員が増え、心が触れ合わない個人主義に陥る可能性があります。「タコ壺化」した組織は、個人のモチベーション低下に繋がるだけでなく、組織の自閉化、生産性の低下に結びつく危険性を秘めていることから※7、この世代をどのように育成していくかが企業経営の重要なポイントになると思われます(表-3)。


表-2 業務環境におけるアナログ世代とデジタル世代の違い

比較項目 アナログ世代 デジタル世代
業務環境 OJT環境 ベテラン-中堅-若手の育成ライン
→OJT・技術伝承は充実
団塊世代退社・バブル入社世代による教育
→OJT・技術伝承は不充分
施工管理 材工分離、施工図・施工要領書作成
→下積み経験豊富・ものづくりの原点理解
材工一式、施工図・仮設計画は専門工事業者作成
→空洞化・マネジメント志向
伝達手段 メール、FAXもなく、自席での固定電話又は直接交渉
→人との対話・伝達内容は周囲と共有
メール、サーバの活用、好みの場所での携帯電話連絡
→パソコンとの対話・伝達内容は当事者内
守備範囲 設備・機電・事務系が現場常勤
→建築施工管理に特化した守備
設備・機電・事務系が拠点集約
→多能工的、広範囲な守備


表-3 対話がなく心が触れ合わない職場が陥る「タコ壺化」

状況 内容 背景
1)対話がない 自席でのメール処理でコミュニケーションしたつもり コミュニケーションスキル不足
一人一台のパソコン
ITを駆使した業務環境
CC多様のメールで関係者とコンセンサスを得たつもり
2)協力しない 自分の業績に直接関係ないものは、協力しない 成果主義
個人主義
自分は目の前の仕事をやれば良い
3)事業が
  固定化する
新たな仕事にチャレンジできない 仕事の細分化・高度化・専門化・複雑化
4)OJTが
  機能しない
OJTとジョブローテーションによる育成放棄。 バブル期入社の管理職は、教育機会に恵まれず、部下育成の経験も少ない
5)心が触れ
  合わない
悩みを打ち明ける場が少なく、相手もいない 朝礼、部会など、業務進捗報告が主体
関係の「希薄化」 組織の「タコ壷化」 個人のモチベーション低下 自閉化
↓ ↑
壊れる人材 生産性・品質低下


<参考>

※6 「コミュニケーション能力とは何か」鈴木 哲 講談社
※7 「不機嫌な職場」高橋克徳・河合太介・永田 稔・渡部 幹 講談社現代新書

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