企業経営改善

建設業の経営多角化

建設業の経営多角化 先進事例

株式会社 山本組 山本 斉 社長
株式会社 小坂田建設 小坂田 英明 社長
瀬戸建設 株式会社 瀬戸 良幸 社長

 建設投資の減少や景気低迷など、建設業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中で、新分野への進出によって経営多角化を進める企業が増加している。国による新分野進出支援は1990年代後半から始まり、2003年には、建設業の農業分野への進出事例が国土交通省の「地域における建設産業再生のための先導的・革新的モデル事業」として取り上げられた。2004年には、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、国土交通省を構成員とした「建設業の新分野進出を促進するための関係省連携会議」が設置された。
 こうした経緯の中で、当基金でも建設業の新分野進出・経営多角化を支援している。今回は、「農業」「地域サービス業」「介護福祉業」への進出を果たした3つの企業の先進事例を紹介するとともに、その現状と課題を考えてみたい。

先進事例1

地域の特性とネットワークを活かした
「アグリビジネス」に参入

株式会社 山本組 山形県鶴岡市、1960年設立、資本金3,000万円、従業員数33名
http://kubohata-farm.com/

事業の背景

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 山形県鶴岡市に本社を置く地場ゼネコン(総合建設会社)の山本組。ピーク時には年商30億円前後だったが、公共事業縮小などの影響によって売り上げが激減。企業を存続させるために、規模の縮小、新たな収益事業の立ち上げ、廃業という三者択一を迫られた。その中で選んだのが異業種への参入であり、いくつかの巡り合いを経て導かれるように「アグリビジネス=農業」に進出した。

事業の現状

 きっかけは、農業系ベンチャーのアニス(川崎市)との出会いだった。同社と提携して約3300平方メートルの農地にハウス棟を建設したのは、2007年9月のこと。アニス独自の有機農法で付加価値の高いトマトの栽培を始めたのだ。08年8月に農業生産法人「窪畑ファーム」を設立し、09年4月には本社にアグリ事業部を立ち上げた。なお、同社のアグリビジネスは、ビニールハウスの建材に建築資材を使用するなど、建設業で培ったノウハウを随所に活用している点が特徴的だ。
 現在、窪畑ファームで栽培しているのは、主力のトマトを始め、ショウガ、タマネギ、豆、芋、メロンなど。同社では、これらの販売に加えて、自社工場でトマトの加工も行い、トマトのアイスやカレー、ゼリー、ジャムなどを開発した。さらに他の農場からの加工委託も受けている。各種加工食品は、工場に隣接した直売所「ファーマーズ・マルシェ」やネット通販に加え、東京の有名スイーツ店や大手百貨店などにも販売している。
 気になる売上は、農業関連で年間9,000万円程度。会社全体の売上の約1割であり、「当初は3分の1くらいを見込んでいたが、現実は厳しい」(山本社長)という。

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今後の展望

 山本社長はこう語る。
 「地元で農業をやるからには、地域特性を活かしたもので最新の栽培技術を取入れて参入したい。そこでアニスの取り扱う有機培土に地元産の庄内米の米ぬかを混ぜた微生物培養土を使用して野菜作りを始めました。最初は、アニス培土の販売と農場作りが目的で、その営業ツールとしてトマトを栽培したんです。今年はブドウも手掛けてみました。いずれはワイナリーを作り、オリジナルワインに挑戦します。トマト加工品とワインを目玉商品に、大勢の観光客を呼べるようなビジネスに育ててみたいですね。そのような形で地域の活性化に貢献できれば最高です。」

◆取材ノート

 「なぜトマト?」という問いには、「5個100円からキロ1万円まで、自分の力で価格を決められる商品」と明快です。社員には常に新しい加工商品の工夫を求める。この「付加価値への強いこだわり」という羅針盤があったから、未経験の分野にあって迷うことなく次の一手を打ち続けておられるのでしょう。「イベントには必ず自分が出かけていく」とのこと。「常にマーケットを肌身で感じる」という二つ目のこだわりです。付加価値とマーケット、挑戦型経営の基本をきちんと押さえておられるようにお見受けしました。ワインづくりへの進出、いずれ中国市場もと目は遠くを見ながら、目標は、「農業で売り上げの3割、主力はあくまでも建設業」とのこと。足下をしっかり固めながら前に進む、山本さんの方針はここでも極めて明快でした。


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