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カンタン解説 建設業者のための建設工事請負関係判例

第7回 いわゆる紛争 解決特約の効力に ついては、 契約締結前に十分に 検討しておきたい!

(財)建設業適正取引推進機構

本件は、工場兼共同住宅の建築等を内容とする工事請負契約を締結した際に、「第三者との紛議を生じたときは、㈱Yがその処理解決に当たる。」という紛争解決条項をおいた結果、ビル建築の請負業者は、日照等に関する周辺住民との紛争解決について信義則上発注者に協力する義務を負うとされた。そして、その不履行等により建築が中止され契約が解除されたことに伴う債務不履行による損害賠償責任(慰謝料部分のみ)を負うことになった事例である。その責任が、工事を続行しなかったこと、自ら住民と紛争を解決しなかったことではなく、信義則上求められる原告Xへの協力義務に反し、これを尽くさなかった点にあるとされたことを含め、十分に考慮したい。

事件の概要

 原告Xは、Aから賃借した土地に工場を所有し、機械製造会社を経営していた。
 昭和46年1月8日、Xは、被告㈱Yとの間に、旧建物の取り壊し及び10階建て工場兼共同住宅の建築を内容とする工事請負契約を結んだ。この契約には、次のような特約がついていた。

1206_18_hanrei_1.jpg ●第三者との紛議を生じたときは、㈱Yがその処理解決に当たる。
●Xは、工程表より著しく工事が遅れ、㈱Yが契約に違反したとき等、工事を中止させ、又は契約を解除することが出来る。

 ㈱Yは46年3月24日、旧工場取り壊し工事を開始したが、地元住民から反対運動が起き、住民は、工事現場に座り込んだりピケを張って工事を妨害した。㈱Yは、工事を再開できず5月28日工事を中止した。
 Xは、昭和47年2月2日、内容証明郵便により契約を解除する旨の意思表示をし、㈱Yは2月17日付の内容証明郵便によりこれを承諾した。

主な争点

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 主な争点は、次のとおりである。
■原告の主張
日照問題を含む各種紛争の解決義務が㈱Yにあった。
■被告の主張
工事を続行できなかったのは付近住民の反対運動のためであり、㈱Yに帰責事由はない。

本裁判の結果

 紛争解決に関する契約条項は、第三者との間に紛争が生じた場合の請負者の責任を定めているが、紛争の性質・内容によっては注文者が処理・解決すべき場合があり、結局前記条項が、一般的、当然に日照紛争を含むあらゆる紛争を被告㈱Yにおいて処理解決すべき趣旨を含むと解すべきであるとする原告Xの主張は失当である。具体的紛争の処理解決の責任が請負者にあるか、注文者にあるか、双方の協力義務があるか、またその費用をいずれが負担すべきかは、紛争の性質内容と契約の趣旨に応じて判断するほかない。日照紛争の処理解決に当たっては、被告が日照図、日影図を作成し、住民らに説明すべき請負契約に基づく信義則上の義務があった。
 建築の設計施工の請負契約の履行において、第三者の妨害等の紛争が生じた場合は、請負者は第三者を利するような行為をしてはならないことはもとより、自らこれを処理できない場合であっても、注文者に協力してその解決に努力し、自らの債務である仕事の完成を期すべき信義則上の義務がある。

 原告Xが主張する債務不履行の諸対応のうち、工事を続行しなかったこと、自ら住民と紛争を解決しなかったこと及び設計の誤りについては、被告㈱Yに債務不履行の責任はないというべきであるが、第三者である住民の妨害ないし反対を処理解決するにつき信義則上求められる原告Xへの協力義務に反し、これを尽くさなかった点において、被告㈱Yは債務不履行の責任を免れない。
1206_18_hanrei_3.jpg 本件については、被告㈱Yの債務不履行がなかったとしても、それにより住民らとの紛争の局面に変化があったにせよ、契約通りに完成したと認めることはできない。したがって、原告主張の逸失利益等は、被告㈱Yの債務不履行と相当因果関係が認められない。他方、被告㈱Yの債務不履行によって原告は多大な精神的打撃を受けており、一切の事情を考慮すれば慰謝料は700万円が相当である。

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