企業経営改善

建設業経営者インタビュー

顧客目線でマンション大規模修繕工事をサポート/経営者インタビュー | 山田 昌喜さん(東京都)

NPO法人リニューアル技術開発協会 理事
山田 昌喜 氏

顧客(居住者)の立場で考え
マンション大規模修繕工事をサポート

山田 昌喜さん

 

山田 昌喜さん

法政大学文学部を卒業後、建設会社に入社。送電線の建設現場や太陽光発電事業の部門などで、設計から施工、営業など幅広く経験。その後、マンションのリニューアル専門の建設会社勤務を経て、昨年9月から現職。同協会は、1994年に設立(名誉会長:須山清記氏)。管理組合に対する運営サポートや知識の普及、会員企業の技術向上などの活動を通し、リニューアルに関わるすべての人や企業の育成に力を注いでいる。

NPO法人リニューアル技術開発協会
本 社  東京都中央区新富1-3-2 新富町一丁目ビル2F
発 足  1994年

 

●協会発足の目的

 当協会の発足は、1994年3月24日です。我が国における建設業界はご存じのとおり、スクラップ・アンド・ビルドの繰り返しで成り立ってきました。業界内には、老朽化した建物は建て替えることが当たり前で、「建物をリニューアルによって維持・保全する」という意識は希薄でした。リニューアルの概念は認知されていても、その歴史的背景、正しい知識、技術、方法などはほとんど理解されていない状況だったのです。また、リニューアルに取り組んでいる企業の中には、安かろう、悪かろうの一時しのぎ的な工事をする業者もあり、必ずしもお客様の満足を得られていないケースが目立ちました。
 こうした状況を打破しようと誕生したのが、NPO法人リニューアル技術開発協会です。建築物のリニューアル工事を社会的ニーズとして受け止め、マンションの大規模修繕工事を居住者の立場で考える健全な市場の発展を目指しています。

●NPO法人としての強み、そして役割

 組織の一員という立場では、会社や上司、仕事先など沢山のしがらみがあり、自由に発言もできず、思ったように活動できません。NPO法人として立ち上げてからは、どこかに寄りかかっているわけではないので、他者の顔色を窺って活動する必要はなく、作業着を着て平社員であった私でも思ったことを自由に発言できるようなとても懐の深い団体なのです。正しいものは正しいと言い続けることが重要であり、そこがNPO法人の強みではないでしょうか。
 現在、リニューアル業界は約6000億円の市場です。しかし、建築業界の構造として、二次請け、三次請け、四次請けの方々は決して満足できる報酬を得ているわけではないと思います。1%でもいいから、末端にいるやる気のある職人さんたちに還元して、彼らを守っていきたいと思っています。建設業界全体に影響力を持ちたいわけではなく、その部分だけでもいいから影響力を持ちたい。そのためにも私たちは“真っ白な存在”でなければならないと考えています。

●大規模リニューアルについて

 以前、私はマンションの大規模修繕(リニューアル)を専門とする建設会社に勤めていました。マンションの場合、理事会が月1回ペースで開催されることが多く、「次の理事会までに見積もりをとって!」といったことの繰り返しで、何事にもスピードが求められます。見積もりについても単純に金額を出せばいいわけではなく、理事会で住民に説明しやすい資料の作成も重要なポイントになってきます。
 例えば、使用前・使用後の写真を添付して「ここをこのように直します」といった具体的な例を提示するだけでお客様は喜んでいただけます。その結果、受注率が大幅に上がるわけです。それが口コミになって他のマンションの理事会からお呼びがかかったこともありますよ。下請け業者への修繕の指示も私の仕事の一つで、そんな経緯もあって会社員時代は、現場監督を務めたこともあります。こうした実務経験が現在の協会理事としての仕事に大いに役立っています。

●協会と会員の現状

 我々の協会には現在、100社ほどの会社が登録しています。協会には入会の条件があり、理事2名以上の推薦が必要です。理事たちとの面識がなく、入会を希望される場合は、面接で入会の理由や要望などの聞き取り調査を行います。
 対象は、マンションの修繕工事に携わる企業の方々です。しかし、もともと当協会について知らなかった可能性が高いです。ほとんどが事業を始めて浅い職人さんや、地場で積み上げてきた方々が、なんらかのコミュニティーを探し辿り着いたと思います。
 たぶん求められているものは、この業界についての基本的な知識や情報ですね。現実の問題として、業界自体の認識も低く、不明なことがあってもどこに聞いたらいいのか分からない。その点、私たちの協会では、講習会や定期的な会員相互の交流の場を創出しているので、経営者にとっては、そこでの情報収集や情報交換のメリットは大きいはず。会費は月額5000円(年間6万円)。自分から言うのもなんですが、リーズナブルな設定であると思います。

●リニューアル事業の課題

 大規模修繕工事で難しいのが、施主が施主の役割を果たしていないこと。管理組合はマンションの住民の集合体なので、さまざまな意見が混在し、意見がまとまらないために、重要な決定に際しても管理者や施工者に委ねるケースが少なくありません。個人のわがままと団体の責任がごっちゃになって、区別できていない場合もあります。
 管理会社に一任する場合、管理会社の担当者がマンションのリニューアル全般を熟知していればいいのですが、そうとは限りません。例えば屋上の防水工事ひとつ取ってもみても、現在の劣化の進み方はどの程度で、このまま放置すると数年後には漏水の可能性が高い、それを防止するにはどのような対策があるか……そんな具体的な説明が求められますし、そのためには建築に関する知識以外もリニューアル全般の非常に幅広い知識が必要。まだ歴史が浅いこともあって、この業界に参入している人の中にも知識や経験が十分とはいえない人も少なくないので、そこもまたこの事業の課題ですね。

●当協会の存在意義とは?

 マンション理事会から大規模修繕のお話を頂く際に、理事会の立場とすれば、管理会社の考えを鵜呑みにしてもいいものか、第三者の意見を聞きたいがどうすればいいのか、複数の会社から見積もりを取ってみたい……といった考えがあります。依頼する場合、管理会社にお任せ方式(実質的に管理会社に丸投げ)、設計施工方式(特定の施工業者に設計から施工までを一括して1業者に任せる方式)、設計監理方式(設計と施工を分離する方式)と主に3つの方式があります。その中から自由に選択できますが、現実的には、管理会社にお任せ方式が主流になっています。不満を感じつつも、管理会社に任せしてしまうケースが多いのは、「どうしたらいいのか分らない」「面倒だから」などの理由があるようです。
 理想的には、それぞれの方式のメリット、デメリットを把握して、それを十分に理解した上で検討・選択できればいいのですが、なかなかそうもいかない現実があるのです。そんな時に、私たちの存在意義を実感しますね。私たちに問い合わせてもらえれば、それぞれの条件やニーズに沿った形でアドバイスすることができますから。 あくまでも最終決断をするのはマンションの理事会です。私たちの仕事は、各種の情報を提供し、選択肢を提示して決断を下すサポートまでのお手伝いです。

●リニューアル業界の現状

 マンションの大規模修繕を建設業界の新分野と見なしたときに、非常に有望な分野であることは間違いないと思います。リニューアル業界の現状を説明すると、受注の方法としては直接受注(元請け)、管理会社や設計会社からの紹介、公募などがあります。特に最近は公募が増えていますね。建設通信新聞には、マンションの大規模修繕の公募情報が毎日10件程度掲載されています。
 叩き上げの会社が元請けになろうとするなら、三次請け、二次請け始めて徐々に実績を上げて一次請け、元請けとステップアップを目指すわけです。少しでも上に上がるために実績を重ねて、設計会社や管理会社にアピールしますが、技術力があるかどうか分らない未知の会社とタッグを組んで仕事をしたい会社はありません。業界にコネクションのない会社は公募か飛び込み営業で仕事を増やしていくしか方法がないのが現状です。公募にしても、もちろん公明正大にやろうとしますが、結局は見知った会社に落ちつくことが多い。というのも、応募してきた会社の経営状態や実績などを比較していくと、未知の会社はふるいにかけられる確率が高くなるのです。そこは業界の構図として改善すべき点だと思いますが、地道に業界内で顔を売って評判を高め、実績を重ねていくのがやはり究極の方法なのでしょう。

●業界関係者へのメッセージ

 当たり前のことですが、自分で自分の仕事に誇りを持てるようにしようということです。お客様に満足していただくのは最低ライン。その上で、元請けが利益を出せて、自分たちも利益を出す。それが出来て初めて仕事に誇りが持つことができます。誇りが持てる仕事をしていれば、若い人にもその思いが伝わって「自分もやってみたい!」となる。若い人がどんどん入ってくる業界にしたいものです。
 もう一つ、中小建設業の皆さんに言いたいのは、人材育成について。景気が不透明な昨今、なかなか人材に投資できるような状況ではないと思います。でも、伸びている会社には必ず大番頭と呼ばれる人材がいて、さまざまな形でトップをサポートしています。その大番頭をいかに育てるか、黙って仕事を任せられるようにするかが、トップの重要な役割ではないでしょうか。
 人材育成に関連した話として、この業界に特有といえるのが、工事従事者の「礼儀・礼節」についてです。ご存じのようにマンションの大規模修繕工事の場合、通常の新築工事と違って、住民が住まわれているところで工事をします。住民の方々と日常的に顔を合わせるので、ことさら礼儀・礼節が重視されるわけです。技術力では遜色なくても、この点で差が出ることもあります。業界の中には、特に若い人向けに礼儀・礼節に関する指導に力を入れている会社もあり、それが業績アップにつながっているようです。

●今後の抱負

 協会設立から今年3月で19年目を迎えます。道半ばと言いたいところですが、まだまだスタート地点に立ったようなものですね。というのも、ようやく数千億という市場規模になってきて、お客様もインターネット検索などで我々のことを知ってもらえるようになり、建設業界の中でもリニューアルに関する専門知識が求められるようになってきました。本当の勝負はこれからだと思いますよ。
 まだまだ世間の認知度は低いですが、我々を必要とする方がいらっしゃることも強く感じています。その方々に向けて存在をアピールしたいですね。その方々のために全力を尽くして努力したいと思います。

 

 

第17回建設業経営者研修のご案内

第17回建設業経営者研修

 建設投資、とりわけ公共投資の大幅な縮小によって、建設業の経営環境は厳しさを増す一方である。建設業には、従来型の「請負業」的な経営体質から脱却し、時代の変化と地域や社会のニーズを捉えた新たなビジネスモデルの展開が求められている。今年度は「新しい建設業のかたち」をテーマに、有識者等による講演及びパネルディスカッション、懇親会を通じて、研修会参加者が、今後の経営戦略を考える上でのヒントを幅広い視点から探っていく。

日 時/平成25年2月4日(月)13:30~18:40
会 場/メルパルク東京 東京都港区芝公園2-5-20
対象者/中小建設業の経営者、経営後継者、経営幹部の方

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