お役立ち・支援

カンタン解説 建設業者のための建設工事請負関係判例

第14回 建設工事請負契約の解除は、法律上の根拠によって結果が異なることを知っておきたい!

(公財)建設業適正取引推進機構

 本件は、建設工事としては、基礎工事の一部であるコンクリート打設工事の欠陥についての争いであるが、訴訟では、建設工事請負契約の解除を行うに当たっての法律上の根拠を巡って議論となった事案である。即ち、建設工事請負契約の解除には、民法541条(履行遅滞等による解除)、民法635条(請負契約の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができない場合の解除)及び民法641条(請負契約の注文者による契約の解除)等いろいろな場合がある。結果から見れば、民法541条又は635条が適用されれば、請負人が、原状回復義務を負うとともに注文者に損害賠償をしなければならなくなるが、民法641条が適用されれば、注文者が、契約解除に伴う請負人の損害を賠償しなければならなくなるということで、注文者、請負人双方にとって全く逆になり、本件解除は、このいずれに基づくものなのかが争いとなった。裁判所は、本件請負契約の仕事完成義務の履行不能に基づき同契約を解除することができると解する(民法541条)としたものであり、建設工事請負契約について民法が認めている解除制度を巡って争うこととなった参考となる事例である。

事件の概要 Yは、老人福祉施設を用途とする1階建て木造建築物の建設工事をXから受注、Yの作業員が、地盤上に単一基礎スラブを放置するコンクリート打設工事を行っていたところ、大雨・洪水警報が発令されるような降雨が発生し、コンクリートにブリージング※1が発生した。Xは、基礎工事をやり直すよう求めたが、Yはこれを拒絶し(代替案として、既設コンクリートの上に更に10㎝の鉄筋コンクリートを打ち増しする補強案を提案した)事態は降着化したため、本件請負契約を解除、契約時支払金の返還等原状回復請求及び債務不履行による損害賠償請求を行った。

 

1205_18_hanrei_title_b.jpg

 Xは、打設されたコンクリートに強度上重大な欠陥があるとして民法635条に基づく建設工事請負契約の解除を主張した。
 これに対して、Yは、本件コンクリートに欠陥はない、既設コンクリートの上に更に10㎝の鉄筋コンクリートを打ち増しする補強案を提案したことにより、民法635条の解除原因が存在しない、注文者は民法641条に基づく解除ができると主張した。
 これに対して、裁判所は、本件建設工事請負契約に基づく仕事完成義務が履行不能となったものと認められるか否か、請負人に帰責事由があるか否か、解除が認められる場合にはその範囲はどこまでかを争点とした。

 

1205_18_hanrei_title_c.jpg

 本件打設工事が雨の中で行われたことなどから、本件コンクリートには重大な欠陥があり基礎工事をやり直す必要があると考えるとともに、そのような工事を行ったYに対し不信感を抱くこととなったこと、X代表者は工事の中止を指示して以来一貫して基礎工事のやり直しを求めたがY代表者らがこれに応じようとしなかったため、不信感を強めていったこと、その結果、X代表者はYに対し解除を通告し、その後も考えを翻すことなく、事態が膠着化したことが認められる。その後は、Yにおいて本件建築工事を完成できないことは確定的な状態となっており本件請負契約に基づく仕事完成義務は社会通念上履行不能状態となったものと認めるのが相当である。

 これに対して、工事の中止を指示するとともに基礎工事のやり直しを求めたXの対応は、施主として何ら不適切なものではない。上記のような工事を行った上、かかるXの要求にも応じようとしなかったYの対応は、請負人として適切を欠くというほかなく、結局、そのようなYの対応が、XY間の信頼関係を破壊する要因となったということができる。したがって、上記履行不能についてYに帰責性がなかったということはできない。
 Xは、本件請負契約の仕事完成義務の履行不能に基づき同契約を解除することができると解するのが相当であり、解除の意思表示により同契約は解除されたということができる。
 解除の範囲についてみるに、建物の建築工事請負契約につき、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に同契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のない限り既施工部分については契約を解除することができず、ただ未施工部分について契約の一部を解除することができるに過ぎないと解される(最判昭和56年2月17日・裁判集民132号129頁参照※2)。この点、本建築工事は、いまだ基礎工事の一部である本件打設工事がされたにすぎず、しかも、打設された本件コンクリートには欠陥があるというのであるから、本件請負契約の施主であるXが既工事部分の給付に関し利益を有するということはできず、かかる解除は本件請負契約の全部に及ぶと解するのが相当である。

※1 ブリージング:型枠に打ち込まれたコンクリートにおいて、セメント・骨材が沈降し、水が上面に集まる現象。ブリージングに伴ってセメント中の比重の軽い成分、例えば、石こうや骨材中の泥分などが上面に集まり、レイタンスと呼ばれる層をつくる。レイタンスは、セメント中の水と水和反応を示さない成分がコンクリート打設後に混練水に溶け込んで上昇しコンクリート表面にしみ出した後、水分が蒸発した後に残った白色の未水和の成分であり、硬化後の強度は零である。
※2 (公財)建設業適正取引推進機構編集「建設業の紛争と判例・仲裁判断事例」41頁参照
(株)大成出版社(2012年)

ページトップ

最新記事

最新記事一覧へ