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Kaleidoscope/建築施工系技術者に求められるコミュニケーション能力

第5回|コミュニケーションを円滑にするための方策

鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築企画部 大湾 朝康

 2013年6月に産業能率大学が20~50歳代を対象に実施したビジネスマン調査では、「職場の人と仕事以外で付き合いたいか」との質問に2/3は否定的で、「職場で孤独を感じることがあるか」には、「たまに」まで含めると6割が「ある」と回答しております※8。良好なコミュニケーションは、業務を円滑に進めるための潤滑油であり、顧客・設計事務所・協力会社・近隣他との良好な関係を構築し維持するために欠かすことの出来ない要件である思われます。以下に、コミュニケーションの円滑化に貢献したと思われる実施事例を抜粋して報告します。

1 人事パトロール

 小生は、1999年4月~2003年5月まで東京建築支店で建築施工系社員の人事を担当しておりました。“人事を担当するには、まず人を知らなければいけない”との思いから、「人事パトロール」という制度を作り、2000年10月から2003年6月まで同支店建築施工系社員と鹿島グループ社員合わせて600人余りの個人面談を現場で行いました。パトロールの狙いは、各自の「コンピテンシー」、「特殊事情」、「職場における人間関係」、「心身の健康状態」を確認し、配置の妥当性を検証することでした。しかしながら、パトロールを進めるうちに、面談のやり方次第で、職場全体のモチベーションを上げる効果があることに気付きました。即ち、冒頭に所長から部下全員の評価を聞き、個人面談で所長がどの部分を評価し、より努力して欲しい点は何かを各人に間接的ではありますが伝えます。最後に所長に対しても、部下全員の思いを伝えます。このことにより、上司や部下の思いが第三者を通じて伝わり、自分がどのように思われ、評価されているのだろうか?という漫然とした不安から解放されます。面接の効果は、面接前と終了後の社員の表情に現れます。職場のコミュニケーションをマネジメントする手法として参考になれば幸いです。
なお、この種の面接で大切なことは、「真実」、「本音」を如何にして導き出すかということです。そのためには、
対象者の就労環境も把握する必要性から、面接者自ら対象者の職場に赴くこと。
面接にはラインの上司を外し、人事スタッフと対象者一対一で実施することです。評価者であるラインの上司も含め、複数で面接することは愚の骨頂です。面接対象者は、己の評価に影響することから、本音は話さず「頑張っております。」に終始します。このような面接は時間の無駄です。

2 教育担当者

 弊社では、入社5年間を重点育成期間に位置付け、現場事務所には、若手社員全員に「教育担当者」を任命し、社会人教育、技術教育も含めた日常業務に関わる育成・指導を徹底させております。「教育担当者」は、若い社員の心の扉を開き、指導していく人間力が試されることから、双方にとって切磋琢磨できる素晴らしい仕組みであると自負しております。年次に応じた集合教育では、いずれの研修においても事前課題を義務付けており、「教育担当者」の捺印入りで提出させております。捺印することは、「教育担当者」による育成指導というコミュニケーションプロセスを踏んでいる証でもありますので、このステップは、陳腐化しつつあるOJTを強制的且つ効果的に復活させ、活性化させる上で、有効な手段であると思われます。但し、運用状況を確認すると、必ずしもマーケットインではない部分が散見されます。即ち、年齢や相性も含めた「教育担当者」の質とレベルの問題です。「教育担当者」自体が若手社員の育成に相応しい人材であるか、年齢差・相性など個別的な課題は多いようです。以前、3年次研修で、理想とする「教育担当者」像を聞いたところ、ほとんどの社員が兄貴としての気軽に相談できる、工事課長代理クラスと答えておりました。

3 マネジメント教育

 ゼネコンでは、所長クラスを対象としたマネジメント教育を行っているケースが多いと思いますが、マネジメントに関わる教育は、施工管理(QCDSE)に関わる教育よりも、講師の選定で難しい面があります。即ち、マネジメントについて語れる社員は、当然のことながら数々の修羅場を経験したことによる「現場力」「人間力」が備わっていること、又、法令遵守は当然のことながらパワーハラなどに対する「倫理観」も備わっており、更に、講義内容に「マインド」の部分まで踏み込むケースもあることから人を惹きつける「人間的な魅力」が備わっている必要性を感じます。利益面で会社に貢献し、評価の高い幹部社員でも、部下や業者を踏み台にした背景があれば、受講生は聞く耳を持ちません。最近、どの業界でもストレスマネジメントが話題に上がりますが、コミュニケーションがうまくいかずに心の触れ合いがない職場では、個人のモチベーションも下がり、生産性や品質にも悪影響を及ぼします。当社では、所長並びに所長候補者を対象に、日常的なコミュニケーションが職場全体のモチベーションにどのような影響を与えるのか、プロのアクターを招聘しドラマ仕立ての研修を行っております(写真-3.4)。部下への声の掛け方、顔付き、態度でコミュニケーションの度合いが全くことなることが明確となり、その後の実習でも効果が検証されるなど、受講生の評価は高いようです。一方通行の講義は時間の無駄です。受講生自体が主体的に行動を起こすような研修でないと効果が上がりません。受講生の心を掴み、五感で感じることが出来るような方法、即ち、演習・ロールプレイイング・実習など選択肢を広げる必要性を感じます。

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<参考>

※8 2013年6月16日日経新聞

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