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知っておきたい元請・下請の契約関係

第13回 元請・下請関係適正化への韓国の取り組み

(一財)建設経済研究所客員研究員 六波羅 昭

 韓国の建設産業は、日本と同様の重層化した下請構造のもとにある。現場の労働者は、建設業登録のない違法な「チーム長」などと呼ばれる者の下で施工に従事した。元請である総合工事業者もその下請である専門工事業者も、現場労働については「チーム長」を下請として使って確保してきた。1994年に多くの死傷者を出した聖水大橋の落橋事故、三豊百貨店の崩壊事故を契機に施工責任体制の確保が大きな課題となり、建設産業基本法を1997年に改正して「チーム長」を「施工参加者」という名称のもとに合法化することで現場の責任体制の明確化をねらった。しかし、その結果は、施工参加者を介した下請重層化がさらに進行し、建設技能者の賃金水準の低下、社会保険未加入者の増加など労働条件が一層悪化することとなった。そこで建設産業基本法を再度改正し、施工参加者の規定を削除して現場就労者は総合工事業者又は専門工事業者と直接雇用関係にある者に限ることとし2008年1月から施行された。
 韓国も市場競争の激化から工事価格の低下が進んでいる。建設技能者の確保、工事品質保持のために労働条件の引き上げが課題であり、大胆な制度整備がされてきたが効果が十分ではない状況にある。近年、制度整備がなされた元請負人による一定割合の直接施工、現場労働者の直接雇用、発注者による下請契約の審査と下請代金の直接支払、下請代金の支払い保証などについて以下に述べる※1

1.直接施工

 1件工事が100億ウォン以下で施行令が定める金額(30億ウォン)未満の工事の請負人は、一定比率(請負金額により20〜50%)以上の金額について直接施工しなければならない(建設産業基本法第28条の2第1項)。最近の為替レート(1ウォン=0.08円)では30億ウォンは2.4億円であり、多くの工事が対象になる。直接施工とは請負人が直接雇用する技術者、技能者による施工である。この規制と次に述べる下請制限によって現場就労者は総合工事業者又は専門工事業者と直接雇用関係を持つ者に限られることになる。かつて現場労働者を束ねていた「グループ長(施工参加者)」は、現場に入るのであれば請負人と雇用関係をつくることになる。また、直接施工をする者は、契約締結から30日以内に直接施工金額、工事量、工事単価などを記載した直接施工計画を発注者に提出しなければならない(同第28条の2 第2項)。

2.下請制限

下請に関しては、次の制限がある(同第29条第1~4項)。
 ●請負人は請負った工事の全部又は主要部分の大部分を他の建設業者に下請させることができない。
 ●専門工事を下請に出す場合は、当該専門工事の業種登録をしている者に限られる。
 ●自己が請負った工事の一部を自己と同一の業種登録業者に下請に出すことはできない。
 ●下請負人は、工事の一部を再下請に出すことはできない。ただし、下請負人が総合工事業者で専門工事を下請に出す場合、下請負人が専門工事業者であって特殊な工事の下請発注の場合、いずれも請負人の書面による承諾がある場合は再下請が認められる。

 このように直接施工の偽装、手抜き工事の防止のために厳しい下請制限を制度化しているが、これらの条文には発注者が書面により承諾している場合あるいは2以上の専門工事をそれぞれの専門工事業者に下請させる場合などの除外規定がかなりあり、下請制限規定が厳格に行われているわけではないようだ。また、除外規定によって下請又は再下請を請けた者は発注者に通報しなければならない規定がある(同第29条第5項)。

 

3.発注者による下請契約の審査

 下請負人が著しく不適当な場合又は下請契約金額が施行令で定める比率※2に達しない場合には発注者は下請負人の施工能力、下請契約内容の適正さを審査することができる。公共工事の場合、発注者は下請契約審査を義務付けられている。審査の結果により、発注者は請負人に下請契約の変更を要求できる(同第31条)。

4.発注者による下請代金の直接支払

 まず、同法第35条第1項に発注者による直接支払ができる場合の規定がある。発注者と請負人の間で下請代金を下請負人に直接支払うことができる旨と支払方法等を明らかにして合意した場合、公共工事について下請代金の1回以上の支払い遅滞等から発注者が下請人保護のため必要と認めた場合、あるいは請負人が正当な理由なく下請代金支払保証書を交付しない場合などがそれに当たる。
 次に同条第2項には、直接支払わなければならない場合として、直接支払することとして発注者、請負人、下請負人が支払方法等を明らかにして合意した場合、下請代金の支払い遅滞が2回以上あり下請負人が発注者に対して直接支払を要請した場合、請負人が正当な理由なく下請代金支払保証書を交付せずに下請負人が発注者に対して直接支払を要請した場合などを規定している。

5.下請代金の支払保証と下請契約の履行保証

 請負人には、下請契約締結時に下請負人に対して下請代金の支払保証書の交付が義務付けられている(同第34条第2項)。そして、この下請代金支払保証書の発給費用は、請負金額算出内訳書の明示しなければならないこと(同条第3項)として、実効性を確保している。また、これに対応して請負人は下請負人に対して下請金額の100分の10に該当する下請負契約履行保証書の交付を要求することができる(同法施行令第28条第1項)。

※1 本稿は、日本大学教授周藤利一氏による韓国の建設産業基本法、同法施行令並びに施行規則の翻訳紹介を参照している。
※2 建設産業基本法施行令第34条では、下請工事の部分について請負金額積算内訳書の単価を基準として算出した金額に一般管理費、利潤及び付加価値税を加えた金額の82%未満となっていたが、2012年11月の改正で新たに、下請負の部分に対する発注者の予定価格の60%未満を規定し、2つの比率のいずれかに該当すれば適正審査の対象とされることになった。

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