企業経営改善

第17回建設業経営者研修のご報告

第17回建設業経営者研修「新しい建設業のかたち」開催報告

(一財)建設業振興基金 構造改善センター

 

 (一財)建設業振興基金では、経営者、経営後継者、経営幹部の方を対象とした研修を開催しています。第17回目となる今回は、2月4日(月)に東京都港区のメルパルク東京おいて開催。全国から45名の方にご参加いただき、好評のうちに終了いたしました。
 日経BP安達講師による講演とパネルシスカッションの模様を概要報告します。

講師・パネリストのプロフィール

 

講師:安達功氏
日経BP社インフラ総合研究所上席研究員、建設局プロデューサーである安達功氏より、
「パラダイムシフトと建設業の進むべき方向性」と題し、講演いただいた。 
▶講演資料はこちら

日本が直面しているパラダイムシフトとは

 日本の人口は、2005年に減少に転じたが、明治以降、特に戦後急増した。この「人口ボーナス」により5800万戸、1500兆円という資産を蓄積した。人口ボーナスで得た資産を未来世代にどうつなげてゆくかを考えるべきである。
 頂上にいるのに、おお先がないぞ、この後の見方がわからないという話をしている。これは考え方自体が違うのではないか。こういう話をすると、最近同調してくれる人が増えてきている。五木寛之の著書に「下山の思想」という本があるが、山を登るのと下るのとでは、「歩き方、重心の掛け方、心構え」が違うと書いてある。
 20世紀型の家づくりや建設業というのは、人口急増の50年間に対応するための仕組みであった訳で、人口減少に転じた今、まず、考え方や意識を大きく変えなければならない。これからは、モノはあるが人が減る時代になる。モノが少ないときはモノ重視、人が減っていくから人重視。モノが足りない時代は早く作ることが大事だった。規格化した方が早いし、単一化した方が早い。分業した方が合理的。これからは、すでにあるモノを使うのだから、それをどう賢く使うかになる。カスタマイズしたり多様化したりする。これからはそこを深彫りするように変わっていく。
 国土交通省の資料、「国土の長期展望に向けた検討の方向性について」は、2050年に向けて国土がどうなっていくのか方向性を示した資料であるが、2050年までに無居住化する地域が、全国で2割減、北海道では半減すると予測している。また、都市部と地域部ではかなり肌色が違うことを示している。人口減少時代でも、一律に減るのではないということがわかる。
 建設構造物の寿命は長い。2050年は37年後。今作ったものは勿論残っている。そう考えると、寿命の長さを見通したグランドデザインが重要。今すぐ、今から1億人時代のグランドデザインを始めましょうというのが、私がいいたいことである。
 

価値観が変化する中で建設業がどういう役割を担っていくか

 2006年と2012年に、日経コンストラクションでは、一般市民1000人の意識調査を行った。「これから必要性が増すと考える公共事業」という設問の回答の中で、大きく伸びたものは、「地震や豪雨などの災害に備えた防災対策」、「再生可能エネルギーの普及を加速する事業」、「道路の補修など、社会資本の維持管理」だ。
 また、人口減少・人口密度の低下過程において、身近な生活サービスの供給が減少する。人が普通に暮らしていくためのサービスがなかなか提供しにくくなっていく。例として、生活サービスにアクセスしにくくなる高齢単独世帯数。放っておけば2050年には2.5倍に増加する。
 そういう中で建設業は地域を守るためにどんなことをしていかなければならないのか、あえていえば建設業とは言葉に過ぎない。地域を守るときに必要なのは建設ではない。まず人がいなければならない。地域生活を維持しなければならない。そのためのビジネスの仕組みがなければならない。これを皆さんが考える必要がある。
 二つ目にその地域に根を張って、インフラの強靭化をする。強化することは建設ではない。靭はしなやかで粘りがあること。頑丈なものを作るのではなく、予防保全をする、あるいは、壊れたり被害を受けたりした時にどれだけ迅速に直せるかという事。これは技術だけではなく、ネットワークがないとできない。
 今まで建設と言えばどちらかと言えば個別案件のハードをやる人。これからはもう少し広がりのある、町全体の事をやる人たちがメインのプレーヤーになっていくのだと思われる。地域建設業者は、ここのところで力を発揮する余地があるように思われる。
 そもそも都市機能とは何か。ネットワーク機能そのものである。人を含むモノ、情報、エネルギーをどれだけ効率よく、スムーズ運べるか。そのインフラ機能こそが都市機能そのもので、その強さが都市機能の強さに直結する。こうしたところは、地域型・専門工事型の会社のほうが合うのではないか。一部に特化し、そこを支える。
 三つ目はハードル高いと思われるかもしれないが、海外。日経コンストラクションの注力する事業に関する意向調査で、海外への事業展開だけは、大手と中小で大きく開きができている。アジア各国における生産年齢人口の推移を見ると、最期まで粘っているのはインドだが、2030年台にピークを迎える。アジア各国も高齢化、維持保全が重要な課題になる。これから、日本の各地域が先にそういう課題にぶつかり、答えを見つけていく。それを海外に展開していくことが求められるようになるのではと考える。
 

地域建設業の進むべき方向性

 日経ホームビルダーで、リフォーム時に何を重視したかという調査を行ったところ、事業者側・プロは安くて良い仕事をすれば消費者は満足すると思っている。ところが、消費者側は、接客とか説明、工期、近隣対策、アフターサービスなど、ものづくりとは直接関係ないところを重視しており、ギャップがある事がわかった。新しい市場を開拓していく上で、サービス業としての意識、ホスピタリティが重要だということが伺える。
 また、新事業進出の際、うまくいっている例と、苦戦している例を建設経営サービスがまとめているが、一気にやろうとするのではなく、地域の会社は、地域の人脈を武器にして、自分の会社の立ち位置、役割をクリアにして進めていくことが重要である。
 「WORK SHIFT」という本を書いたリンダ・グラットンは、世界各国のいろんな人達の働きぶりを例に、2025年に向けてどういう働き方をすれば孤独・貧困から開放されるのか、3つのシフトをせよと言っている。この3つのシフトは地域の建設業にぴったり当てはまると思ったので、紹介したい。

・ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
・孤独な競争から「協調して起こすイノベーション」へ
・大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ

 ゼネラリストではなく、これとこれとこれができるよという形。単能でも深い知識を。仕事の取り合いではなく、一緒にやって新しい価値を作る。いやいやではなく、働きがい、やりがいという価値を大切にしていく。こうした考えは、新しい地域建設業にフィットしていると思っている。
 私は現在、住宅分野の使い捨てをどう変えていくかを考えている。日本の住宅の寿命はすごく短く、大体27年。外国と比べると半分とか三分の一である。その差は全部につながっているが、建てたあとにリフォームなど投資をしない。投資をしないので価値が上がらない。価値が上がらないので手入れをしてもしょうがない。手入れをしないので、愛着がなくなり、じゃあ壊してしまおうとなる。これを逆回転させるために、研究したり情報発信したり、事業を立ち上げたりしている。私自身が住宅分野で取り組んでいる。建設も同じではないか。十年来の仕事であるが、ここ数年、特に力を入れている。すると才能が有る人が向こうから寄ってくる。ストック型社会は人が全て。人が寄ってくるようにするには、経営者が寄ってくるようなことをしないとダメ。楽しい!の循環と地域の魅力を作り出す新しいプレーヤーを育てることが、新しい建設業を創出する、一番の近道になると思う。

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