企業経営改善

建設業経営者インタビュー

将来の建設業界を背負う若手の人材育成に注力/経営者インタビュー | 杉本 素一さん(熊本県)

株式会社杉本建設
杉本 素一 氏

一般土木と舗装をメインとする中堅企業
将来の建設業界を背負う若手の人材育成に注力

杉本 素一さん

杉本素一さん

熊本工業大学工学部土木工学科卒。
33歳の時に社長に就任し、現在11年目。
本業の傍ら、熊本県建設業協会青年部の青年部長(2期目)として活動。

株式会社杉本建設
本社 熊本県阿蘇市役犬原98-3
創業 1965年
社長 杉本素一
社員数 36名

 

●会社の概要

 創業は1965年で、2年後の2015年に会社設立50周年を迎えます。事業は、一般土木と舗装をメインに、河川、砂防工事などを請け負っています。受注する工事の8~9割は
 国県市町村からの公共工事です。昨年は本業以外に、戸建を1軒だけですが、一般住宅工事も手掛けました。
 これを契機に今後は建築分野にも手を広げていこうと社員に施工管理者の資格取得を奨励するなど本格的に取り組む計画でしたが、まずは地域のため、昨年の大水害(熊本広域大水害)への対応を優先する方針です。

●熊本という地域性

 昭和の高度経済成長期には、農業従事者が農閑期に土木業を兼業するといったケースはけっこうありましたが、次第に淘汰されていって現在は建設業一本の会社がほとんどですね。ちなみに私が所属している熊本県建設業協会青年部では、20年前は240社の会員がありましたが、現在はその4分の1の60社に減っています。もう少し増えてほしいのですが、大変厳しい状況です。

●仕事の現状

 昨夏の大水害(熊本広域大水害)までは、仕事が少なくなっていました。現在は、その被害の復旧需要で公共工事の発注量が急増し、技術者が不足するようになりました。それまでは受注量に合わせて人材や設備を計画するなど、経営のスリム化に努めてきましたからね。それが一気に逆転し、今後はさらなる発注量が見込まれています。人材が不足してくるのは確実な状況です。
 求人は新卒に絞って行っていましたが、来年度の工事に間に合わないため、現在は中途採用に切り替えて募集しています。でも、見通しは厳しいですね。災害復旧の関係で地域全体が人材不足になっており、中途採用も思うようにいかない状況です。

●昨年の大水害での対応

 会社に直接被害はなかったものの、周辺地域の被害は甚大で、特に道路は、熊本と大分を結ぶ国道57号が土砂崩れで2カ月ほど通行止めになりました。そこの応急処置として、我々は国交省の要請を受けて24時間態勢で仮橋を設置するなどして復旧活動に尽力しました。2012年7月12日の国道57号滝室坂災害発生から仮復旧までことを、当時担当した土木部長の丸野はこう語っています。
 災害発生から24時間、二次災害のリスクと隣り合わせの中、とにかく必死の思いで復旧に努めました。翌7月13日の夕方には、最低限通行可能な状態になろうかとしていた時、無情にも雨が激しく降り出し仕方なく中断待機を余儀なくされました。その間出された答えが災害現場をショートカットする形での仮橋設置でした。
 当初、9月10日開通を目標に24時間体制での施工を行っていました。二次災害もさることながら、疲労やストレス、熱中症対策に神経を使い、また状況によって変化していく国交省からの指示命令。厳しい叱咤激励等そこには今までに経験した事のないプレッシャーがありました。
 そうした中、「熊本と大分を結ぶ生活や経済の動脈であるR57号を早く通してほしい!」と言った地域からの声や要望に、何とかして応えたい!地域社会に貢献していく事、これが我々の使命であり矜持なんだ!と自らに言い聞かせ、チームを鼓舞し奮い立たせました。
 そうした他の社員や協力業者のお陰もあって、当初予定の9月10日よりも20日早い8月20日に開通する事が出来ました。
 開通を心待ちにする車の列のドライバーから「ありがとう」と声をかけられた時には、熱いものが胸に込み上げて来て今まで大変だった事がいっぺんに報われた気がしました。
 今後も我々は、地域からより必要とされる、地域になくてはならない建設業者として、存在意義を果たしていかなければならないと改めて実感させて頂きました。

●新規採用について

 ここ数年はハローワーク、大学を中心に求人を行ってきました。資格取得に応じて昇給する仕組みはありますが、なかなか我々が求めている技術者を志望する若手の人材は見つからず新規採用に至っていません。毎年、1~2人でも採用ができればと思います。

●大卒雇用に暗雲

 新卒採用がままならない背景には、県内の大学3校のうち2校で土木の専門学科が廃止になったことがあります。現在、工学部があるのは熊本大学のみ。私自身も熊本工業大学土木学科出身で、母校のツテでこれまで卒業生を何人か採用したこともあります。ただ、最近の学生は土木専門学科を卒業しても、建設業ではなくコンサルタントや大手ゼネコンを志向する傾向にあります。そうした折りに2つの大学で専門学科が廃止になり、我々建設業者には頭の痛い問題になっています。

●高校生に向けた現場見学会

 このような事情もあり、将来の建設業を担う若手に建設業をより理解してもらう活動を始めました。その一環として、私が所属している熊本県建設業協会青年部では、一昨年前より土木の専門学科がある工業高校を対象に、青年部会員企業が携わっている県内の公共工事をピックアップし、高校生の現場見学会を実施しています。生徒たちには、その工事の発注者が国や県であることを伝え、理解してもらえるように努力しています。国や県の仕事に携わっているのは建設業のイメージもいいし、高校生たちの見方も違ってくるはずです。
この現場見学会は正規の授業の延長という扱いで、学科の全生徒が参加するシステムになっています。高校の先生に申し入れをして認めてもらった格好ですが、学校関係者や建設業界の関係者からも非常に好評です。見学会参加者には必ず、アンケートをお願いしています。将来の進路に関しては、「公務員になりたい」という回答が多いですね。ただ、公務員の技術職は採用を控えている状況がありますから、我々にとってはチャンスでもあるわけです。体験会の感想では、「工事現場のイメージが変わった」といった意見も多く、それなりに成果は上がっていると感じています。

●新分野進出について

 阿蘇は「おいしい水」で知られています。会社のある役犬原という場所は自噴している水源がいくつもあります。その水を汲み上げてボトリングして売り出そう、海外への販売を視野に入れて商工会の方で事業化して動き出しましたが、その矢先に東日本大震災が発生し、海外向けの販売が厳しくなりました。現在は、商工会から当社が引き継いでOEM形式で受注生産を続けています。阿蘇五岳山麓の阿蘇市一の宮より湧き出でる地下水をボトリングしたもので、「阿蘇市オフィシャルミネラルウォーター」として認定されています。ラベルには人気者の「くまモン」を採用しました。

 

 

●基金への要望

 業界の将来を考えると、若手の技術者が少ないことが不安です。これは技術者の質にも関わってくる問題で、青年部でも社内でも「技術継承を含めて」頭を悩ましている状況です。例えば、採用前の学生との交流を深める活動の一環としてインターンシップなども行っていますが、「建設業界に興味がないが、とりあえずインターンシップに参加した」といった若者も多く、なかなか状況は変わりません。学校や先生との意見交換会も積極的に行って、よりコミュニケーションを深める努力が必要かもしれません。建設業振興基金には、そういった人材育成に関する意思疎通をスムーズにする支援などもぜひお願いしたいと思います。

 

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