人材確保・育成

建設産業を支える女性たち

建設産業を支える女性たち|今は一人の職人として積み重ねてきたものを 受講生に伝えたい

㈲片岡鉄筋 建設マスター 町 美差恵さん

今は一人の職人として積み重ねてきたものを受講生に伝えたい  何も分からず飛び込んだ建設業界。㈲片岡鉄筋の町さんに女性が職人の世界で働く苦労と、これまで自身を突き動かしてきた仕事のやりがい、これから職人を目指す女性への期待と目指すべき職人の理想についてお話しいただきました。


㈲片岡鉄筋 建設マスター  町 美差恵さん Misae Machi

PROFILE/プロフィール
 高校卒業後、鉄筋工の職人として従事。現在は㈲片岡鉄筋(静岡県藤枝市)に勤めながら、2008年より富士教育訓練センターで鉄筋の非常勤講師も務め、土木施工教材の改善にも参画。人材育成に注力する。2014年には「平成26年度 優秀施工者国土交通大臣顕彰」((公社)全国鉄筋工事業協会推薦)を受賞。
 

 幼少から体を動かすことが好きで、10年前からサーフィンを始めた。海を眺めていると心が洗われるという。仕事でイイ汗をかいた後や休日に大切な友人と飲むお酒は、仕事への活力になるそうです。
 


ただ一生懸命に働きたかった 日々成長が追い付いてくる

 高校卒業後、初めて就職したのは横浜の鉄筋工事業者でした。とにかく身体を動かす仕事に就きたかった。学校に来た求人票から、〝県外、鉄筋、技術〟というキーワードを見て、「きっと、県外で技術の仕事だろう!」と勝手なイメージで決めたくらい。当時は一生懸命やれれば職種は何でもよかったんです。
 最初に配属された現場で、何も分からず仕事ができない私を、女性の先輩がいつも飲みに誘ってくれました。そうやって、現場に慣れるようにしてくれたんですね。今でこそ重機が揃っていますから、腕力を必要とする作業は少なくなりましたが、60キロくらいの鉄筋を担いでいたこともありました。「凄い!」ですか? コツを掴めばさほど重くは感じません。ある日を境に、急に持てるようになるものです。そういった自分の成長が、日々嬉しかった。
 その後、景気が悪化し地元に戻り、今の㈲片岡鉄筋に入社しました。

 

好きで続けてきた仕事で表彰される喜び

夏場は汗もかきますが、それが嫌な汗から、サラサラのイイ汗に変わってくるんです。終わった時の達成感は本当に清々しく気持ちがいい。やっぱり現場は楽しいですよ

 「優秀施工者国土交通大臣顕彰」を受賞するなんて、しばらく信じられませんでした。この仕事に就いて頑張ってきたからいただいた名誉です。国や社会に認められたことが素直に嬉しかった。
 鉄筋工の仕事は、時間をかければ誰でも綺麗に仕上げられる。ですが私たち職人は時給単価で働いていますし、取り付けが遅れれば後工程にもしわ寄せがきてその担当の職人にも迷惑をかけることになる。だから職人はいかに早く正確に、しかもケガをしないように仕事を仕上げるかが求められます。大きな案件だけが実績や名誉ではない。必死になって「続けてきた」こと、経験を積んで一つ一つ自分のものにしてきたことこそが評価されたと思うのです。


本物を育てたいから職人として講師を続けたい

 一級技能士を取得後、社長や周囲の勧めで富士教育訓練センターの非常勤講師になり、実務指導、安全教育をしています。
 現場と講師の両立に慣れず苦労もありましたが、教えることで得られることも多く、他の講師とやり取りした知識や情報が現場に活かせることも多いです。元来、工程が近い型枠大工の仕事を鉄筋の職人が知っているかというと、実はそうでもないこともあって、例えば「大面、小面」という型枠用語も講師としてプログラムを作るまで知りませんでした。本当に職人として学ぶことは、一生続いていくのだと実感しています。職人としての視野も広がりました。
 教育訓練は、現場監督、職人と多くの視点を持って臨んでいます。職人として学びたいという思いを持つ人たちに、本物の職人の技術や心構えを教えることができるから。講師専任では、感覚も鈍るし、体力も落ちて、本物の職人ではなくなってしまう。建築業法、表記やピッチ、工法など日進月歩で変わっていきますから、今は一人の職人として現場で習得したことを、講師としても伝えていきたい。
 職人として現役を続けるのは理想ですが、年齢を重ねて、独立して親方になるという選択肢の他に、講師という選択もあると思うようになりました。

 

いつか女性だけで造る建築を「みんなでものづくりを始めよう!」

.「平成26年度 優秀施工者国土交通大臣顕彰式典」にて .講師として指導中の一コマ。富士教育訓練センターにて .地元の海で .伊豆へサーフィン仲間と

 学生や新入社員の講習で、感想文を書いてもらいます。女性受講者の感想文を読むと、業界で働くことに不安を抱く内容も少なくありません。講習は、職人としてのスタートラインにもなりますから、先輩の職人として不安を少しでも取り除いてあげられないか、まだまだ課題は多いです。
 現場では仕事以外の部分で、トイレや着替えという女性ならではの悩みもあります。経験者は、女性らしく振る舞って周りに意識させて解決できたりするような知恵も身につけていますが、講習でも新入社員の女性は言い出せないようです。
 1人、2人の女性のために現場に女性用トイレや更衣室を設置することは、会社にとってみればコストに合わない。ならば、会社に事前に情報を教えてもらえば、現場に女子トイレがなくても、周辺施設の利用できるトイレを探し、手を洗う場所がなかったら水をタンクで持っていけばいい。これだけで、気持ちもずいぶん違うのではないでしょうか。
 建設業界に女性も増えてきています。私は、ものづくりの楽しさを若い女性にも伝えていきたい。何年先になるか分かりませんが、女性だけで何かシンボルになる建物を造りたいですね。

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