歴史資料

温故知新 一世紀を超えるインフラ|布引五本松ダム

写真提供:公益社団法人土木学会附属土木図書館

布引五本松ダム

  明治三十三(一九〇〇年)年、神戸市の近代的水道施設として布引五本松ダムが建設された。堤体の重さで水圧を支える重力式コンクリートダムとしては日本最古のダムであり、周辺の水道施設と共に国の重要文化財に指定されている。ダムの水は外国船舶にも供給され、赤道を越えても腐らない『神戸ウォーター』として重宝された。   
 英国人技師のバルトンの原案に基づき、佐野藤次郎を中心として設計が進められたが、建設現場は渓流地で車両も入れず運搬や施工は人力だったものの、三年の工期で堰堤が完成した。巨大な城壁を思わせる堤体の表面は型枠に用いた切石を残したもので、上部には切石を一列に突起させた歯飾りが施されている。阪神淡路大震災による被害は小さくて済んだが、一部漏水が増加したため、のちに堤体の耐震補強と堆積した土砂の浚渫工事が行われた。  
 完成から一世紀以上経った今も、市民の水源としてだけでなく、四季を通じ憩いの場としても親しみ続けられている貴重な土木遺産である。

正式名称 /布引五本松ダム、布引五本松堰堤
所在地 /兵庫県神戸市中央区葺合町山郡
設計 /佐野籐次郎
構造 /粗石コンクリート造
竣工 /1900年(明治33年)

 

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