人材確保・育成

建設産業担い手確保・育成コンソ ーシアム

"ものづくりは人づくりから"を実践する 日本有数の規模を誇る教育訓練施設

富士教育訓練センター
(職業訓練法人 全国建設産業教育訓練協会)

 平成9年“ものづくりは人づくりから”という信念の下、富士山の麓に「富士教育訓練センター」が開校した。今回は鹿島建設㈱の事務系1年次社員フォロー研修に参加させていただき、同センターが行う教育訓練を体験した。

 

寝食を共にする家族であり「挨拶」が共通ルール


富士教育訓練センター

 富士教育訓練センターは、平成26年3月までの教育訓練修了者が13万人以上(教育訓練人日累計は55万9,475人日)に上る、建設業界では規模・内容とも日本最大の教育訓練施設だ。訓練生は全国各地から集まり、古くは専門工事業者を中心に熟練者の技能向上に多く利用されてきたが、近年ではゼネコン各社にも利用が浸透。元請・下請の新入社員研修といった教育訓練にも活用の範囲が広がっている。
 この日は、躯体・設備の施工、設計、測量など10コース、112人が教育訓練を受講しており、鹿島建設㈱では、事務系新人社員12人を対象に「建設業事務系技術研修」を実施。取材スタッフは、同社の研修に1日体験として参加させてもらった。
 同センター最大の特徴は、全寮制による共同生活で協調性やコミュニケーション能力を養成することにある。今回、同社の研修プログラムは2泊3日にわたり行われ、訓練生は共同生活におけるルールやモラル、マナーから学んだ。ここでは「訓練生は全員、寝食をともにする家族であり、必ず挨拶をすること」、「怪我をしたら元も子もない。安全第一! 気を配り、声を出すこと」、「現場同様に時間厳守であること」など、入校式の際に教官から厳しく指導があった。
 センター内では頻繁に他社の訓練生とすれ違うが、たとえどんなに強面の職人さんであっても、無言ですれ違うことはない。こちらも自然と「お疲れさまです」の言葉が出てくる。


朝礼では、100人近い訓練生がラジオ体操をし、安全確認などの訓練をする


約100人が利用可能な大食堂では、ランチタイムになると全訓練生が集まる。当日のメニューは鳥つくね

 

「安全」の大切さを痛感

 初日は松林教官による「足場の仮設工事の実習」である。教室でDVD『安全衛生教育ビデオ とび・土工編』を観ることで、建枠、アンチ、ブレースなど、足場の組立に必要な資材の名称やその工程などを一通り学び、この実習の課題である「2層2スパンの足場の組立」について説明を受ける。要するに2階建ての足場である。
 松林教官は「この実習では、足場の組み上げ、パイプの緊結、高所約2mの歩行訓練を体験してもらいます。実際にやってみたほうが覚えられる」と、すぐにヘルメットと安全帯を着用し、早々に野外の実習場へ移動することとなった。
 作業上の注意点、資材の持ち方や運び方、正しい作業、危険な状況など、松林教官からは課題の実演を通して説明を受ける。「では、やってみましょう!」と、教官の号令で実習は始まった。



今回使用した資材。これらを要領よく組立てて足場を作っていく

 4人1組のチームに分かれて、まずは資材置き場から必要な資材を持ち寄るのだが、そんなに簡単ではない。取材スタッフのチームには自身を含め女性は2人。12kgもある建枠や、8kgのアンチ、他の資材もみな重く、それらを持ち上げ頭上に組み上げる大変な作業である。長さが2m近い資材もあり、「人にぶつけてしまうのでは」とヒヤヒヤしながら運搬する。周囲に人がいないか確認し、常に神経を張りめぐらせていなければ大きな事故につながる。ここで怪我をしてしまったら実習の意味もなくなる。安全厳守の大切さは、ここで身をもって実感することとなった。

秋雨に降りこめられ悪戦苦闘の実習作業

「指導は、手取り足取りは教えません。チームで考え、意見を出しながら協力してほしい。また、作業中どんな危険が潜んでいるか声を掛けながら身をもって学ぶ。力仕事は大変ですが、持つ位置によっても体の負担は変わってくるもの、慣れれば大丈夫」とは、松林教官の言葉である。

職人の気持ちを知る


初めての経験に右往左往した「足場組立」研修。職人の技の見事さを思い知った一日だった

 鹿島建設人事部の笹岡担当部長は、「5~6年前から、入社直後の4月、土木建築系社員の新人研修に同センターを利用している。今回、事務系社員を対象としたのは、普段現場に行くことがなく、現場で職人がどういう作業をしているかという理解が不足しているから。とび工をはじめ、鉄筋工、コンクリート打ちなどの作業内容や動き、技術的な難しさは実際にやってみないと分からない。そこを学ぶことで職人の気持ちを汲み取り、“職人さんが稼いでくれるんだ”“鹿島の社員は、パートナーである職人さんを守るために安全設備や前段取りをしっかり行う必要がある”と身をもって知ってほしい」と、今回の研修の意義目的について話す。
 デスクワークが中心で現場に出ることのない事務系社員にとって、こうした機会は得難い。図面に合わせ計画通りに仕上がることが当たり前、だが実際にやってみると簡単ではない。実習を通して現場の職人の働きに、あらためて頭の下がる思いがしたことだろう。
 鹿島建設では27年度から、同センターにおいて土木建築系と事務系を含めた合同新人研修を行う予定という。
 最後に、同センターの小松原校長に教育訓練に対する思いを伺った。
「経営者・経営幹部の『育てていこう』という意識、『育てたい』と願う企業のニーズ、我々はそうした要望に応えたい。任せられるという信頼関係があるから、オーダーメイドのカリキュラムを組めるのです。当センターに来訪、依頼される企業の経営者・経営幹部や担当者は、教育養成に強い意識を持って社員を出される。雇用もまた信頼関係がなければ成立しません。そうでなければ人は育たず、定着しない。10年先、100年先をも見据え、業界全体が人材を大切に育ててほしい」。

 



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