連載

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2017年5月号 No.488

KALEIDOSCOPE 日本初の建築模型専用ミュージアム 「建築倉庫」 ミュージアム

倉庫会社としての保管ノウハウが生かされた保存・展示スペース

2016年6月に天王洲アイルにオープンした建築倉庫ミュージアムは、建築模型を展示しながら保存する日本唯一のミュージアムだ。
建築模型とは、建築家や設計事務所が建物を着工する前に作る完成予想図の立体版。海外ではアート作品として高値で売買されている一方、日本ではまだその価値が認められておらず、また日本の狭い事務所事情のため、著名な建築家が作った建築模型でも、海外へ流出してしまうことや、廃棄処分されてしまうこともあった。この状態を危惧した建築家や有志たちの声に応えて生まれたのがこのミュージアムなのだ。
ミュージアムを運営するのは、同地で約70年の歴史を持つ倉庫会社の寺田倉庫。ハイレベルな温湿度管理技術を持つ寺田倉庫は、近年はワインや美術品、映画フィルムなどデリケートな品物の保存を積極的に手がけてきた。木材やプラスチック、紙などさまざまな素材を組み合わせた建築模型もまたデリケートなもの。ミュージアムにはこの寺田倉庫の持つノウハウが活きている。

ずらっと並んだラックには建築模型のほか、模型をいれていた箱も展示。

建築家の思考プロセスを建築模型から体感

展示室は約450m2、高さ5.2mという大空間。現在、約30組の建築家が参加し、約460点の模型が展示されている。これからさらに参加者と展示模型は増加する見込みだ。建築模型は、建築家によって模型の作り方、見せ方が大きく異なるのが見どころポイントのひとつ。建物だけを作るタイプ、周囲の地形を入念に再現するタイプ、樹木や人物も入れこむタイプなど、作り方も用いる素材も人によって違う。彼らがどのように建物を設計したのかは、各ラックの解説パネルに記載されているQRコード経由でサイトにアクセスすると確認することができる。実際の竣工写真などを見ながら模型を見るのもまた楽しい。

自分のスマートフォンでQRコードを読み取れば模型作品の解説が掲載されたウェブサイトにアクセス可能。またタブレット端末でも同様の解説が読める。

「天王洲アイルはもともと展覧会やイベントが多く開催される新たな文化スポット。現代アートのギャラリーなども続々と誕生しています。この天王洲の新しいシンボルになっていきたい」と語るのは森結紀納館長。開館以来、海外の雑誌やメディアにも取り上げられ、羽田空港から直行で訪れる人も現れているそうだ。
建設業に携わる人と密接に関わっている建築家と建築模型。ミュージアムには、提案段階で完成には至らなかった模型や、設計図が完成するまでに制作するスタディ模型(秀作)を展示する建築家もいる。どの模型もアート作品として見ているだけでも楽しいが、建築家がどのような意図で建物がこの形になったのか、思考のプロセスを見て取れる興味深い場所となっている。

コルク、アクリル、紙、木材など建築家によってさまざまな素材でつくられている建築模型。「建築からその施設のある敷地まで、上から俯瞰した状態で見ることができるのも建築模型ならではです」と森館長。

〈アクセス〉
東京都品川区東品川2-6-10 寺田倉庫本社ビル1F
東京モノレール天王洲アイル駅 徒歩5分
東京臨海高速鉄道りんかい線 天王洲アイル駅B出口 徒歩4分
11:00~21:00(入館は閉館時間の1時間前まで)
●開館時間・入館料など詳細は「建築倉庫ミュージアム」ウェブサイトへ https://archi-depot.com/

 

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