企業経営改善

建設業の新規年間海外受注高2兆円以上」を目指して

建設業の海外展開

国土交通省土地・建設産業局建設業課 国際建設振興室国際調整第一係長 新田 翔
NPO中小建設業海外活動促進支援会(通称NPOCOS)理事長(国土交通省 海外展開支援アドバイザー)鐘江 敏行

 戦後日本の建設業の海外進出は、東南アジア諸国における賠償工事から再開し、1970年代以降は中東の建設需要、1980年代以降は、日本の製造業の海外進出とODAの拡大に伴って、その受注を増加させてきました。こうした状況を背景に、政府や国土交通省は、これまで各種の成長戦略において建設業の海外展開促進策を掲げてきました。そこで今回の特集では、「建設業の海外展開」をテーマに、政府の成長戦略における位置付けや、建設各社の取り組みの事例などをご紹介いたします。

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 国内建設投資は、東日本大震災後の復興需要により一時的に持ち直す動きが見られるものの、長期的に見ればピーク時から半分程度にまで減少するなど、我が国の建設企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況です。さらに人口減少、少子高齢化の進展、財政制約などの要因も重なり、今後の見通しは不透明感を強めています。
 一方、海外の建設市場に目を向けると、国内とは大きく異なる世界が広がっています。特に、アジアにおいては2020年までに8兆ドルを超えるインフラ需要が見込まれるなど、新興国をはじめとして膨大なインフラ需要が存在し、海外市場は有望な成長市場として位置付けられます。【図1】
 我が国の建設企業が継続的な発展を続けていくためには、拡大する建設市場に積極的に進出していくことが求められます。もちろん欧米企業や中国・韓国企業との競合は避けることができませんが、それらに勝ち抜いていくためには、官民が一体となって体制を整備する必要があるでしょう。【図2】

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 人口減少、少子高齢化、財政制約、国際競争の激化に加え、地球環境問題や震災を契機としたエネルギー制約など、我が国がこれまでにない困難に直面する中で、これらの課題を克服し、我が国の明るい将来を築くため、2011年11月、国土交通省では、前田武志大臣(当時)のリーダーシップの下、「持続可能で活力ある国土・地域づくり」を推進するための施策の検討に着手しました。このうち、「我が国が強みを有する分野の海外展開、国際貢献」については、以下3つの柱に沿って施策を検討することになりました。

分野横断的なパッケージによるインフラ展開
管理運営も含めた「川上から川下まで」の受注に向けた体制強化
ソフトインフラも含めた海外展開

 2012年5月には「インフラ海外展開推進のための有識者懇談会」を設置し、有識者の意見を踏まえながら今後の施策について議論を進めました。その後、数次にわたる議論を経て、同年6月に「国土交通分野のインフラ海外展開:新たなステージへの展開 戦略と具体策」を取りまとめました。
 その内容は、インフラの海外展開を推進する上での日本の強みと課題を基本的認識として整理した上で、課題を克服するための今後の方向性と戦略を打ち出すものでした。具体的な施策としては、「相手国のニーズを踏まえた案件の発掘・形成の強化」、「国内外におけるモデルプロジェクトの促進」、「勝てるチームづくりのための人材育成」、「現地における技能者・技術者層の育成」、「情報収集の強化と人的ネットワークの構築・活用」、「政府間対話の積極的な活用」、「防災パッケージの展開」、「ソフトインフラの海外展開」などを提言しています。
 この内容を反映し、同7月下旬に「持続可能で活力ある国土・地域づくり」に向けた主要政策が公表されました。また、取りまとめの内容の大部分は、「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」において同6月末に決定された「パッケージ型インフラ海外展開促進プログラム」にも盛り込まれました。

 

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 建設産業分野においては、2012年2月、学識研究者からなる「建設産業戦略会議」を国土交通省が再開し、昨今の建設産業を取り巻く状況を踏まえ、建設産業が持続可能で活力ある国土・地域づくりの担い手としての役割を果たしていけるよう、その在り方について検討を行いました。その結果、同7月、「建設産業の再生と発展のための方策2012~『方策2011』を実現し、東日本大震災を乗り越えて未来を拓く」を取りまとめました。
 この中では、当面講ずべき5つの対策の1つとして「海外展開支援策の強化」が掲げられています。
 具体的には、他業界との連携強化を含む官民一体の体制づくりとして、他業界との連携強化のための「官民一体の推進・協議組織の立ち上げ」、「技能実習生など日本式の施工を理解した現地技能労働者の育成・活用」の必要があると指摘されました。
 このほか、専門工事業者を含む地方・中小建設企業の海外展開を促進するための施策の拡充として、今後新たに海外への進出を検討している建設企業を対象とする「海外展開経営塾」を開催し、海外展開に成功している企業の成功事例の共有を図るとともに、長年海外事業に従事してきた大手建設企業出身者などの知見を地方・中小建設企業が活かせる仕組みの構築、さらには地方・中小建設企業に対する融資・保証制度等金融面での支援策についても継続的に検討していく必要があるとしています。
 また、我が国の建設企業の海外受注実績の目標を見直し、「2兆円以上」に設定することにより、我が国の建設企業の海外展開に対する気運を一層高めていくことが望まれると述べています。

 

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 2012年7月31日、政府の新たな成長戦略である「日本再生戦略」が閣議決定されました。【図3】

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 政府はこの「日本再生戦略」で、2020年までに「建設業の新規年間海外受注高2兆円以上」を実現することを目標として掲げました。また、建設業の海外展開は、「我が国企業の海外ビジネスの展開を拡大し、その果実を国内に環流させる仕組みを構築する」ための重点分野の一つとして位置付けられ、「建設業等の海外進出を支援する枠組みの構築等を強力に推進することで、中小企業をはじめ日本企業の新興国におけるビジネス展開を支援する」としています。
 さらに、パッケージ型インフラ海外展開支援も重点施策として位置付けられており、「広域開発プロジェクトの上流段階からの関与、インフラ案件の発掘・形成力強化などにより、日本の技術・ノウハウが活用される案件の形成を支援するとともに、『川上から川下まで』の受注に向けた体制・プレイヤーの強化、コスト競争力・差別化の強化、インフラプロジェクト専門官の活用促進、公的ファイナンス支援の強化などを通じ日本企業の案件受注を強力に支援し、高い成果に結びつける」としています。

 

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 これまで見てきたように、2012年に入り、各種の成長戦略が立て続けに策定され、建設業の海外展開は、我が国成長力の強化に資する分野として政府全体として支援していく方針が打ち出されました。国土交通省では、「日本再生戦略」の目標である「建設業の新規年間海外受注高2兆円以上」を達成するため、各種取りまとめにおいて示された施策を着実に実行し、我が国の建設企業の海外展開を強力にバックアップしていきます。

 

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