FOCUS

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2017年7・8月号 No.490

人間力と技能で産業を支え、自ら未来を切り拓く~沖縄産業開発青年協会の取り組み~

沖縄産業開発青年協会の前身は、沖縄戦後の混乱期、昭和30年に若者の技能習得を通じた自立支援を目的に設立された沖縄青年連合会。集団行動と共同作業を通じて協調性やリーダーシップを育み、将来必要となる職業技術の習得や重機操作に必要な資格取得などを支援し、これまで約60年にわたり建設業を中心に数多くの人材を沖縄県内外に輩出してきました。設立以来の理念を受け継ぐ現在の青年協会の取り組みと将来の展望などについて、理事長の吉川浩正さんに伺いました。

「技能と協調性」の人間力育成で就職率100%


吉川 浩正 理事長

沖縄産業開発青年協会は前身組織から、同協会に集まる若者を「青年隊」と呼んでいます。訓練施設は、沖縄県北部、やんばるの豊かな森に囲まれた広大な敷地。宿舎も併設され、隊員は約半年間にわたって共同生活による規律訓練と、建築や農業などの技能訓練を受けます。朝は6時半に起床して点呼のあとは2キロの早朝ランニング。清掃は隊員で分担します。午前、午後は機械実習や学科講習がみっちりと入り、夕方の自由時間を経て消灯は22時。訓練中の携帯電話の使用は不可、お酒、タバコはもちろんお菓子などのおやつも持ち込み禁止という徹底ぶり。それだけに訓練期間中の送迎バスによる週末の外出が楽しみです。短期間で社会人としての規律や協調性、技能・技術を身につけ、11もの資格を取得します。

沖縄県名護市からさらに車で約1時間、東村にある沖縄産業開発青年協会。

「こうした厳しい規律と集団生活、実践的な職業訓練を行なえる施設はどんどん減少しています。しかし青年隊では、社会が人材に求める『協調性と技能・資格』を短期間で身につけるには、集団行動と集中訓練を同時に行うことができる合宿形式が有効と考えています。これにより『自分の将来は自分自身で切り拓く』という自立の精神が育まれ、実践に強い真の実力を持つ人材となりうると確信しています」
そう言い切る吉川理事長の言葉を裏付けるかのように、廊下の壁には求人票がびっしり。高い勤労意欲と技能を持つ心身壮健な人材を多く輩出するとして、多くの企業から引き手も多く、進学組を除く希望者の就職率はほぼ100%。ほとんどの企業が継続した採用を行なっており、定着率も高いことからも評価の高さがうかがえます。

朝の点呼の様子。

早朝広い敷地内を2キロマラソン。

沖縄戦直後からの開拓者精神を今に伝える

技能訓練所の中でも異色ともいえる取り組みは、組織の生い立ちに理由があります。前身の沖縄青年連合会は戦後の荒廃期に設立し、若者が共同生活を通じて「働きながら学ぶ」ことで、社会人として自立することを目標としていました。食べ物すら十分ではなかった時代に、苦労と努力を積み重ね、心身を鍛えて技術・技能を習得した多くの卒業生たちは、沖縄はもちろんハワイや南米への移民青年隊としても活躍。激動の時代に社会を支えた熱意と開拓者精神は、形を変えて今に引き継がれています。
「過去の試行錯誤で施設や設備は充実し、むしろ他所ではできない実践的な建設実務体験を行えるなど、恵まれた訓練環境を有しています。その中でも厳しく自らを律し、協働の精神と技能を磨くことで、多くの先輩同様に自らの未来を切り拓く力を得る。基軸となる考え方は今も変わりはありません」(吉川理事長)
施設の玄関ホールには卒業生の写真が所狭しと飾られ、成長の場を共にした者同士の結束力をうかがわせます。応募資格は義務教育を卒業した15歳から32歳までの男女。平成29年度前期は150期の37名が入隊し、卒業生8千人以上が紡いだ歴史に名を連ねようとしています。

半年間の訓練を終え修了式を迎える。

青年隊での技能訓練の知見を多方面に展開

青年隊で蓄積された職業訓練における知見は、現在さまざまな施策として提供されています。一般を対象に車両系建設機械の技能講習を実施する「向上訓練講習」は認定職業訓練として、農林高校などを対象とした定期講習のほか、県内の自治体や商工会などと連携した出張講習などでも実施され、南・北大東島などの離島での訓練も視野に入れています。また「更生保護訓練事業」では、保護観察中の少年の社会生活適応のために一般の青年隊と同様の規律訓練・技能訓練を実施しています。

重機を使った実習の様子。

そして平成27年度より(一財)建設業振興基金が厚生労働省から受託した建設労働者緊急育成支援事業においても同施設内に地方拠点を設置し建設業へ就職を希望する未就職者への訓練も実施しています。青年隊の活動以外にも充実した訓練施設を常に稼働させ、施設運営の効率化も図っています。「青年隊OBに勧められて来る人、自分で建設業をはじめたい人、ジョブチェンジをしたい人など、年齢も経歴も異なる多彩な人が集まり、夢に向けて技能習得に邁進する姿は頼もしい限りです。震災復興やオリンピックの影響もあり建設関連の人材育成は急務ですが、少子高齢化時代の到来に先駆け、長期的な“技術技能の担い手”の育成支援も重要課題だと感じています」(吉川理事長)

※建設労働者緊急育成支援事業:離職者、新卒者、未就職卒業者等について、座学、実習等の訓練から就職支援までをパッケージとして行い、建設業界の人手不足解消を支援する。平成27年度から5年間の時限措置で実施することとしている。

時代に即した技能・対象に広げ、社会に貢献

「今後も設立目的および国・自治体の施策に合致し、かつ社会貢献度の高い事業に取り組んでいきたい」と語る吉川理事長。現行事業の改善・強化はもちろん、時代のニーズに対応した新規事業開発にも意欲を見せます。その1つが建設業・農業などの業界で活用が進む「ドローン」の訓練事業。既に一般向けのほか、青年隊の講習にも試験導入されています。他にもパイナップルなどの無菌培養技術や高度化農業研修の実施、観光産業の拡大に伴う運輸・流通業の技能者不足を補完する人材育成事業、さらには地域への貢献事業として世界遺産の保全や林業などにも関わっていきたいと語る吉川理事長。

農業体験の様子。

また建設業界のダイバーシティ化が進む中、「女性の技能者育成」も大きな課題です。
「女性用の宿泊施設も完備し、受け入れ態勢は万全です。建設労働者緊急育成支援事業の訓練には3期連続で1人ずつ女性が参加しましたが、今後、青年協会においても女子青年隊が編成できるくらいには増やしたいですね」(吉川理事長)
長きにわたり、時代が求める人材を育んできた沖縄産業開発青年協会。決して変わることのない核を持ちながら、これからも時代とともに進化していきます。

一般社団法人 沖縄産業開発青年協会 ホームページ http://www.yanbaru-seikyou.jp/

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