歴史資料

温故知新 見直される木造校舎|旧開智学校

 

 明治九年(一八七六年)、教育熱心な土地柄としても知られる長野県松本市に「旧開智学校」は建設された。約九十年に渡り校舎として使用された日本でも有数の古い小学校のひとつであり、工事費は一万一千余円、小学校の教員の給与が五円程である当時のお金でいうと巨額であった。そのうちの七割が松本町全住民の寄附によるものであり、町民の教育に対する熱意や希望がこの校舎に込められているようだ。昭和三十六年には国の重要文化財に指定され、現在は教育博物館として公開されている。
 木造二階建ての白漆喰を基調とした建物は、地元の大工棟梁であった立石清重が設計を手掛け、東京や横浜の洋館を参考に見よう見まねで造られた擬洋風建築である。屋根中央には八角塔がそびえ立ち、正面玄関の上にはエンゼルや竜の彫刻、窓には舶来の色ガラスが用いられている。文明開化を象徴する代表的な建築物といえるはずだ。
近年、豊かな学習環境の実現に向け、調湿・断熱効果や温もりが実感できる木造校舎があらためて見直されている。

正式名称 / 旧開智学校
所 在 地 / 長野県松本市開智2-4-12
設計・施工 / 立石清重
構  造 / 木造2階建て
竣  工 / 1876年(明治9年)

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