企業経営改善

建設共済保険と育英奨学金 2つの事業から企業の安定運営を支援

語り手:(公財)建設業福祉共済団 理事長  茂木(もき) 繁 氏
聞き手:(一財)建設業振興基金  専務理事 有木(ありき) 久和(本文敬称略)

 建設労災補償共済保険、いわゆる建設共済保険と育英奨学金の2つの事業を中心とする(公財)建設業福祉共済団(以下、共済団)。各事業の概要と目的について、新理事長の茂木氏に伺いました。

 
茂木 繁 氏
(公財)建設業福祉共済団 理事長
茂木 繁 氏
1972年労働省(現・厚生労働省)入省。2015年1月建設業福祉共済団顧問に就任。同年2月より現職。

建設共済保険と育英奨学金 2つの事業を推進

有木 共済団の事業をご紹介願います。
茂木 昭和45 (1970)年に全国建設業協会の要請を受けて創設された建設共済保険が主力事業ですが、育英奨学事業も併せて実施しています。建設共済保険は、建設業の現場に従事する労働者に業務上、通勤途上で死亡、重度の障害等を残す労働災害が発生した場合に保険金を支払う制度です。死亡や重度の障害が残る労働災害が発生すれば、労災保険の補償の他に、一般的には民事的な追加的補償が必要となります。補償のための予期せぬ出費を回避する観点からも、企業経営の安定化に資する制度であると考えています。
有木 主眼はどちらにありますか。
茂木 企業防衛と労働者福祉です。任意の労災補償制度への加入促進等福祉の充実を求める通達が出されるなど国土交通省と厚生労働省のご支援もいただき、平成6 (1994) 年度より建設共済保険加入は経営の安定に資するという点から経営事項審査で加点措置も講じられています。
有木 育英奨学事業はどうでしょう。
茂木 業務災害・通勤災害死傷者の子女に保育所や幼稚園、小学校は月額1万2,000 円、大学は月額3万9,000 円を、返済不要の奨学金として支給しています。先日も、30 歳になったばかりの若い方が亡くなるという気の毒な事故があって、小学校低学年の児童と幼稚園通園の幼児2人が支給対象となりました。年間250人前後に奨学金が支払われています。
有木 平成25年4月に公益財団法人になりましたね。
茂木 ええ、主要な公益事業に建設共済保険事業を位置付けて、特定保険業認可の下で事業を推進していく運びとなりました。制度創設以来40 数年に及ぶ実績が公益財団法人として認められたわけです。これまでも全国建設業協会と各都道府県建設業協会のご協力を仰ぎながら加入促進に取り組んできましたが、今一度原点に立ち返り、相互の絆をより強固なものにして業界の発展に寄与し、真に役立つ存在であり続けられるよう努力していきたいと思っております。

茂木 繁 氏
(一財)建設業振興基金 専務理事
有木 久和

無事故の契約者には 今年度から割引率を拡大

有木 2つの事業の他には、どのような取り組みをされていますか。
茂木 各都道府県建設業協会が地域で実施する清掃・防災等の社会貢献活動や現場の安全推進活動、各種講習会や人材確保・育成等の諸事業に対して助成しています。さらに公益事業の拡充を図れないか現在検討中です。
有木 掛金収入はいかがでしょうか。
茂木 公共工事等の落ち込みもあって長期低落傾向にありましたが、平成24(2012)年度に30 億円で底を打って平成26(2014)年度は33 億円と持ち直してきています。主力の年間完成工事高契約者数は、約2万5,000社で横ばいの状態ですが、年間更新率は95~96%という高い数字を維持しております。
有木 建設共済保険の信頼性の高さを表しているということですね。
茂木 各都道府県建設業協会の会長をはじめ、幹部や事務局のご支援、ご協力があればこそと感謝いたしております。また、昭和58(1983) 年、男鹿半島沖の日本海中部地震、平成23(2011)年の東日本大震災の際には共済制度の精神に立った共済金の支払いがなされ、こうした実績も制度の信頼性につながっている面があるように思います。
有木 労災事故の状況などを教えてください。
茂木 各方面で安全意識の高揚が図られ、全体として労災事故が大幅に減少する傾向にあります。そんな中、お陰様で共済団は良好な財務状況を維持しております。今年度から、無事故で1 年間の契約期間を終えて更新された契約者には、年間完成工事高の区分(2 億円未満~100億円以上)に応じて割引率を2 割拡大し、保険料を12~72%まで割り引くことにいたしました。そもそも掛金が安いのが建設共済保険の特徴ですが、さらに安くなって、万が一の際には手厚い保険金の支払いが可能となります。

足元の職場環境整備が 各企業や団体の大きな課題

有木 建設業は公共工事が大幅に削減されてきたこともあって長期的な展望を持ちにくく、経営後継者の不足や若い人を中心に入職者の減少などが憂慮されていますね。
茂木 少子高齢化社会にあって、どの業種にも共通して言えるのでしょうが、特に建設業界の高齢化は深刻です。国土強靭化が叫ばれる一方で、地域の安全や災害の際の役割を担う人が地域からいなくなるという懸念などが顕在化してきています。国政でも「地方創生」が一大テーマになっていますが、多くの地方では地場産業の振興を図りながら農林水産業と建設業を基盤として自然環境にも配慮したグランドデザインが描かれていくのではないかと思います。
有木 このところ、建設業界では、女性の活躍を期待する声も高まっています。
茂木 これからの時代の鍵はおそらく女性が握っています。女性が好んで入職あるいは定着、定住してもらえないと、業界も地域も維持発展していかないだろうと思います。特に建設業は、労働集約型の産業の典型であり、担い手の確保が不可欠です。そうした観点から、担い手三法の施行を契機として、行政・建設業界・関係団体など関係者が一丸となって対応することが必要でしょう。当団としても業界の支援の立場から積極的に関与すべく、その一環として担い手確保・育成コンソーシアムの活動の趣旨に賛同して、今般、担い手育成基盤整備基金への拠出を決定したところです。
有木 最後に建設業に対する思いなどをお話しいただけますか。
茂木 建設業は無から有を創出するような夢のある潜在的に大きな魅力を持つ産業です。建設業従事者にとって、あの橋や道路、あの建造物は自分も関わって造ったという思いは、それらが現認できるだけに、大きな誇りとなるのではないでしょうか。企業は人なりですが、まず若い人をはじめとする担い手が安心して働ける職場であることが求められます。
有木 そのためにも社会保険の加入が重要になりますね。
茂木 現在、社会保険の未加入問題に焦点が当てられていますが、適正賃金の支給はもとより、現場の安全対策も含めて法律上義務付けられた事柄を順守することは企業としては当然のことです。むしろ法定外のことこそ一層重要になります。業界全体の福利厚生の水準が他産業以上に充実していくように、建退共の退職金制度への加入、労災上乗せ補償としての建設共済保険の普及促進などを手始めとして、足元の職場環境の整備を進めることが、各企業や団体にとってこれからの大きな課題になるのではないかと思います。
有木 有意義なお話、どうもありがとうございました。

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