人材確保・育成

平成27年度は「小中学校キャラバン」へ|建設産業ものづくり体験授業で仕事を知る機会を

建設産業戦略的広報推進協議会(事務局:(一財)建設業振興基金)

 建設業団体や国土交通省などで組織する「建設産業戦略的広報推進協議会(以下、「広報推進協議会」)」では、建設産業の役割・魅力を伝えるべく、平成27年度の活動として「建設産業ものづくり体験授業」と題し、10月26日に「さいたま市立新和小学校」の6年生27人、10月31日には「さいたま市立春里中学校」の1年生約270名を対象にキャラバンを実施しました。
 この活動は、昨年度は「工業高校キャラバン」として首都圏の工業高校4校を対象に訪問型授業を実施しましたが、今年度は小・中学校、高校の普通科まで対象を広げ実施することとしました。本稿では、さいたま市教育委員会と連携し「さいたま市立春里中学校」で行ったキャラバンの様子を紹介します。


 
キャリア教育の一環として中学校へ建設産業の体験授業を実施

 

 

同校の体育館で行った開会式の模様

各ブースの代表者を紹介。広報推進協議会を代表して木村課長が挨拶

 昨年度の「工業高校キャラバン」実施以降、より裾野を広げた広報活動に取り組むべく、キャリア教育の一環としてさいたま市教育委員会と連携し、10月31日に「さいたま市立春里中学校キャラバン」を開催しました。建設産業の仕事について、普段の生活では知る機会の少ない中学生へ向けた初めてのキャラバンとなり、対象人数も従来の80名程度の規模から、1年生約270名と大規模な体験授業となりました。また、当日は学校公開日(参観日)であり、保護者も見学ができる場となりました。
 開会式で国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課長 木村実氏より挨拶があり、「日本にはさまざまなものづくり産業があり、その多くは同じものを大量生産している。ところが建設産業は建物や道路、橋、トンネルなど、依頼主の注文を受けて一つひとつ違うものを造る。現場では、高い技術を持つ人たちが集まり、それぞれの知識と技を合わせて一つのものを完成させていく。実際にどんな仕事をしているのか知らない人も多いだろうが、今日は、この場でいろいろと見たり聞いたり体験して、将来、皆さんが建設産業に入りたいと思ってもらえたらと企画した。将来は別の業界に進みたいという人も、建設産業が道路や橋、トンネルなど身近なインフラを支えていることを知って、理解を深めてほしい。」と建設産業の役割を生徒に伝えました。

 
仕事場が見える座学、そして匠の技。見て、体験して、学べるキャラバンに

 

 

 本キャラバンは、「座学(建設産業について学ぼう/匠の技を身近に感じてみよう)」と「体験・展示コーナー」を開設し、2つのグループに分かれた生徒が、交代で各コーナーに移動し受講するというものです。以下、詳しいプログラム内容を紹介します。


大型スクリーンを使って行われた座学「建設産業について学ぼう」

建設業に関するクイズなど、生徒たちも積極的に参加

「建設産業について学ぼう」

講師:広報推進協議会事務局

 建設産業を広く知ってもらえるよう、建設産業の役割から、現場で働く技術者や技能者たちの仕事内容、最先端技術の話など、大型のスクリーンを使った座学の授業を行いました。生徒たちとコミュニケーションを図るため、建設産業に関するクイズを交えた参加型の授業は、生徒からの発言も多く好評でした。

■ 講義内容

1. 建設産業について
 建設産業の役割、建築と土木の仕事の仕組み、総合工事業(ゼネコン)と専門工事業の関係について説明。
2. 建設工事は、多くの人の協力が必要
 橋やトンネル、ビル、住宅などの構造物などは、さまざまな役割を持つ多くの人たちのチームワークにより、工事が行われている。実際の建設現場を例に、それぞれの役割と仕事内容を紹介。
3. 建設業に関するクイズ
 「東京スカイツリーの計画から完成までの期間は?」 「東京スカイツリーの建設に関わった人数は?」
 「日本で一番長いトンネルは?」 「日本にトンネルはいくつある?」
 三択クイズで出題。
4. 現場で働く技能者たち
 建物を造る際の建設工事の流れ、着工から竣工の工程で活躍する職種について、それぞれが役割を担い、チームとなって工事を進めている建設現場の仕事を紹介。建設産業は「力が必要な職業」というイメージがあるが、実は、多くの女性が活躍する業界でもあること。また、「地域のパトロール」や「降雪地での除雪作業」「地震などの災害対応」など、地域を守ることも建設産業の大事な役割であることを知ってもらう。
5. 日本の建設産業は海外でも活躍
 海外でも日本の技術が活用され、多くの日本人が海外で活躍していることを知ってもらうために「ドバイ駅舎の建設工事」で活躍した、㈱鈴木組のとび職人、大澤一人氏のインタビュー動画を放映。とびの仕事内容や魅力、海外で仕事をするきっかけになったエピソード等を紹介。
6. 日本の建設産業の最先端技術
 「シールドトンネル」や「無人化施工」「高層ビルの解体」「ロボットスーツ」など、日本の建設産業を支えている最先端技術についての紹介。


㈱アキュラホームの宮沢社長による熟練の「かんながけの技」を披露

「匠の技を身近に感じてみよう」

講師: ㈱アキュラホーム  社長宮沢 俊哉氏

 元大工職人でもある宮沢社長によるかんながけの実演授業を行いました。職人の世界では、かんながけで出る『かんなくず』は『削り華』と呼ばれています。紙よりもずっと薄く、見た目も美しい"削り華(けずりばな)"に生徒たちは目を輝かせていました。さらに、かんなをかけた削り面はツルツルで、まるで鏡のように反射しており、匠の技に生徒たちは驚いた様子でした。
 また、生徒からの質問に対し、「かんなで薄く削るのは決して簡単なことではない。たゆまぬ修行が必要で、何度も練習し、改善し、技を極めていく。その精神が『匠の心』に通じる。」と説明されました。日本が誇る高度な"職人技"にも触れることができ、生徒たちにとって貴重な体験となりました。


土木遺産や東日本大震災の記録などをパネル写真で説明

「土木」について学ぶ

 (公社)土木学会  国土交通省関東地方整備局

 会場の壁面には、土木遺産や東日本大震災等のパネル写真を展示。東日本大震災のパネル写真の説明では、「地元の建設業の人たちが復旧作業にボランティアで参加し、がれきの山を重機などで取り除いて道を造った。」ことを説明しました。生徒たちは、建設産業が地域を守っていることを知り、建設産業の必要性を改めて学ぶことができたのではないでしょうか。


地すべりやがけ崩れのメカニズムを模型で再現した「地すべり防止の仕組み」の体験コーナー

図や模型を使って解説した体験コーナー「橋やトンネルの仕組み」

 橋やトンネルの仕組み
 地すべり防止の仕組み

 (公社)土木学会

 橋やトンネルのメカニズムを解説し、各種模型を使って液状化などの実験を行いました。
 また、斜面で「地すべり」や「がけ崩れ」が発生するメカニズムと、それを予防するための仕組みについて、模型実験などを使って解説しました。「地すべり」や「がけ崩れ」が起きると、家が崩壊したり道が不通になったり、大きな災害につながる可能性があります。普段はニュース番組で見かけるくらいですが、実際に模型実験などを間近に見ることで理解が深まったようです。


今後建設業界への本格導入が期待されるロボットスーツを装着し、そのパワーを実感

 ロボットスーツ体験

 大和ハウス工業㈱  

 仕事の効率化をはかるロボットが、さまざまな産業分野で注目されています。中でも建設産業への導入が目前といわれているのが、重い資材の運搬などをサポートする作業支援用ロボットです。「ロボットスーツ HAL」を装着した生徒は、24キロの重い荷物をスムーズに持ち運ぶことができ、驚いた様子でした。こうした体験を通じて最先端のロボット技術を身近に感じられる体験授業となりました。


大工の基本、「釘打ち」「のこぎり」「かんながけ」にチャレンジ

 大工工事体験

 ㈱アキュラホーム

 大工仕事の基本である、釘打ち、のこぎり、かんながけの体験コーナーを開設。特に人気だったのが、かんながけのコーナー。最初はベテランの職人がお手本を披露し、その後に生徒が順番にかんながけを体験しました。なかなか職人と同じようにはできず職人が手を取り教える場面も多く見られました。


職人のアドバイスのもと、壁塗りを初体験

 左官工事体験

 (一社)埼玉県左官業協会  (一社)日本左官業組合連合会

 漆喰は「こて」を使って仕上げる、左官業の長い歴史の中で培われ洗練されてきた技法の1つ。生徒たちは、最初はぎこちない動作でしたが、徐々に慣れてくると職人から「センスがあるよ!」と褒められ嬉しそうでした。実体験を通じて左官工事への理解が深まり、より関心を持ってもらえる体験授業となりました。





 キャラバン終了後の閉会式では、生徒から関係者に向けて、お礼の言葉と歌のプレゼントがありました。生徒代表からは、「私たちの暮らしは、建設産業の伝統の技と最先端技術によって支えられていることを知り、感動と驚きでいっぱいです。特に地滑り防止のメカニズムには大変感心しました。自然と融合する町づくりを自分自身でもやってみたくなりました」とお礼の言葉がありました。日ごろ、建設産業に接する機会が少ないこともあり、「もっと、いろいろ体験してみたい!」という名残惜しい声を聞きながら充実した体験授業は終了しました。
 今回のキャラバンをきっかけに生徒が少しでも建設産業に対して興味を持ち、将来の進路を考える際に「建設産業を選択肢の一つ」として挙げてもらえれば、キャラバン開催の意義があるといえます。今後は普通科高校まで対象を広げ、裾野を広げた広報活動を行うとともに、各地域でも同様の取り組みができるよう、教材やノウハウ等を提供し、各関係団体等の担い手確保に資する広報活動の支援を行っていきたいと考えています。

 
● 生徒達の声をご紹介します

職人さんがかんなで木を削ったら、ただの木がつるつるになった。
機械でやったのと人の手でやったのでは手触りも全く違っていたのでビックリしました。
 
地滑り防止の策がたくさんあったので、日本で土砂災害が起こらなくなる日がくると思いました。
 
女性でも働いている人がいると聞いてとても心強かったです。
 
自分が知らないところで自分たちの生活を支えてくれていたことに気付きました。
 
戸建て住宅やマンション、トンネルなどを造る時は、どの位の期間でできるのか知りたいです。
 
東京スカイツリーが完成した時、一番上にあるクレーンはどうやって降ろしたのですか。
 
左官工事が一番印象に残っていて、私の夢が左官職人なのでとても嬉しかったです。
 
とてもおもしろくて分かりやすかった。僕もいつか建設業に勤めたいと思った。
 
木について色々知れたので良かったです!私は新しい木造の家が好きなので、この授業を受けるのが楽しみでした!
かんなで削ったりするのがとても楽しくできたので良かったです。
 
トンネルの形で、全然強度が違うことが分かった。
 
私は小学生のころに建設現場で働いてみたいと思っていましたが、中学生になってその思いが薄れていました。
しかし、今回の授業を通してやっぱりやりたいなと思い直しました。
 
ロボットスーツがとても印象的で、歩きにくかったけど物を持ち上げるのは楽で、これならいくらでも重いものを運べるなと思いました。
 
とても良い体験をさせてもらえて良かったです。建設業に父が就いているので家で一緒に話をしようと思います。
 
※建設産業戦略的広報推進協議会
 

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