特集

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2017年11月号 No.493

災害から地域を守る~建設業だからできること~

日本は、世界有数の地震大国・火山大国であり、数多くの急峻な河川を抱え、毎年襲ってくる台風や集中豪雨により河川の氾濫や土砂くずれなどが発生しています。さらに国土の約半分は豪雪地帯に指定されています。こうした厳しい自然環境において、災害から人々の生活を守る重要な役割を担っている地域の建設業について紹介します。

寄稿
地域建設業の現状と今後の産業政策に望むこと


東京大学大学院経済学研究科 教授 大橋 弘

Profile
【研究分野】
産業組織、競争政策、科学技術イノベーション政策、経済政策
【その他の主な活動】
●建設産業政策会議 地域建設業ワーキンググループ 座長(2017年-)
社会資本整備審議会・交通政策審議会 臨時委員
食料・農業・農村政策審議会 委員(企画部会長)
●経済財政諮問会議 専門委員・経済財政一体改革推進委員会 委員

わが国の建設投資は平成4年度をピークとして減少傾向をたどり、平成22年度にはピークの5割減に相当する42兆円まで落ち込んだ。その後は増加に転じているものの、その回復には大きな地域差が生じている状況にある。許可業者数は最近では鈍化傾向とはいえ、ピーク時のほぼ25%減となっており、また家業として建設業を営む社は深刻な事業承継の問題に直面している。景気回復を背景に、経営赤字を解消した事業者のなかには、休廃業や解散を選択しているものもあり、インフラの維持管理に支障をきたす地域も発生している。担い手の安定的な確保が困難な中で、インフラの守り手である中小建設企業の経営力は弱体化しているばかりでなく、自治体の中にも発注体制の維持が困難になるところが出始めている。
過去の建設産業政策において、減少する公共投資と比較して過剰な供給構造を適正化するために、公正な競争環境の整備を通じた競争の活性化等が謳われた時期があった。しかし人口減少下における単純な競争の活性化は、過度な価格ダンピングを生みだし、除雪などしっかりした供給基盤が求められる地域ほど、競争の悪影響を強く受けたように見受けられる。
地域建設業は「地域の守り手」として、災害時には被災情報の収集や道路啓開、応急復旧工事の実施など、地域のインフラとして準公共的な役割を果たしてきた。建設投資が右上がりで伸びるような成長期においては、こうした準公共的な役割は、事業収益を内部補助することで支えることができたが、最近の事業環境の中では、地域によっては建設業協会に加入しない事業者も増えており、防災協定に応じる事業者は減少の一途を辿っているようだ。
こうした現状において、地域の守り手を維持するためには、準公共的な活動に対しては、きちんとした手当を行政として行うことが求められる。その点で、『建設産業政策2017+10』は、多くの貴重な提言に富む盛り沢山の内容が含まれている。例えば、市町村が地域建設業振興計画を作って、建設部と商工部とが連携して建設業を地域創生のパートナーとして位置づけることや、地域インフラを維持修繕するための新たな発注契約方式の導入、また地域貢献に対する評価をきちんと顕在化することなどは、是非とも進めて欲しい点だ。
人口減少と老朽化するインフラストックの増大という未曾有の環境の中で、建設業はわが国経済・社会の課題を先取りしているように見える。建設業から他産業の範になるような先進的な優良事例を生み出されることを強く望みたい。

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