人材確保・育成

工業高校キャラバンの開催

工業高校キャラバンの開催 Part.1|埼玉・熊谷工業/千葉・東総工業

建設産業戦略的広報推進協議会
埼玉県立熊谷工業高等学校
千葉県立東総工業高等学校

未来をつくる君たちへ 2014年度、建設産業団体、外部有識者、行政等で構成される建設産業戦略的広報推進協議会(以下、協議会)では、建設産業の仕組みや魅力等を伝えるべく、「工業高校キャラバン」をスタートさせました。年末までに東京・埼玉・千葉の工業高校4校で開催しており、今号は、10月30日(埼玉・熊谷工業)と11月17日(千葉・東総工業)に開催されたキャラバンの概要を紹介します。


 「工業高校キャラバン」とは、工業高校の建設系学科1・2年生を対象に、建設産業の仕組みやその魅力について、実際に現場で働く技術者や技能者、学識経験者、行政からお話しいただく活動です。まさにこれから進路を定めていく1・2年生が、この「工業高校キャラバン」をきっかけに、1人でも多く建設産業へ進んでもらいたいとの願いからスタートしました。この趣旨に賛同された学校を対象に、授業の一環として実施しており、本年度は首都圏の工業高校を中心に開催しました。

1501_040_16.jpg キャラバンのプログラム構成は複数用意しており、本年度は試行的にいろいろなパターンで実施しています。今回ご紹介する2日間では、行政の立場からは国土交通省の幹部が、建設産業の社会における役割を伝えながら、若い方も安心して働けるような環境整備を行政としても進めていることを学生へ直接語りかけ、外部有識者である芝浦工業大学蟹澤宏剛教授(協議会顧問)からは「建設産業の魅力」をテーマに、4問択一のクイズ形式で江戸城と東京スカイツリーの建設に関する話から、仕事の魅力やキャリアパスについての理解を深めるお話を頂戴しました。建設の現場からは、建設産業をより身近に感じてもらうため、知名度の高い建物の建設に携わった㈱大林組から技術者を招いたほか、その協力会社である㈱鈴木組から技能者を講師として迎えました。各自建設にまつわるエピソードをお話しいただいた後、最後に事務局から協議会の活動状況を紹介して締めくくりました。ここでは各講話のトピックをご紹介します。

 

若者が安心して働ける未来を託せる環境を業界一体となりつくりたい
 
「工業高校キャラバン」実施日

 国土交通省からは、土地・建設産業局建設市場整備課の屋敷次郎課長を講師に、建設産業の役割と行政の施策についてお話しいただきました。自分たちの学校に国土交通省の幹部が直接訪ねてきたことに、最初は少し緊張の色が見えた学生たちでしたが、「生涯安心して働ける環境整備」に業界一体となり取り組んでいることを知る、貴重な機会になりました。

 2014年に発生した広島の土砂災害時における地元建設産業の土砂撤去対応を例に、「建設産業は社会資本整備を担う基盤産業であり、災害対応を含む『地域の守り手』」であるとして建設産業の社会における役割を紹介し、その現場を技術や技能、熱意で支える人々が誇りを持って、また安心して働き続けられるよう品確法を中心に建設業法、入契法等の一体的改正が行われたことや、若い方が誇りや希望を持って働けるような就労環境の整備について業界・行政・外部有識者・教育機関等の関係者が業界一体となって対策を講じる建設産業活性化会議が設置されたことなどについて冒頭説明しました。

 続いて、学生や保護者が抱えているかもしれない「建設産業に対する不安」に対して、それぞれの課題に対する行政の取り組みと合わせて建設産業の現状について紹介しました。社会保険等未加入問題への対策や建設産業における未加入企業の減少状況について説明し、若い方を迎え入れる就労環境の整備が進んでいることを説明しました。また、建設産業の将来性については「2020年に迫った東京オリンピック関連工事や、全国で老朽化が進むインフラの維持・管理・補修等のインフラメンテナンス産業」について紹介。また、仕事、人生のキャリアパスやライフプランがしっかり描けるような取り組みを推進していることを説明し、学生の皆さんが将来に希望を持てる業界になっていくことをアピール。「“女性が活躍できる建設産業”は、つまり“男女問わず働きやすい職場”」であると紹介した上で、「清潔なトイレや更衣室、長時間労働の是正、計画的な休暇取得などを目指して、5年以内に建設産業で働く女性の数を倍増する目標を業界団体と一体となって掲げています」とし、環境整備に取り組んでいることを説明しました。

 
多くの人々が携わりものを造り上げていく建設産業の「魅力」
 
蟹澤教授

 蟹澤教授からは、たくさんの人の手によって1つのものが造り上げられていく建設産業の醍醐味やキャリアパスについて、江戸城と東京スカイツリーの建設をテーマに、4問択一のクイズ形式で分かりやすく説明されました。
 「1つの街には、大小様々なビルと住宅、道路、川、橋、鉄道などがあり、これらの建設、敷設、点検や修理などに関わるのが建設産業の仕事。現在、日本一有名な建物といえば東京スカイツリーが挙げられる。工期は3年8カ月にも及び、工事現場で働いた人は延べ58万人。1日当たりの平均人数は900人前後と非常に多くの人の手で造り上げられた。これが建設産業の醍醐味。この仕事に従事する人の中には、色々な専門性を持った職人がいて、一人一人が自分の仕事に自信とプライドを持っている。だからこそ、建設に携わった全ての人々が自分の子どもにも『自分が造った建物だ』と胸を張れる。本当にやりがいと達成感、魅力のある仕事です」と説明。さらに平成のシンボル・東京スカイツリーと、江戸時代のシンボル・江戸城に関するクイズを出題。「築城に携わったのは延べ何人だったか? 難攻不落を目指して濠を掘ったり、石垣を積み上げたりと、堅牢な城本体に携わったのは5,000万人、1日当たりの労働者は3~5万人といわれ、当時の日本の人口は3,000万人であったことから、とてつもない大工事だったと想像できる。昔から建設産業は、多くの人々の力の結集で成り立っている」とその醍醐味を伝えました。

 続いて、建設産業における技術・技能に関連した話として、エジソンのエピソードを紹介。「エジソンは、1910年に住宅1軒丸ごとの型枠を造り、煙突からコンクリートを流し込んで量産することを考えた。実際、このプレハブ住宅で特許も取ったが、想像以上に難儀で実用化に至らなかった。1944年の風刺雑誌『パンチ』には『20世紀になればコウノトリが完成した家を運んできてくれる』という未来を予想した記事が掲載されたが、科学が進歩した現代に至ってもそのようなことにはなっていない。それはなぜか。どんなにオートメーション化が進んでも、建設の世界は結局、人の力、技術・技能が欠かせないから」とし、これから就職先を考えていく学生にも、その醍醐味を知り、建設産業を選択肢の1つとしてもらいたい。また、先輩の技術・技能を受け継ぎ、これからの日本の建設産業を支える一人となってほしいと熱く語りかけました。最後に、建設というものづくり、建設業は面白いとして以下の内容を説明して講演を終えました。

 


東京スカイツリーに見る日本一を支えた建設力
 

 東京スカイツリーの建設に携わった㈱大林組の田渕部長には、その全容を記録したDVDの鑑賞後、スカイツリー建設にまつわるエピソードをお話しいただきました。日本一のツリー建設に秘められた裏話に、学生は目を輝かせていました。
 田渕部長は、東京スカイツリーの建設について「高さは日本一の634m。今振り返ってみても、今回の工事は“前人未到の高さ”への挑戦でした。足元は一辺約70mの正三角形で、上に向かって徐々に円形に近づき、高さ約300mで正円。タワーの上は、風や落雷、あらゆることが地上とは違います。特に今回の工事中、最も冷や汗をかいたのが3・11に起こった東日本大震災でした。しかし、大きな揺れでもスカイツリーはびくともしませんでした。多くの最新技術を用いていたからです。これらの技術なしに竣工するのは不可能だったと思います」。高さ634mのタワーの建設を支えるための三次元で建築の工程をシュミレーションできるBIMの仕組みや、高所でのクレーン作業を安全に進めるために、強風に煽られる吊り荷の方向を制御するスカイジャスターなど、日本の最新技術を多く採用していると図解で説明しました。

 田渕部長は、「ものづくりは計画・設計通りにはいきません。設計者、現場の職人さんたちとのチームワーク、そして高い技術があって成り得るもの」と話し、東京スカイツリーの裏手にある記念碑について「これは一般の人にほとんど知られていないことですが、その碑には工事に関わった全員の名前が刻まれているのです」と、工事に関わったことへの誇りについても語りました。

 
私が就いたとび工の仕事、職長としての役割
 

 ㈱鈴木組に入職して14年目になる中村さん。建設の現場で「とびに始まり、とびに終わる」といわれるほどとび工の仕事は重要なポジションです。そんなとびの仕事を選んだきっかけや、仕事のやりがいなどについて、中村さんに語っていただきました。
 「とび工の仕事は、高所に足場を組み、現場で作業員が安全に作業できるように整備することです。建物の基礎である鉄骨を建て、外周に足場も組みます。大型現場では、タワークレーンの組立や解体もします。高くて危険な場所にも最初に乗り込み、他の人が安全に作業できるように足場を組んだりもします」と、仕事内容について紹介しました。

 中村さんは現在職長という立場に就き、現場を管理するマネージャー的業務をしていると説明。「朝礼でその日の作業内容を伝え、スタッフの健康状態をチェックし、人員配置などを決定します。さらに、安全についての確認事項も念入りに行います。安全・品質管理のための現場パトロールも職長の重要な仕事です」と仕事について話す中で、以前、現場に設置されていた自動販売機を作業中に誤って壊してしまったといった失敗談から「こうした経験をどう日々の仕事に活かすかといったことを指導し助言するのも職長の重要な役目です。他の作業員が気分よく仕事ができるように、常に周囲に気を配っています」と、失敗が人を大きくすることや、自身の仕事の責任の大きさについて、先輩の立場から学生たちにアドバイスする場面もありました。

 最後に中村さんは「職長にとって一番重要なのが、部下たちにケガや病気をさせずに、元気に作業してもらえる環境をつくることです。それが私に課せられた最大の任務であり、やりがいのある仕事だと思います」と、仕事に対する思いを熱く語りました。

 
担い手確保・育成に向けて
 
建設業界ガイドブック2014

土木、建築の違いや、専門工事業の仕事を工種別に紹介。年間28,500冊発行。全国の工業高校生に配布している

 講演終了後、事務局からは建設産業を身近に感じてもらうための1つのツールとして、建設産業におけるJOBポータルサイト『建設現場へGO!』の活用方法や建設産業の仕組み、工事の種類について理解を深めてもらうために、『建設業界ガイドブック2014』を用いて説明しました。また、今後の協議会の活動として、キャラバンの範囲を普通科高校へも広げ、継続的に実施していくこととし、最後に未来の建設産業を担う若い人たちに向けて、エールを送りキャラバンを締めくくりました。

アンケート集計結果
 



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